アフターコロナを見据えたテレワーク(4)〜テレワークは「競争優位性」の構築に貢献できる〜
- 2022年3月8日
- 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 高見康一
- テレワーク
新型コロナウイルスが再び流行している中、オフィス回帰かリモートワークの継続なのかで各企業が揺れています。「ハイブリッドワーク」などの言葉も聞かれるようになりました。
今回は今までとは少し趣向を変えて、「攻め」のためにテレワークをどう活用できるかのヒントになる話をしていきたいと思います。
コロナ禍をきっかけにずいぶんと企業のテレワーク環境整備が進みました。2022年3月現在では、オミクロン株の流行により再び日本は新型コロナウイルスの脅威にさらされています。昨年末は流行が一段落し「テレワーク疲れからのオフィス回帰」などの言葉も話題になっていましたが、再び多くの人が「テレワーク」を行う状況に戻っています。
今後、働き方・生活様式はどのようになっていくのでしょうか。正確には予測できませんが、「コロナ前」とは大きく様相が異なるのは間違い無いでしょう。その中でテレワークも働き方の当たり前の選択肢として残っていくような気がします。
今回は、テレワークを企業の「競争優位性」に役立てるための話をしていきたいと思います。
前回の特集記事:アフターコロナを見据えたテレワーク(3)〜ゼロトラスト=信頼しない テレワークに適ったセキュリティモデル〜
テレワーク全般についてのおさらいは、特集記事:テレワークについて
競争優位性とは、競合他社との競争に勝つために役立つ性質のこと
今、世界中でテレワークが普及しつつあります。そもそもきっかけはなんだったでしょうか。
それは紛れもなく「新型コロナウイルスの流行」です。2020年の年初から始まった新型コロナウイルスの世界的な流行は、事業活動にも大きく影響を及ぼしました。従業員の出社制限や、客先への訪問を控えたりした事業者が沢山ありました。そして、その影響を緩和するためにWeb会議ツールの導入やテレワーク体制の整備が急速に進んでいきました。
テレワークはこのような経緯で普及していったため、今では「仕方なく」導入するものというイメージが定着しています。しかし、テレワークの導入は決して「仕方なく」すべきものではありません。積極的な導入は事業の「競争優位性」を生み出します。
競争優位性とは、競合他社との競争に勝つために役立つ性質の事です。この競争優位性を生み出すためには、例えば「競合のものより安い」などのコスト優位性や、「競合の店より近い」「競合のものより大きい」など、提供サービス・商品優位性などを生み出す必要があります。この競争優位性の有無は事業の業績に直結します。
従って、さまざまな企業が日々切磋琢磨しながら、競争優位性を育てています。昨今世間を賑わせているDX(デジタル・トランスフォーメーション)も、競争上の優位性を確立することが最終目的になっています。
DXについては、特集記事:小規模事業者にとってのDX~前編
テレワークは目に見える「価値」を生み出せる
テレワーク導入は、うまく活用すれば事業の「競争優位性」を生み出すことができます。
ここではわかりやすく、かつ短期的に効果が見える生み出し方の例を二つ紹介します。
一つ目は「事業継続力」という競争優位性です。
テレワーク未導入、つまり事業所という「場所」に依存した状況で事業を展開していた場合、もし地震や水害などの天災や新型コロナウイルス流行などの災害が起こった場合、事業活動は停滞してしまいます。
周辺住民をターゲットとした事業などであれば、顧客の消費活動も停滞するので影響は少ないかもしれませんが、グローバルに展開している事業のサプライチェーンの一部になっている事業などであれば影響は甚大です。自社だけでなくあらゆるステークホルダーに被害が及びます。そういった企業はテレワークを導入して「事業継続力」を確保しておくことで、取引先に対する大きな「差別化要因」として訴求が可能になります。
二つ目は「低費用」という競争優位性です。
テレワークは費用削減に繋がる大きな可能性を秘めています。わかりやすいのが「交通費」ですね。従業員の通勤手当などは短期的には難しいかもしれませんが、会議参加や取引先訪問などで発生する交通費などはWeb会議活用のノウハウがあればすぐにでも削減可能です。
大きな規模で考えればテレワークを恒常化することで事業所維持費用や従業員の通勤手当の削減なども考えられます。「低費用」は非常に強力な競争優位性です。価格戦略に取り込めば単純にコスト優位性を生み出します。また投資戦略に取り込めば、手元に残るキャッシュが増えるため、より大きな投資が可能になります。
テレワークは「ヒト」の価値増大にも貢献できる
テレワーク導入は、企業の重要な経営資源である「ヒト」の価値増大にも貢献できます。
近年は新型コロナウイルスの流行によって「テレワーク=新型コロナウイルス対応」という見方が一般的でした。しかし、その少し前までは「働き方改革」の一部として期待されていたものでした。今現在、企業の働き方改革は「採用容易性」に直結します。働き先を探している人たちの働き方に対する関心は年々上昇しています。それに付随してテレワークが導入されているかも大きな関心を集めています。
また、既存の従業員の「生産性」にも大きく影響します。「ヒト」が最大限に価値を生み出すためには「ヒト」のモチベーションや多様性認識が重要という意見は、今日当たり前のものになっています。大手企業の中では、居住地制限撤廃などの大きな舵を切る事例が増えてきました。
先んずれば制す
今回はテレワークを企業の「競争優位性」に役立てるための話をしてきました。
私は、この取り組みは「速やかに」進めていくことをお勧めします。当たり前の話ですが、どこもかしこも持っている性質は「競争優位性」にはなり得ません。
今はまだテレワーク普及の過渡期にあります。今他社に先んじて導入し活用するからこそ大きな武器になります。遅かれ早かれテレワークは普及すると私は考えています。導入が武器になるうちに導入しておくのが理想的な歩みかもしれません。