顧客リストを活用するデータ分析手法3選
- 2021年9月7日
- 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 眞本崇之
- データ分析
自社で保有する顧客リストに対して直接アプローチすることにより、顧客との関係性構築から来店、販売といった行動へと誘導し、売上げを獲得することができるようになります。
今回は、効果的な販売促進を実施するために、保有する顧客リストのなかから、顧客の購買動向や属性を見える化する顧客データ分析手法を解説します。
難易度別に、わかりやすいものから『属性分析』、『デシル分析』、『RFM分析』の3つをご紹介します。
昨今、分析機能が含まれている顧客管理ソフトもあります。
現在使用されている顧客管理ソフトがあるようでしたら、確認してみてください。
1.属性分析
属性とは、共通して備わっているとされる性質や特徴であり、分類が可能な項目のことです。
顧客リストのなかにある属性では、年齢(生年月日)、性別、居住地(住所)、家族構成、職業、収入などが挙げられます。
法人の顧客リストの場合には、業種・業界、所属する部門や役職などが挙げられます。
属性分析での顧客リスト活用例として、
・「住所」>◯市◯町◯丁目を選択してDMを発送する
・「生年月日」>「翌月に誕生日を迎える人」を選択して、誕生日キャンペーンをご案内する
・「家族構成」>「既婚・子供あり」の人を選択して、子供の教材や学習塾の講習をご案内する
・「部門」>「人事部」または「総務部」に所属する人を選択して、労働管理現場でのIT活用セミナーをご案内する
というように、属性を細かく把握していれば、複雑な条件での抽出ができ、対象を狭めた販売促進が行えるようになります。
属性分析は、属性を条件として該当する顧客のみをピックアップするだけであるため、分析ノウハウがなくても、容易に行える手法となります。
2.デシル分析
デシルとは、ラテン語で「10等分」という意味です。
デシル分析では、顧客リストを特定項目(購入金額など)で大きい順に並べてから、順番に10グループに分割し、購入比率や売上高構成比を分析することで、「常連客」を見つけられます。
売上への貢献度の高い優良顧客層を知ることができるため、特定の顧客層により注力したマーケティング施策を実行する際に活用する分析手法となります。
売上データと顧客情報が紐付いている必要があり、また分類や集計に一手間かかります。
管理ソフトがない場合には、Microsoft Excelのような表計算ソフトで分析する必要があります。
デシル分析では、パレート図(下図)と組み合わせて分析をすることが一般的です。
常連顧客の売上が多い店舗では、左図のように、上位グループで売上構成の約9割を占めるような結果となります。
一方で、右図のように、多くのお客様がバランス良く利用していただいていると、上位グループでもばらつきの少ないグラフの形状となります。
3.RFM分析
『デシル分析』では、一度だけ高額商品を購入した顧客が、常に上位グループに入り続ける可能性があります。そのために、もう少し高度な『RFM 分析』という顧客分析手法を用いることがあります。
RFMとは、Recency (最新購入日)、Frequency(頻度)、Monetary (購入金額)の頭文字を取っています。
RFM分析は3つのデータから顧客をランク付けする手法で、ランク付けされた顧客に対して、各グループの性質に合わせたマーケティング施策を実行します。
・Recency(最新購入日)
Recencyは、最後に購入した日を指します。
その時期によって、いくつかのグループに分類します。
(例 1週間>1ヶ月>3ヶ月>6ヶ月>1年>1年以上 など)
この指標では、最近購入した顧客の方が良い顧客である、と評価します。
・Frequency(頻度)
Frequencyは、特定の期間での購入頻度からグループに分類します。
(例 1年間に、0回<1回<2回<3回<6回<10回<11回以上 など)
この指標では、購入頻度が高い顧客ほど良い顧客である、と評価します。
特定の期間や回数の選択は、業種や商品特性によって設定が異なります。
例えば、スーパーの場合では、毎日、または2〜3日に1度来店されるお客様が多くを占めますが、美容室では1〜3ヶ月に1度来店されるお客様が多くなります。
・Monetary(購入金額)
Monetaryは、特定の期間での販売実績データから購入金額の総額を計算して、グループに分類します。
(例 3万円<5万円<10万円<30万円<30万円以上)
この指標では、購入金額が大きい顧客ほど良い顧客である、と評価します。
上記の手法で顧客を分類できたら、顧客をグループ分けします。
ここでは、一般顧客<良顧客<優良顧客<重要顧客、のように、わかりやすい名称でわけてみます。
例えば、表のように、重要顧客には、郵送DMと販促品を送付し、顧客宅へ訪問する、というような手間ひまをかける一方で、通常のお客様にはなるべく手間暇をかけない、というような対応を取ることも考えられます。
分類するグループ数が増えるほど、対応する種類が増えていきます(逆に言えば、対応が変わらないのであれば、グループを分ける必要がなくなります)ので、グループ数の目安は、対応できる種類によってわけるとよいでしょう。