弊社の事業は板金業です。分かりやすく言うと、鉄板をレーザーで切断し、曲げや溶接でさまざまな部品を作ります。たとえばフレームやブラケット、カバー類などです。愛媛県に拠点を置いていることもあり、みかん用の選果機を製造するメーカー様に対し、多くの部品を納品しています。
弊社の強みは納期対応力です。たとえば「今日中に納品したい」という依頼をされたとき、多くの企業は窓口の時点で断ってしまうでしょう。弊社では同業者が対応できない短納期にも対応することで、顧客を増やしています。
*選果機…果物の大きさや糖度を測定・識別する機械
【課題】残業時間削減の方法を模索していた
弊社では「残業時間を減らすこと」が大きな課題でした。政府の「働き方改革」が始まったこともあり、残業時間を減らす意識はあったのですが、我々のような中小企業は簡単には人を増やせません。
残業時間が増えてしまう原因として、弊社の仕組みでもある「営業起点」という仕事の進め方に問題点があると考えました。弊社では営業部門の人間が起点となり、仕事が始まります。しかし営業部門の人間が社外にいると、仕事をスタートできないのが現状でした。
【導入】無料でPCを遠隔操作できる「Chrome リモートデスクトップ」を導入
どんな状況でも営業部門の人間が手配を進め、仕事をスタートできる仕組みを作るために、「Chrome リモートデスクトップ」を導入しました。「Chrome リモートデスクトップ」は、手元のPC・スマホ・タブレットから、離れた場所にあるPCを操作できるサービスです。離れた場所にあるPCの画面が、そのまま手元の端末へと映し出されます。
リモート操作ができるソフトはいくつか検討しましたが、今回のアプリを選んだ理由は、無料で利用できるからです。結果が出るかどうか分からないITやクラウドなどの分野に投資することに抵抗がありました。これが「Chrome リモートデスクトップ」を選んだ背景です。
導入にあたり、特に大きな障害はありませんでした。社内のシステムや人の動きなどもほとんど変更していません。Googleアカウントを持っていれば誰でも使えるシステムなので、スムーズに導入ができました。
【効果】受注から製造までのスピードが早まり、残業時間が低減
「Chrome リモートデスクトップ」を導入した結果、製品を作り始めるタイミングを早めることができました。
弊社では製品の注文がファックスやメールで入ってきます。営業担当者が社外にいた場合、社内に戻ってきてから見積もりや手配などを進めていきます。たとえば午前中に社外に出ていたら、当日納期の注文がきてもスタートは早くても昼過ぎからです。当日納期の注文は多い日で1日100件程度くるので、残業時間が増加していました。
しかし「Chrome リモートデスクトップ」を導入してからは、注文が入ってきた時点で手配をかけられるようになりました。当日納期の注文も、すぐに現場へと回せます。結果として、残業時間も半分以下まで減りました。
業務量を減らす循環を作ったことで、現場ではタイミングによっては手が空く部署が出てきます。手が空いた部署は他の部署を手伝い、従業員全員で残業時間を減らすよう取り組んでいます。また営業部門は「早く会社へ戻らなくては」という意識がなくなり、より営業へと注力できるようになりました。
残業時間が減ったことで、従業員から「導入して良かった」という声もあがっています。もちろん残業時間が減れば、残業代は減ります。そこで弊社では、ベースアップを2度実施しました。結果的に残業を減らすための意識は更に高まり、現在は「定時で帰ること」へも意識が向きつつあります。
【展望】効率化の実現から生まれた時間と資金で、更なる価値を生み出す
都市部と比較してIT化の進展にまだまだ可能性を残している地域においては、ITの導入は「お金がかかるだけで、効果が出ないのでは?」というイメージを持つ企業も多いと感じています。弊社の事例が「やり方によっては、金額的な投資をせずとも結果を出せる」という参考になればと思っています。
現在は、「kintone」というコミュニケーションツールの導入を検討しています。これまで管理側の人間がミーティングをしても、若い従業員まで情報が行き届かないという問題がありました。新たなコミュニケーションツールに投資して、会社全体のベクトル合わせを目指したいと考えています。
今後はIT活用を強化していくことにより業務の効率化を実現するとともに、効率化によって生まれた時間的余裕と資金を投資して、他社が追随できないような企業になりたいと思っています。
社名:有限会社ホリエ
代表:渡部聡
主な事業:レーザー加工・板金加工・機械加工
所在地:愛媛県松山市東大栗町甲1070番地
創業:2000年1月