山口さん「当ホテルは、アーティストやアートディレクター23組とともに制作した宿泊型アート作品26部屋のホテル運営をはじめ、巨大壁画や展示スペース、カフェバー、ラウンジを併設し、食事やドリンク、音楽やアートというコンテンツを軸に幅広い活動を目的としたオルタナティブホテルです」
【課題】海外の個人旅行客をターゲットとしたホテル運営を効率化したい
山口さん「宿泊客の8〜9割が外国人客で、かつ訪れる客層も宿泊に限らず、アートの展示やイベントへの参加、プロジェクトの打ち合わせなど目的もさまざま。多様な価値観やバックグラウンドを持つ多国籍なゲストと東京のアーティストとの交流が生まれる場所となっています」
【導入】チェックイン精算機を導入するとともに、多彩な無料ツールも活用
山口さん「2021年4月、コロナ禍でのオープンで大変なスタートとなりましたが、ITツールについてはホテル運営の効率化を考え、非接触でチェックイン対応ができるチェックイン精算機や、コミュニケーションツールとしてLINEをオープン当初から導入しました。その他のITツールについても、日々の業務の中で必要となる無料ツールを、スタッフ自らの考えでSlackやCanvaなど随時取り入れて有効活用しています」
【効果】社内コミュニケーションや清掃業者との業務連絡がスムーズに
山口さん「Slackは、日々の申し送りなど引き継ぎや社内連絡に活用しています。以前はメモやノートに書いて閲覧するようにしていましたが、どこまで読んだかわからなくなることも多々あり、若手スタッフの希望を聞いてSlackを導入。個々に異なるスタンプをつくり、どこまでチェックしたかわかるように工夫しています。また、LINEは清掃業者との業務連絡や清掃済み記録写真の送信に使っています。清掃する部屋数は日々変動があり実績管理が大変ですが、請求漏れがないようにLINEで管理しています。最近ではITツールといっても、無料で使えるサービスもたくさんあります。当ホテルではバックオフィス系の管理業務に、シフト管理ができるジョブカンや給与・労務管理ができるSmartHRなどを利用しています。それほどスタッフの人数も多くないですし、無料で使える範囲内でも十分対応可能なサービスもあるんですよ。業務効率化につながって、とてもありがたいですね」
【展望】語学力に不安があるスタッフもプレッシャーなく働ける環境をめざして
山口さん「クレジット決済によるチェックイン精算についてはIT化できていますが、客室説明は対面でアナログな手法で行っています。客室そのものがアート作品ですので、部屋についてのプレゼンテーションや、「アートを壊さないで」といった注意事項についてiPadを使って対面で説明し、お客様には紙の利用規約に直筆サインをしてもらっています。このサインをスキャンしてリスク管理のために保管しているのですが、今後は電子サインを導入してデジタル化し、効率アップを図りたいですね。また、語学力に不安があるスタッフにも安心して働いてもらえるように、電話対応時に翻訳機を通してコミュニケーションをとることができるようなシステムがあればいいなと思います。そんな夢のような翻訳アプリが登場する時代もそろそろやってくるかもしれませんね」
【メッセージ】IT導入というハードルを超えて、まずは詳しい人に気軽に聞いてみること
山口さん「経営サイドとしてIT導入は何らかのハードルがあるものですが、いざ取り組んでみると簡単に導入・運用できるものも多いですし、難しい部分は業務委託するという手もあります。特に無料ツールは、アプリやサービスの存在を知ってさえいればすぐに導入できるので、使わない手はありません。まずはITツールに詳しい人に気軽に聞いてみてはいかがでしょうか。また、私どものホテルではデザインに興味のあるスタッフが、自主的に無料のオンライン・グラフィックツール「Canva」を導入して、さまざまな資料をセンスよくつくってくれています。スタッフの成長のためにも便利なITツールは、積極的に導入するべきだと思います。ITに強い優秀なスタッフを雇用するというのも一案かもしれませんね」
【BnA株式会社(BnA_WALL Art Hotel in Tokyo)】
HP:https://www.bna-corp.com/
所在地:東京都中央区日本橋大伝馬町1-1
従業員数:10名
設立:2015年5月
代表:田澤 悠