【経営課題】アナログ業務の限界とIT化への不安
鏑木社長「当社の主な事業は、お客様から依頼されたデザインをTシャツなどにプリントし、タグ付けまでを行う製造業務です。社員はパートを含め21名。中国の工場で生産した商品を卸売業者に供給する事業も展開しています。」
田中さん「営業担当として活動する中で、鏑木社長との何気ない会話で『今後の事業規模拡大に向けて、設備の増設や人員の増員を視野に入れている』というお話があり、その情報を上席の鵜飼に伝え、なにかご支援ができないかということから、今回のご支援が始まりました。」
鵜飼さん「私は現在営業の責任者をしておりますが、約10年前に営業担当としてフィールディング様を担当していました。フィールディング様は、私が担当していた頃と比べて事業規模が約8倍にも成長していましたので、当然、業務のやり方を変える必要があります。しかし、鏑木社長から『受注管理はいまだにすべて電話でやっている』と伺い、驚きました。10年前と同様に、仕入れや請求管理などを社長お一人で担っており、この規模では負担が大きすぎると感じ、お客様サポート部とも相談し、金融支援以外にもサポートできないかと考えました。」
河村さん「相談を受け、鵜飼、田中とともにフィールディング様へ訪問し、まずは業務の流れや現状の課題についてヒアリングを行いました。現状の鏑木社長のご負担と今後の事業拡大を考えると、ITの活用は避けられないと感じました。IT活用に向けたご支援を模索する中で、中小機構の『IT経営簡易診断』のご利用を提案しました。」
鏑木社長「たしかに私一人での業務として限界を感じていましたが、正直なところIT化には強い抵抗がありました。流行に敏感なアパレル業界はIT化も進んでいるように思われますが、実際には伝票も手書きの複写式を使うケースが一般的で、当社でも約8割の業務を手作業で行っていました。IT化しようと言われても、何から手をつければよいのかわからなかったのです。」
【IT導入】仕入れから受注、請求まで一括管理
導入したツール:販売管理システム『board』
河村さん「2023年8〜9月に、中小機構が提供する『IT経営簡易診断』を活用。派遣された専門家と共に改めて業務フローを見直し、どの部分をIT化すべきか活用の可能性も含め分析しました。その後、2023年11月~12月にかけて、中小機構の『IT化支援アドバイザー派遣』を活用して、システム導入のご支援をしました。」
鏑木社長「最も重視したのは、請求漏れや見落としをなくすことです。取引数が増えるにつれ、見積もり金額と実際の請求額に差異が生じることがあり、それを防ぐための仕組みが必要でした。また、月単位の売上を正確に把握できる体制も求めていました。」
鵜飼さん「中小機構の専門家から複数の選択肢を提示していただきましたが、重要なのは『社長や現場スタッフが実際に使えるかどうか』でした。導入後の運用イメージを持てるよう、デモンストレーションを実施しながら選定を進め、最終的に鏑木社長が使いやすいと判断した『board』を採用しました。」
鏑木社長「コストと機能のバランスを考え、当社の規模に合ったシステムを選びました。中小機構の専門家が当社の状況を踏まえて最適なソフトを提案してくれたため、無駄なく導入できました。」
河村さん「導入はゴールではなく、その後の運用こそが重要ですので、中小機構にもご協力いただきシステム導入後も継続的なフォローを行いました。」
田中さん「鏑木社長は長年アナログで業務をされてきたため、まず1年目は対応しやすいお客様を対象に、見積もり作成と請求管理からスタート。そこから段階を踏んで、売上管理へと徐々に拡げていく方針を立てました。ちょうどインボイス対応の時期とも重なっていたため、請求書の発行だけは100%PDF化することを徹底しようと決めました。」
鏑木社長「導入後は『IT経営サポートセンター』のオンライン相談を活用し、専門家と『1ヶ月後にはここまで進める』と具体的な目標を設定しながら進めました。まるで夏休みの宿題を片付けているような気分でしたが(笑)、具体的に道筋を示してもらえたことや、適宜確認をしてもらえたことで、無理なくIT化を進めることができたと感じています。」
田中さん「現在では、奥様や営業担当の方も『board』を活用し、2024年10月には完全移行を達成されています。」

【成果】データの一元化で作業時間が大幅に短縮
鏑木社長「以前は請求書、顧客管理、仕入れ管理をそれぞれ別々のソフトやExcelで管理していたため、手間がかかっていました。それが一元化されたことで、作業時間が大幅に短縮。東北の営業担当者ともリアルタイムでデータを共有できるようになり、会社全体で一元管理が可能になりました。」
鵜飼さん「一連のIT導入支援をきっかけに、社長ご自身が自社の業務課題を改めて深く考えるきっかけになったのではないかと感じています。」
鏑木社長「そうですね。今回、IT戦略マップや業務フローを作成してもらったことで、課題が明確になりました。東京東信用金庫の皆さんと相談しながら『次はこの課題に取り組もう』と目標を立てて一つずつ改善を進めた結果、IT導入が軌道に乗り、業務の見直しにもつながっていると感じます。」
鵜飼さん「今回のご支援をきっかけに設備投資のご相談もいただき、機械導入の助成金支援など、IT以外の分野でもお手伝いができています。」
鏑木社長「今後は、勤務管理や給与計算の自動化も視野に入れています。現在は経理担当者が手作業で給与計算を行い、社会保険料の計算は税理士に依頼していますが、ITを活用することでコスト削減につながると考えています。」
河村さん「信用金庫の強みは、お客様と長期的に関わり、成長を支援できることです。これからもご相談に乗りながらサポートを継続し、お客様と共に発展していける関係を築いていきたいと思っております。」

【事業者の声】IT導入の第一歩は、身近な支援機関への相談から
鏑木社長
「中小企業の経営者は、日々の業務に追われ、新しいことを始めるのが難しいですよね。とくにIT化はハードルが高く感じるものですが、まずは身近な支援機関に相談することが大切だと思います。当社ではIT導入したことで売上を明確に把握できるようになり、請求のやり取りもスムーズになりました。本当にやってよかったと感じています。いきなり中小機構に問い合わせるのはハードルが高いと感じるかもしれませんが、まずは普段付き合いのある金融機関などに相談すれば、そこから支援の道が開けてくると思います。」

株式会社フィールディング
所在地:東京都墨田区横川2-4-9PAGEビル1F代表:鏑木 良弘