【インタビュー】商工会が商工会であり続けるために〜千葉県商工会連合会、オンライン相談事業〜
- 2023年3月29日
- 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 高見康一
- 公的機関
- Web会議
「公的機関も変わらなければいけない」。テレワーク普及やAI・IoTなどの新技術登場により、あらゆる組織は今、変革を迫られています。公的機関も例外ではありません。「今までやってきたやり方」のままでは「今まで通りの価値」を生み出せない状況が、どの組織にも当てはまるのではないでしょうか。
今回は千葉県に所在する公的機関「千葉県商工会連合会」が、Zoom Meetingを活用して自組織のサービスを変革した取り組みについて、担当の岡崎さんにお話をお伺いしました。
【商工会とは】法に基づき地区内の商工業の総合的な改善発達を図っている。
ご存知の方も多いとは思いますが、まずは商工会・商工会連合会について簡単に説明します。
商工会は「商工会法」に基づき設立されている組織で、地域事業者の支援を目的としています。地区内の事業者から会員を募り、主に会員事業者の経営支援に従事しています(参考:全国商工会連合会 商工会について~商工会とは~)。似た組織に商工会議所がありますが、主な違いは「地区」で、商工会は、人口が比較的少ない町村区域に立地している事が多いです。またその特性上、会員も小規模事業者の割合が比較的多いです(参考:全国商工会連合会 商工会と会議所の比較)。
商工会連合会は各都道府県に一つあり、管轄内にある商工会の支援を目的としています。広域的なテーマや専門的なテーマについて各商工会の行う経営支援事務等の側面支援等を行っている組織です。
そのうちの一つ、千葉県商工会連合会では、昨年5月に「オンライン相談事業」を開始しました(参考:千葉県商工会連合会)。
対外的には「無料電話相談窓口」と称し、経営に関する悩み相談を「オンラインでも」対応できるようにしました。電話と謳っていますが、Web会議形式での相談も可能です。平日9時30分から15時30分までに連絡すれば、経営支援のプロである中小企業診断士が相談に乗ってくれます。
【きっかけ】少子高齢化が進む中、経営課題が増え、テレワークが普及した。
岡崎さん 昨今、事業者を取り巻く環境は大きく変化しています。コロナ禍やウクライナ危機、働き方改革や賃金上昇、AI・IoTなどの新技術普及。そもそも、商工会地域は少子高齢化が比較的進んでいる地域が多く、地域に根ざした事業を行っている方にとっては厳しい経営環境となっています。そこに上述のような変化の波が押し寄せ、経営者はもちろん、商工会の経営指導員の悩みも増加傾向にありました。
そんな中、コロナ禍によってテレワークが一般に知られるようになり、対面していない状況で込み入った話をする事へのハードルが低くなりました。それまでは経営相談の依頼があった場合、相談に乗っていただける方を現地に派遣するなどの対応を行っていましたが、やはりそれなりの時間や手間がかかります。非対面に対する心理的ハードルが下がった今こそ、遠隔でも相談できる体制を整えれば、経営者や経営指導員の悩み解決に貢献できるのではと考えました。
【取り組んでみて】仕組みづくりはスムーズ。巻き込んでいくには熱意が必要。
岡崎さん 仕組み自体を整えるのはそんなに難しくありませんでした。まず、相談員が対応するためのスペースの確保とネットワーク環境の整備を行い、相談手段は電話とWeb会議の2つを用意しました。電話については、専用の電話番号を取得し電話機を用意。Web会議については、以前取得したZoom Meetingのアカウントを専用アカウントとして転用。また、Webカメラとマイク・スピーカー機能が必要な為、ノートPCを数台用意しました。さらに、相談者個々の事情に関わる相談になった場合の情報秘匿の必要性から、遮音ブースも準備しました。相談対応者の確保については、千葉県中小企業診断士協会に協力をお願いし、時間中に最低2名は相談対応可能な体制を取りました。予算は事業環境変化対応の中から捻出しています。
千葉県中小企業診断士協会や機器設置業者など外部関係者の協力もあり、仕組み作りはスムーズに進みました。ただ関係者を「巻き込む」という点では苦心しました(今も苦心しています)。構想段階ではまず、商工会の代表者や県連内部の関係者へ働きかけを行いましたが、短期的な費用対効果の面で共感を得られるような計画を作成するのに苦心しました。
また事業を開始した後は、商工会毎の温度差を埋めるのが課題となっています。利用頻度が高い商工会とそうでない商工会がありますが、地域差というよりも、担当指導員にしっかりと思いを伝えられているかどうかが差を生み出していると感じています。
【これから】商工会であり続けるために、試行錯誤を続けていく。
岡崎さん この事業を開始して約1年経ちました。正直なところ、想定通りには進んでいません。まだ「巻き込む」ところが十分でないのも、原因であるように感じています。現時点では、現場で利用しやすい環境を整えるのに、「相談員の固定」や「曜日毎のテーマ設定」などが有効ではないかと考えています。周知の仕方もまだまだ工夫していきたいです。今回は関係者へのチラシ配布の他、ラジオCMや新聞広告なども実施し、広く周知を行いました。何が効果的だったのか、しっかり分析を行い改善していきたいと思います。
気軽に経営相談ができる場所があることは、今の会員に対する支援拡充になることはもちろん、新規会員獲得にも繋がると考えています。
商工会に行けば、日々の事業の悩みを気軽に相談できる。
これからも商工会がそんな存在であり続けるため、商工会を支える組織として、この事業をできる限り長く続けていきたいと考えています。
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https://ittools.smrj.go.jp/case/result.php?is_clear=&is_support_cases=set