ITプラットフォームへ移動
特集

事業者からSNSの相談を受けたときの対応

  • 2024年9月9日
  • 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 村上知也
  • SNS
事業者からSNSの相談を受けたときの対応

様々なSNSが登場し、どのような場合にどのSNSを使っていけばよいのかは悩ましいものです。事業者からこのような質問を受けた支援者の方も多いのではないでしょうか。
本記事は、事業者からSNSについてよく質問を受ける内容に答えていく形式となっていますので、支援者の方はこの記事を参考に、ぜひ積極的に事業者のSNS相談に対応していただければと思います。

デジタル相談で一番多いのはSNS活用

日々の経営相談の中で、私への相談はデジタルに関する物がほとんどです。しかし、デジタル相談と言っても内容は様々です。10年前であれば、Webサイトを作りたい、改善したいという相談が多かったのですが、コロナ禍では、接触を減らすためにネットショップを立ち上げたい、ネットで接客をしたいという相談が増えました。

ここ数年では、相談の数自体は多くはないものの、インボイス制度や電子帳簿保存法の改正対応など、バックオフィスの仕組みの見直しについての相談がありました。最近では、モバイルオーダーやPOSレジの導入などの相談も増えています。

その中で最も件数が多いのは、SNSの活用に関するものです。10年前でもそれなりに相談はありましたが、最近は更に増えています。

以下のような質問をよく受けます。

①SNSでファンを作るにはどうしたらいいですか?
②どのSNSを活用したらいいですか?
③Instagramの発信はどのように使い分けたらいいですか?
④新規のユーザーに拡散されるためにはどうしたらいいですか?
⑤1日1回投稿しないとだめですか?
⑥投稿の質を高めるにはどうすべきですか?
⑦商品・サービスが違ったら複数のアカウントを作ったほうがいい?

今回の記事では、SNSについて事業者からよく相談がある質問に回答する形式でお伝えします。

①SNSでファンを作るにはどうしたらいいですか?

皆さんは消費者の立場でネットの商品を購入されるでしょうか?多くの方は、有名どころの大手ショッピングモールで購入されるでしょう。たくさん販売していくには、やはりショッピングモールは欠かせません。しかし、競合も多く、ショッピングモールは資本力の強い大手会社の広告出稿力に負けてしまっている中小事業者が多いです。

そこで、中小事業者はSNSを活用して自社を認識していただき、自社のファンになってもらうことで自社商品・サービスを選んでもらうことを目指すわけです。

しかし、SNSを始めても、自社の宣伝投稿ばかりしていて全然ファンが増えず、成果につながっていないケースも多くみられます。SNSは広告の場ではありませんので、お客様にとって役立つ情報や応援してもらえる投稿が必要です。

著者は将棋を見るのが好きなので、SNSで毎日ショート動画を使って詰将棋の問題や、次の一手などの発信をされているアカウントを複数フォローしています。そうすると、そのSNSアカウントの方が将棋の本を出版したら思わず購入してしまいます。普段であれば、本を購入するならショッピングモールで検索して比較するわけですが、SNSでファンになっていれば、こういった比較をすることなく購入するわけです。

SNSでファンを作るのはそれほど簡単ではありません。しかし重要性は高まっていますので、支援者の方には、SNSでファンを作れるのか、事業者の方と一緒に悩みながら支援していただきたいと思います。

②どのSNSを活用したらいいの?

SNSは年代によって使われるツールが変わってきます。個人の連絡手段ではLINEが一番使われていますが、大学生男子ではDiscord、大学生女子ではInstagramでメッセージをやり取りしているというアンケート結果もあります。以下に主要SNSの年代別利用率を掲載しています。TikTokだけは明らかに若い年代が多いですが、それ以外のSNSは、若者だけではなく中高年の利用率も高まっています。

【SNSの年代別の利用率】

SNSの年代別の利用率

(出典) 2024年7月版!性別・年齢別 SNSユーザー数(X(Twitter)、Instagram、TikTokなど13媒体) | 株式会社ガイアックス (gaiax-socialmedialab.jp)を基に著者にて作成図

そのため、どのSNSを使ったらいいですか?と聞かれたら、「とりあえず全部アカウント作ってみては?」とお伝えしています。会社名や商品名を検索して、どのSNSでも見つけてもらえることは重要です。

しかし、全てのSNSに注力して運用するのは現実的には難しいでしょうから、自社が一番注力しているSNSに絞って、あとはアカウントだけ作成し、当社のメインの発信は◯◯でやっていますと掲載しておくといいでしょう。

なお、商品やサービスの紹介をする用途ではInstagramを活用しているケースが一番多いと感じています。人間中心で面白く発信するならTikTokでもいいでしょうし、色々語りたいならYouTubeが向いているでしょう。既存のお客様とつながって連絡を取り合うなら公式LINEがお勧めです。

この後は、Instagramの活用を中心とした質問にお答えします。

③Instagramのストーリーズ、リール、投稿はどう使い分けるの?

