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特集

やりっぱなしにしない。DMのデータ分析のやり方

  • 2021年9月21日
  • 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 眞本崇之
  • データ分析

自社で保有する顧客リストに対して直接アプローチすることにより、顧客との関係性構築から来店、販売といった行動へと誘導し、売上げを獲得することができるようになります。

今回は、顧客管理アプリ(顧客リスト)に対して紙のダイレクトメール(以下、DMと表記)を送る場合の効果測定のやり方を紹介します。

インターネットやSNSが普及しているとはいえ、郵送のDMを送る企業は多くあり、決して時代遅れな手法ではありません。
特に、自社で保有するリストにある人は、すでに興味を持っている人であることは間違いなく、DMによって直接アプローチすれば高い実施効果が期待できます。

DMの目的・ターゲットを決める

まず、自社で保有する顧客リストのなかから誰に向けてどのような内容でDMを発送するかを決めます。どのような条件のターゲットに送るか、を選別することは、施策の効果を高めるうえで最も重要と言っても過言ではありません。
例えば、一定期間ご利用のない顧客に、特別キャンペーン・クーポンを送付して来店を促すDMが考えられます。

高い実施効果を得るための工夫を検討する

1.確実に届ける工夫

顧客リストは、日頃から最新であるように更新をしていくことが大切です。
顧客管理アプリ、POSレジや予約システムなどと連動している場合、売上履歴などを自動で把握することができるようになりますので導入することをおすすめします。
また、権限に応じて従業員が誰でもアクセスできるようにしておきます。

特に、DM送付前後は、リストクリーニングと呼ばれる、間違った情報を修正・削除する作業を行います。
引っ越しなどで住所変更があった、「DM不要」と言われた、DMを送ったが宛先不明となってしまった、そもそも間違った住所で登録されていた、等の場合には、誤ってDMを送らないように、顧客データを修正しましょう。
リストクリーニングにより、データ分析をする際の正確性が向上します。

2.開封してもらう工夫

お客様宅には、毎日たくさんの郵便物が届きます。たくさんの郵便物のなかに埋もれて捨てられてしまうことを防ぎ、開封したくなる封筒やはがきのデザインであることがよいでしょう。例えば、透明な封筒であれば、封筒のなかから内容物が見えて、開封してもらいやすくなります。
また、紙以外の手触りのある封入物を入れる、という工夫をされている事業者もいます。過去に私がもらったDMに入っていた封入物としては、プラスチック製のブーメランや車の模型がありました。紙ではない固形のものが入っていたので、思わず開けて確認したくなりました。

3.興味を持ってもらう工夫

封筒を開けてもらったら、次に中身に興味を持ってもらう必要があります。
送付するDMのコンセプトやキャッチコピーです。
しばらく利用されていない顧客の場合には、自社のことを思い出してもらい、DMの内容に興味を持ってもらわなくてはなりません。

また、お客様に取ってもらいたいアクションを明示することが大切です。
例えば、慣習として「残暑お見舞い申し上げます」とはがきDMを送っていた場合、お客様はそのDMを見て何をしたらいいのかわからず、そのDMはすぐにゴミ箱へと捨てられてしまうでしょう。集客効果を求める場合には、このようにお客様に何を求めているのか、わからないDMになってはいけません。
DMからHPやLINEなどの詳細ページや予約ツールへ誘導させるだけでなく、『◯月◯日までに電話予約してください』『「DMを見た」とお問い合わせください』『DMを持ってご来店ください』『DMに書かれたクーポンコードで購入してください』など具体的な行動内容を明示することも必要です。

そして、アクションを取ってもらう最も有効なやり方は、DMだけの特典を付けることです。例えば、1000円割引クーポン、特別サービス、限定◯名様、無料プレゼント、等です。

成果を記録する

ネットでの施策の場合には、自動で成果を測定することができますが、アナログな施策の成果を測定する場合には、お客様から「DMを見た」と示していただかなくてはなりません。
来店の場合はDMを持参してもらうこと、電話予約などの場合は「DMを見た」と言っていただくことが必要となります。
お客様が言い忘れてしまうこともありますので、「何を見てご来店されましたか?」や、「DMはお持ちですか?」のように、従業員からお客様に声を掛けることを忘れてはなりません。

DMの効果は、◯月◯日△枚と毎日のように記録をしていく必要があります。
従業員の手間が増えますが、売上拡大に向けて取り組んでいることですので、正確な効果測定を進めるためには、従業員の協力が必須です。

また、お客様情報の1つとして、顧客管理アプリや顧客名簿(購入履歴)へと記録をします。
POSレジなどが連動している場合には、DMクーポンなどを使った購入履歴が自動反映され記録する手間が省けますので、売上管理や顧客管理ができるアプリの導入をおすすめします。

効果測定の方法

・反応率

まずDMの送付枚数に対して、どれだけの反応があったか、反応率を調べます。
反応率 = 反応枚数(来店者数や問い合わせ数) ÷ DM送付枚数

無作為に送るポスティングの反応率は、一般的に0.1%〜0.3%程度と言われています。10,000枚送付して、10〜30枚程度の反応が見込める、という程度です。

例えば、1800枚配布したDMに対して、100枚の反応があった場合、全体の反応率は5.6%です。
そこで、地区別に反応率を分けてみると、上図のようにA地区では10%、B地区では5%、C地区では3%のように分析することができます。
反応の低かったC地区の顧客に対しては、別キャンペーンを実施することがよい、と判断できるようになります。

・費用対効果

費用対効果を調べるには、粗利をベースに調べます。
費用対効果 = 粗利 – DM送付費用

例として、原価率40%の飲食店を考えてみましょう。
10万円のDM送付費用をかけたにも関わらず、売上10万円-売上原価4万円=粗利6万円という場合は、DM効果は4万円のマイナス、ということになります。
10万円のDM送付に対して、DMによる売上が30万円、売上原価40%(12万円)の場合は、18万円の粗利となりますので、DM実施の効果があった、と言えます。

なお、1人の顧客から継続的な売上が期待できる場合には、顧客生涯価値(LTV:Life Time Value、顧客が企業にもたらす価値の総計)を算出して、効果を分析するケースもあります。

比較をして分析、次の取り組みに活かす

多くの事業者は、「◯枚配って△人が来店、いくらの売上があった」だけで終わってしまい、「なぜ、このDMの反応が良かった/悪かったのか?」と分析をしていません。
その結果、次にDMを送るときには、まったく違う内容で、となってしまいます。

分析をすると、例えば、ターゲットとテーマが合致していた、キャッチコピーが刺さるものではなかった、特典に魅力がなかった、配布方法が悪かった(見てくれなかった、届かなかった)、など様々な原因が考えられます。
次の取り組みでは、
キャッチコピーや特典は同じで、デザインだけを変える
デザインやキャッチコピーは同じで、特典だけを変える
デザインや特典は同じで、キャッチコピーだけを変える
のように、一部だけを変えて取り組むことで、低い成果/高い成果の原因が判明していきます。
取り組みを振り返り、より効果の高いDMノウハウを得られると、効率の良い販売促進ができると、経営改善にも大きく役立っていくことでしょう。

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