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特集

利益最大化と円滑な業務プロセスを支える「発注仕入(購買)管理システム」

  • 2022年7月1日
  • 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 鬼澤健八
  • 仕入
  • 購買
「発注仕入(購買)管理システム」のサムネイル画像

「発注仕入(購買)管理システム」は、前面に出る業務ではないので、IT化が二の次になりやすい分野です。
導入すれば、必要な量を最適なタイミング・価格による調達で、コストをコントロールして利益最大化に導き、かつ、物流プロセスや製造プロセスの円滑な運営に寄与できるシステムです。
社内業務を引き締めて利益を最大化させるために、購買プロセスにフォーカスを当ててみます。

購買プロセスでのIT活用のポイント

購買プロセスのIT利活用による管理ポイントを整理しておきます。

(1)資金負担と仕入コストのバランスを判断できる管理を

卸売業や小売業では、商品在庫を大量に保有していれば販売機会を逃さなくて済みます。同様に製造業でも資材を大量にストックしておけば、どのような製造計画にも対応できます。

しかし、資金を寝かすことになりますので、在庫計画に合わせてタイミングよく調達できるようにしておく必要があります。

逆に、多少早めの調達になったとしても、多めのロットで調達すれば安価に購入できる場合もあるので、少し先の必要量も視野に入れて発注すればコストダウンになります。

購買システムでは、“仕入先別の単価”、“ロット別単価”、“リードタイム(必要日数)”をマスタに登録して、資金負担と仕入コストのバランスを効率的に判断できるようにしておきます。

(2)発注先の検討に過去データを活用

複数の発注先で同じ商品・資材を扱っている場合がありますが、条件の良いところに発注するために、過去の発注実績を参考にすると良いです。過去の発注データで、単価が最も安かった先、納期が短かった先などを抽出し、順番づけして比較します。

また、取扱ロットや販促キャンペーンイベントなどで下がる場合もあるので、備考などに記入して判断できるようにしておくと良いです。システムによっては、自動的に商品・資材の最安値の発注先を選べるものもあります。

(3)発注処理は、すべてシステムを通して

発注済の商品や資材が入荷する前に、次の受注発生により追加で発注する場合があります。この場合、どれだけ未入荷のものがあり、時期別にどのように入ってくるのかを見えるようにしておかないと、二重発注や注文不足に陥る可能性があります。

発注処理は、すべてシステムに載せるようにしないとこの把握ができませんので、電話の口頭発注や個別のFAX発注を撲滅する運用が必要です。

(4)支払管理の効率化

入荷したときに、発注したとおりに入荷されたかを検品して入力しておけば、入荷データを元に、仕入先からの請求書突合業務を簡単にすることができます。

(5)一般管理費対象の購買にも活用できる

企業によりますが、商品・資材だけでなく、会計の一般管理費項目の「事務用品費、広告宣伝費、消耗品費等」の調達業務のウェイトが高い場合には、「発注仕入(購買)管理システム」が効果を発揮する場合があります。

よくある失敗例

システム導入にあたって、よくある失敗例を記載しておきますので、事前に失敗を防ぐための参考にしてください。

(1)販売管理システムと商品コード体系を考慮しないで進めると・・・

小売業、卸売業において、商品を仕入れてそのまま流して販売する場合の事例です。

同一商品なのに「販売管理システム」で使用している“商品コード”と、仕入管理システムで使用している“商品コード”をまったく関連がない体系で設定してしまったことで、発注する時に商品間違えを誘発しまうことがあります。

また、得意先との取引上の関係で「販売管理システム」の商品コードを得意先のコード体系に合わせている場合だと、同一の商品・製品でも在庫があることに気が付かず過剰発注してしまうことがあり得ます。

販売管理と仕入管理で、同一商品なのにコード体系を別に管理せざるを得ない場合は、共通コードに枝番や頭に付加させるか、第2コード等で読み替えするなどで工夫をしましょう。

(2)自動発注機能の設定は模索をしながら

常時使用する商品・資材などを、発注点を設定してその発注点を切った時に自動発注する機能を保有するシステムがあります。

発注必要リストが作成され、それを元に人間が発注処理をする場合は異常値に気が付けますが、自動的に発注書作成し仕入先へ連絡までする場合は注意が必要です。

発注点の設定において、シミュレーションを繰り返して段階的に設定する必要があります。また、在庫の使用入力においてコード間違いがあると、別の資材が不足状態になり自動発注がかかってしまいます。

自動発注の対象にすべきかの検討と、理想的な発注点設定の模索をしましょう。

  • 在庫管理のイメージ画像

(3)第一発注先の設定は定期的な見直しを

同一商品でも、仕入れ先ごとに、仕入価格、納期、最低ロット数等を登録できるシステムもあります。その場合、商品ごとに標準(第一発注先)の仕入先を設定でき、発注する時に、特に指定しない限りその仕入先が選定され、選定の判断作業を省いてくれます。

商品ごとに価格や納期の優先を考慮して標準(第一発注先)を設定しますが、途中で価格や納期の取引条件が変更になっているのに、マスタを更新していない場合や、優先順の設定変更をしていない場合は、気が付かずに意図しない発注をし続けることになります。

仕入先の条件は、数カ月に1回など定期的に確認をしましょう。

(4)バーコード活用しているのに、JANコードが印刷されてこない場合は・・・

製造元がJANコードを設定している場合は、JANコードをシステムに登録してコードを読み取ることで、発注入力や仕入入力の作業を省略して作業効率を上げることができます。

しかし、特殊商品や季節入れ替わり品などで、製造元がJANコードを設定していない場合があります。その場合は、JANコードと同じ体系のコードを独自採番するルールの“インストアコード”がありますので、運用ルールを作って、バーコードを一元管理できるように工夫しましょう。

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