一口にInstagramを発信すると言っても、発信内容には種類があるため使いどころが変わってきます。毎日、熱心にストーリーズを発信するのは悪くありませんが、既存顧客には届いても新規のユーザーには情報が届きにくいです。

新規のユーザーに情報を届けるには、ストーリーズより投稿、投稿よりリール(ショート動画)の重要性が高まっています。新規ユーザーの獲得を目指す際にはリールに重点をおいて発信していくべきです。

また、将来的には熱心なファンを掴んで、ライブで双方向の関係性を構築できることを目指したいところです。

【Instagramの発信内容の種類について】

Instagramの発信内容の種類について

④Instagramが新規のユーザーに拡散されるにはどうしたらいいですか?

Instagramではフォローしているアカウントの情報を見る仕組みと、発見タブから新規の情報を見つける仕組みがあります。そのため、拡散されるためには発見タブにより露出する必要があります。しかし、発見タブに出るか出ないかは、Instagramのアルゴリズムによって自動で決められています。

具体的には、初速や割合が重視されています。初速というのは投稿直後にいいね!がたくさんついたりすることを言います。つまり、真夜中で人のいない時に投稿すると初速が悪くなるため、やはり自社の顧客層が多い時間を狙って投稿していくことが望まれます。

インスタグラムの発信が拡散されるには

更に重要なのは割合です。リーチ(ユーザーの画面に表示された回数)がいくら多くても、アクション(いいね!や保存、コメントなどの回数)が少なければ、この割合は低くなります。

つまり、多くの人に広げるのが大事ではなく、一つ一つの投稿の質を高めて、多くのユーザーにアクションしてもらうことが重要なのです。質と量はどちらも大事ですが、まずは投稿の質を高めることを目指してほしいところです。

⑤1日1回投稿しないとだめですか?

もちろん投稿量の観点では投稿数は多いほうが良いですが、その結果、雑な投稿が増えてユーザーからの評価が下がるくらいなら、頻度を下げてでもより質の高い投稿を目指すべきです。

⑥投稿の質を高めるにはどうすべきですか?

投稿では、写真一枚より、複数枚でシナリオを作る必要があります。もちろん美しくて心に響く写真なら1枚でもよいでしょう。ただどうしても写真一枚投稿だとユーザーはすぐ通り過ぎてしまいます。複数の写真や文字バナーも含めて投稿をセットにして長く楽しんでもらえるようにしたいところです。

1投稿の中で流れをつくる

現在、雑誌は読まれなくなってきましたが、昔の雑誌コラムのようにひとまとまりで楽しんでもらえるコンテンツを作っていきましょう。

⑦商品・サービスが違ったら複数のアカウントを作ったほうがいい?

「現状のアカウントはInstagramで1つ持っているが、新サービスを始めるので別にアカウントを作ってInstagramで2つ運用した方がいいでしょうか?」と言った質問もよくあります。

確かに提供しているサービス内容が複数あって異なり、対象となるお客様像も全く異なるのであれば、アカウントは分けざるを得ないでしょう。

余談ですが、昔、中小企業診断士試験で、中古車販売業が焼肉屋を始める事例が出題されたことがありました。中古車販売業をやっていたが、新しく焼肉屋を始めるなどであれば、悩むまでもなく別のアカウントを作るでしょう。

悩ましいのは顧客ターゲットも近いが異なるような場合です。アクセサリーの製造販売をされていた方が、アクセサリー製造ワークショップを始める場合はどうでしょうか?

アクセサリーを買いたい人と、作りたい人で属性が異なる可能性もあり、”基本的”にはアカウントを分けて発信した方が良いと思います。

しかし、アカウントが2つあれば運営の負荷は重くなります。そのため、アドバイスとしては、現状のアカウントが熱心に発信できていれば、もう1つアカウントを増やしても運営できる可能性はあるでしょう。現状のアカウントでさえ発信頻度が低いのであれば、2つ目のアカウントを作ってもあまり活性化できないことが多いです。

「2つに分けて運用できますか?」と問いかけてみてください。
2つの弱いアカウントを作るくらいなら、1つのアカウントだけでも熱心に発信していくことを目指したほうがいいでしょう。

まとめ

ホームページ、YouTubeチャンネル、SNSいずれにしても、運用を開始してすぐにうまくいくわけではありません。事業者の皆さんは苦労し悩みながら発信を続けています。トライアンドエラーが必要です。

投稿をしたらどの程度成果が出たかをインサイトを一緒に見て、一緒に考えていくことが伴走支援につながります。

関連おすすめ