【経営課題】 配達食数を増やし、サービス品質を向上させたい
大塚さん「当社は、私を含め社員4名と、パート社員10名で運営しています。配達を担当しているのは主に50〜60代のスタッフです。配達に関する課題意識は持っていましたが、どこから取り組めばよいのかわからない状態でした。」
相川さん「まずは私が中立的な立場から大塚社長と社員の両方にアンケートを実施し、『配達食数が適正かどうか』を確認しました。その結果、社長は『契約数に基づけば、午前中に平均30件、午後に20件ほど配達しなければならない』と考えていた一方で、配達担当の社員たちは『その配達量をこなすのは難しい』と感じていることがわかりました。
日々の配達ルートは各担当者が自身の経験に基づいて設定しており、土地勘のある社員は午前中に25件配達できましたが、土地勘がない社員は17~20件が限界でした。また、紙の地図を使っていたため、新規顧客宅への適切なルートが判断しにくく、大幅なロスタイムが生じていました。配達員の焦りから自動車事故のリスクが高まる可能性も懸念されました。」
大塚さん「社員の採用時も土地勘があるかどうかを重視していたため、採用できる人材が限られていたんです。その結果、新規顧客の開拓が思うように進まず、売上も伸び悩んでいました。」
相川さん「そうでしたね。また、大塚社長は高齢者を地域から取り残さないという信念をお持ちでしたが、配達前の朝礼に参加してみたところ、社員の皆さんは『どの道が通りやすいか』といったルート確認ばかりを気にかけており、お客様に関する情報共有が行われていませんでした。時間内に配達するのが精一杯で、高齢者の見守りにまで目が向いていないのではないかと感じました。」
【IT導入へのステップ】ベンダーとの打ち合わせに同席
導入システム:クラウド型宅配効率化システム『SweeTTo』
大塚さん「当初、チームイノベーション実践プログラム(栃木県主催)の専門家の支援を受け、無料で使えるグーグルマップなどでプロトタイプを作成してもらい、10日間ほど試用しました。このままでも十分に利用できるシステムでしたが、長期的に使えて従業員にも使いやすいものにしたいという思いから、同じようなシステムを検討することにしました。約1年にわたり当社に合うシステムを探しましたが、解決策が見つからず諦めかけていたところ、前述の栃木県の実践プログラム担当者がクラウド型宅配効率化システム『SweeTTo』を含む3つの候補を紹介してくれたのです。」
相川さん「それぞれのベンダーとの打ち合わせに私も同席し、一緒にメリット・デメリットを比較検討しました。」
大塚さん「比較検討の結果、IT導入補助金を活用して、2023年3月に『SweeTTo』を導入し、配達車両4台にタブレットを設置しました。タブレットを活用することで、ルート確認や日報記入がスムーズになっただけでなく、遠方に住むご家族へ配達完了のメール送信も可能になりました。」
【IT導入の効果】配達効率が向上し、配達食数が約2倍増加!
大塚さん「配達効率が向上し、車両1台あたりの配達食数が大幅に増えました。導入後は全担当者が午前・午後ともに35~40食を配達できるようになっています。配達ルートの無駄が減ったことで、ガソリン代が高騰しているにもかかわらず、燃料コストも導入前より下がったんですよ。」
相川さん「導入直後はタブレット操作について戸惑いの声も多かったようですね。大塚社長や幹部社員がパートさんたちのそばに付き添い、何度も操作方法を説明している場面をよく見かけました。」
大塚さん「導入してから1ヵ月ほどは大変でしたが、今では全員が便利にタブレットを使いこなしています。ルート情報や顧客情報が集約していることから、新人の配達担当者でもすぐに仕事を始められる環境になりました。」
相川さん「サービスの品質向上についてはいかがでしょうか?」
大塚さん「配達担当者がお客様と日々接する中で気づいた小さな変化をタブレットを通じて共有するようになり、より細やかな見守りサービスができるようになっています。お客様からいただく感謝の言葉も共有するようになり、社員のやる気も上がりました。」
相川さん「IT導入後、株式会社トレンドさんは栃木市、鹿沼市、壬生町における高齢者配食サービスのシェアを28%まで伸ばしました。これからもっと地域の高齢者の皆さんに喜ばれる事業を拡げていっていただけると感じています。私たちも共に支援してまいります。」
社名:株式会社トレンド
HP:https://trend-tochigi.com/
所在地:栃木県栃木市都賀町家中5932-13
設立:2015年
代表:大塚 友義