電子帳簿保存法 義務化後の注意点
- 2024年4月2日
- 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 原田将充
- 電子帳簿保存法
令和6年1月1日より、電子帳簿保存法における電子取引データの電子保存の義務化が開始されました。
多くの方が、令和5年中に義務化への対応をされたと思いますが、いざ制度が始まると、運用方法に戸惑われている方もいると思います。
今回は義務化開始後、少しでも負担が楽になる方法を国税庁の一問一答から抜粋してご紹介いたします。
ご自身の運用方法と比較して、取り入れることができるものがあれば、是非チャレンジしてみてください。
一部データのみ猶予措置を適用することも可能
電子取引データは原則として、「取引先、取引年月日、取引金額」の検索要件を充足する形での電子保存が必要です。基本的には要件を充足して電子取引データを保存できているが、一部の電子取引データについては要件に対応することが困難という事情もあるかと思います。
要件を充足した電子保存が困難なことに、「相当の理由」がある場合は、要件を充足せず、電子保存しても構わないとする「猶予措置」があります。
猶予措置については、電子取引データ全般について検索要件を充足した電子保存の対応が困難な事業者のみ適用を受けられると考える方もいると思いますが、一部の電子取引データのみ対応困難なため、猶予措置の適用を受け、要件を充足しない形で電子保存するという対応も認められております。
「相当の理由」は会社の規模に関係なく、また、税務署への届出は不要で、人手・資金不足等幅広い理由で認められています。
どうしても、対応が困難なデータがある場合は、「相当の理由」があるとして、猶予措置を適用することも、一考してみてはいかがでしょうか。
ECサイトを利用した場合の領収書等データのダウンロードについて
国税庁のお問合せの多いご質問(令和6年1月)に下記質問が追加されました。
「ECサイトで物品を購入したとき、ECサイト上の購入者の購入情報を管理するページ内において、領収書等データをダウンロードすることができる場合に、領収書等データを必ずダウンロードして保存する必要がありますか。」
【回答】
ECサイト提供事業者が提供するECサイトを利用し物品を購入した場合に、当該ECサイト上で領収書等データの取引情報を確認することができるようになった時点で電子取引の受領があったものとして、電子取引に係る保存義務者(物品の購入者)は、その領収書等データを保存する必要がありますが、当該ECサイト上でその領収書等データの確認が随時可能な状態である場合には、必ずしもその領収書等データをダウンロードして保存していなくても差し支えありません。ただし、この取扱いは、ECサイト提供事業者が、電子取引に係る保存義務者(物品の購入者)にECサイトで物品を購入したとき、ECサイト上の購入者の購入情報を管理するページ内において、領収書等データをダウンロードすることができる場合において満たすべき真実性の確保及び検索機能の確保の要件を満たしている場合に受けることができます。
電子帳簿保存法の検索機能の確保の要件を満たしたECサイトでの商品の購入については、サイト上で検索が可能ですので、購入の都度、領収証等をダウンロードして保存しておく必要はありません。(引用)国税庁「お問合せの多いご質問(令和6年1月)」Ⅰ電子取引関係 追2
ETCクレジットカードに係る消費税法と電子帳簿保存法の各保存対応について
消費税のインボイス対応では、令和5年10月に一問一答が追加され、全ての高速道路の利用に係る利用証明書の保存が困難なときは、クレジットカード会社から受領するクレジットカード利用明細書と高速道路会社等ごとに任意の一取引に係る利用明細書を保存することで、仕入税額控除ができることとされています。
一方、電子帳簿保存法の観点では、全てのETC利用に係る利用証明書をダウンロードする必要があるのではないか、とお考えの方もいらっしゃると思います。
ETCの利用証明書については、納税者が必要に応じて自ら必要な範囲を指定してウェブ上で発行してもらうものであり、必ずしも利用証明書の全てを納税者が受領しているものではありません。このため、法人税及び所得税法上、このように、納税者が受領していない利用証明書についてまで、あえて発行を受け、ダウンロードして保存する必要はありません。(国税庁お問合せの多いご質問追可3問)
そのため、消費税のインボイス対応のため、任意の一取引に係る利用明細書を電子データで保存している場合は、その電子データのみの保存で事足ります。