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事業承継を機に「経営の見える化」 伝統を受け継ぐ老舗の新たな挑戦

  • 2025年03月07日
  • 大川屋(飲食店)×河津町商工会(静岡県)
  • 飲食業
  • POS(飲食店)
  • 決済(店頭クレジットカード)
  • 決済(店頭QRコード)
  • 中部
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河津町商工会は、日頃から地域の事業者支援に力を入れており、老舗うなぎ店「大川屋」とも長年にわたり信頼関係を築いてきました。経営相談や青色申告の記帳指導を通じて事業の安定と発展を支えるなかで、数年前に後継者である大川良樹さん、文子さん夫妻が事業に参画。「事業承継を機に経営の見える化を図りたい」というお二人の相談に応え、担当指導員の杉井俊介さんが、専門家派遣制度を活用してITコーディネータの岸本圭史さんと連携したIT導入支援を実施。ITツールを活用した経営改革を進めたことで、大川屋はさらなる成長へと向かっています。

【経営課題】 事業承継を機に『経営の見える化』をしたい

大川良樹さん「大正時代に創業し、曾祖母の代から私で4代目です。従業員は私たち夫婦とパートさんを含め5名。事業継承後も売上は増加していますが、これまでは決算時にまとめて申告する、いわゆる“どんぶり勘定”の状態でした。」

杉井さん「大川屋さんとは先代からのお付き合いです。今回は、事業承継を機に『経営の見える化』をしたいというご相談だったため、専門家派遣制度の活用を提案し、ITコーディネータの岸本先生と共に会計システム等の導入を支援することになりました。」

文子さん「会計の時に帳簿がつけられお金管理の不安を減らし、売上状況をリアルタイムに確認できるようにしたかったのです。補助金の存在も知らなかったので、提案していただけてありがたかったです。」

【IT導入】会計・レジ・キャッシュレスの連携を強化
導入したツール:『オンライン版弥生会計』『Misoka』『Airレジ』

岸本さん「導入を検討し始めたのは2022年12月で、実際に導入したのは2023年6月からです。個人商店であり、目的が『会計の見える化』であったことから、会計ソフトの機能を比較検討し、『弥生会計』のクラウド版をご提案しました。その流れで、弥生会計と連携できるPOSレジシステムの『Airレジ』を導入。その後、通信販売の管理用に『Misoca』も加えました。」

良樹さん「キャッシュレス決済も導入したのは、お客様の利便性を考えたからです。以前、インバウンドのお客様が食事後に現金でしか支払えないと知り、慌てて往復15分ほどかけて駅前のATMに走っていかれたことがありました。そのとき、『これは何とかしなければ』と感じたのです。」

岸本さん「ITツールは事業者ごとに運用方法が異なります。そこで、導入時に『レジ締めの手順』などの操作説明の様子を動画撮影し、事業者さん専用のYouTubeマニュアルとして共有しています。手間がかかる導入支援ですが、こうすることで事業者さんがより早く自立して運用できるようになります。」

文子さん「使ったことのないツールだったので不安がありましたが、動画マニュアルのおかげですぐに使えるようになりました。」

杉井さん「文子さんはSNSの活用にも挑戦して、インスタグラムも開設されましたね」

文子さん「はい。せっかくお店に足を運んでくださるお客様に、いつでも定休日をすぐ確認してもらえるようにしたかったのです。」

【成果】IT導入で売上の見える化と経営改革を実現

文子さん「クレジットカード払いが多くなり、キャッシュレス決済の比率が月ごとに増えています。常連のお客様もポイントが貯まるQRコード決済を積極的に利用されるようになり、とくに年末年始は売上アップに繋がりました。キャッシュレス決済だと『ちょっと贅沢しようかな』という気持ちになる方も多いようです。また、現金のみの頃はレジの金額が合っているのか確認するのが大変でしたが、キャッシュレス決済ですと現金を数える必要がないので会計業務の負担が大幅に減り、銀行に両替に行く手間も減りました。」

良樹さん「売上や経営指標をリアルタイムで把握できるようになったことで、より精度の高い経営判断ができるようになりました。たとえば、『この日は夜営業をしたほうがいいのでは?』といった戦略も、以前は勘(経験則)に頼っていましたが、今では時間帯別の売上データや週ごとの比較をして判断しています。」

岸本さん「最近では、ChatGPTのような生成AIを活用しながらご自身でデータを分析されるなど、IT導入による意識の変化を感じます。」

文子さん「Airレジの売上データを過去2年分ChatGPTで比較分析したところ、新規顧客が増えていることがわかりました。SNS発信(Instagram)の効果が出ているのではないかと実感できて嬉しかったです。実は、IT導入でお休みを増やしたいと思っていましたが、逆にモチベーションが上がり、もっと頑張ろうという気持ちになりました。」

良樹さん「妻が前向きになってくれて嬉しいです。私たちが大切にしているのは、『お客様ファースト』の精神です。商売を長く続けるためには時代のニーズに柔軟に対応する必要があります。今回、岸本先生に教わった『Wants(欲しい)』と『Needs(必要)』のバランスを見極めながら、これからも時代に合わせた経営を続けていきたいと思います。」

岸本さん「嬉しいですね。データが蓄積されるほど、経営の精度は上がっていきます。一般的な市場データではなく、自社のリアルな情報を基に戦略を立てられるのは、大きな強みですよ。」

杉井さん「専門家のアドバイスを活かし、成果をモチベーションに繋げて、次の目標へステップアップしていく姿勢が成功の要因ではないでしょうか。地域の人気店として、地域のさらなる活性化に貢献していただけると期待しています。私たちも引き続き支援してまいります。」

うなぎの店 大川屋 
HP:https://www.ookawaya.com/index.html

所在地:静岡県賀茂郡河津町谷津303-3
代表:大川 良樹

【サポートノウハウ】商工会ならではの密なコミュニケーションを大切に

杉井さん「河津町ではIT導入補助金の活用事例は多くありませんでしたが、相談があった際に、すぐ専門家と連携できる体制を整えたことでIT導入事例が増えてきています。支援において一番大切なのは、何でも気軽に相談できる関係性を築くことだと考えています。地域の事業者さんが『ちょっと聞いてみよう』と思える環境づくりのために、職員一同で日頃から密なコミュニケーションを心がけています。」

岸本さん「ITコーディネータとして、商工会の専門家派遣事業を通じてIT導入を支援しています。ITツールの選定には、中小機構の『ここからアプリ』を活用して業種別の成功事例や適したツールを調査し、他府県の事例も参考にしながら、それぞれの事業者さんにとって最適な選択肢を提案することを心がけています。」

【事業者の声】商工会の伴走支援に助けられています

良樹さん「杉井さんは、まさに伴走支援を体現されている存在です。私は前職でサラリーマンをしていたため、経営に携わるようになってからは何かあれば私、妻ともにすぐ杉井さんに相談し、アドバイスをいただきながら一歩ずつ進めてきました。コロナ禍の時期を含め、あらゆる局面で支えていただき、本当に助かっています。今回のIT導入も、売上の見える化ができたことで経営状況が把握しやすくなり、モチベーションまで上がりました。改めて、相談・導入して正解だったと実感しています。」

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