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特集

「介護記録システム」で介護現場の事務作業を大幅に軽減

  • 2023年3月13日
  • 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 山中弘重
  • 介護記録
  • ケース記録

「令和4年版厚生労働白書」※1によると、今後一定程度の経済成長と労働参加が進むと仮定した場合、2040年における医療・福祉分野の就業者数は974万人と推計されています。一方、2018年の医療・介護サービスの利用実績を基に、需要から推計した2040年における医療・福祉分野の必要就業者数は1,070万と推計されています。本推計値から、2040年時点で医療・福祉分野では96万人の人材不足が予想されています。
現在の介護業界は、恒常的な人材不足が大きな問題となっています。このため、現場の業務効率の改善は早急に対応するべき課題の1つであると言えます。中でも、手書きによる介護記録業務には多大な時間を費やすこととなり、業務効率化が求められる領域となっています。そこで今回の特集では、介護記録業務の効率化を実現する介護記録システムについてご紹介します。
※1 厚生労働省 「令和4年版厚生労働白書」 2022年 7ページ

介護記録システムの主な機能と導入効果

介護記録システムは、利用者の体調や体温・脈拍・血圧等のバイタル情報、食事、服薬、入浴、その他日々の生活の様子に関する情報を記録する機能(介護記録機能)が基本機能となります。このほかにも、各種介護サービスの特性を踏まえ、様々な付加機能を備えたシステムが存在します。

以下、介護記録システムが備える主な機能について3点ご紹介します。

【介護記録システムの主な機能】

(1)介護記録機能
利用者の体調や日々の生活の様子、食事、服薬、点眼、入浴といった日常の状態を記録するための機能です。システムによっては、写真や動画を交えて支援の様子を記録できる機能、音声入力
やAIによる自動入力に対応した機能を備えたものもあります。

(2)ケアプラン・個別支援計画書作成機能
支援に関する方針や目標、支援内容等を記入して、ケアプラン等の計画書を作成するための機能です。収集した利用者の現在の心身の状態を踏まえ、ケアの目標を明確化するアセスメントシートの作成や目標達成に向けて介護の計画を定める介護計画書の作成にも対応しています。

(3)各種帳票・報告書作成機能
事故やトラブルの内容を記録した事故報告書、患者の病歴や治療・看護の情報を要約した看護サマリー、あるいは介護報酬を国民健康保険団体連合会(国保連)へ請求する際に必要となる介護給付費請求書等、各種帳票・報告書を作成するための機能です。

次に、紙ベースで介護記録を取る場合と比較した介護記録システムの主な導入効果について2点ご紹介します。すべての介護記録を同一のサーバー上に集約できるため、業務効率化のみならずサービス管理体制の強化という観点から、介護施設の経営層の立場においても導入効果は高いと考えられます。

【介護記録システムの主な導入効果】

(1)業務の省力化・時間短縮
現場等からスマホやタブレット端末を利用して介護記録を入力・保存することができます。紙ベースの介護記録を提出するために事務所に立ち寄る手間が省けます。また入力項目や文章が定型化されている場合、該当の定型項目を選択することで入力作業を進めることができるため、入力作業の省力化につながります。

(2)素早く手軽な情報共有・活用
クラウド型の介護記録システムの場合、入力した介護記録はクラウド上のサーバーで管理されます。そのため、利用者の最新情報をスタッフ間で即座に共有することができます。また蓄積された介護記録は、システム上の検索機能等を活用して簡単に探し出すことができます。介護プランの作成や見直し等において有効活用できます。

介護記録システムの料金体系

介護記録システムの利用料金について、クラウド型の場合、毎月固定の利用料金を支払う形となります。バージョンアップ費用も含まれており、継続して月額利用料金を支払うことで常に最新版のシステムを利用できます。一方オンプレミス型の場合、初期費用としてライセンス利用料金を一括で支払った上で年間保守料金を毎年支払う形となります。導入費用が比較的大きくなる反面、翌年以降は比較的安価な年間保守料金のみの支払いとなります。但し、システムがバージョンアップした場合、新たにライセンス利用料金の支払いが発生するのが一般的です。

なおクラウド型の場合、月額利用料金は1端末・1利用者あたりの利用料金が定められている場合や、1拠点(利用者数の定員あり)あたりの利用料金が定められている場合等、介護記録システムに応じて異なる料金体系が設定されています。さらにオプション機能を利用する場合、月額でオプション利用料金も併せて支払うことになります。

自社の利用者数や利用する機能等を踏まえた上で、システム導入に伴う初期費用や維持費用の試算をしてみることをお勧めします。

介護記録システムの選び方

訪問介護(ホームヘルプ)や通所介護(デイサービス)等、提供する介護サービスの種別によって必要とされる介護記録システムの機能は一部異なります。そのため介護記録システムを選定する際、まずは自社で提供する介護サービスの種別に対応したシステムであるかどうかを確認することが重要となります。

次に、【介護記録システムの主な導入効果】で示したように、介護現場等から直接入力を行って即座に情報共有を行いたい場合、オンプレミス型ではなくクラウド型の介護記録システムが有効となります。

最後に、導入候補として残った介護記録システムの中から任意の機能の有無や機能の内容について比較したり、サポートセンターの受付時間や利用料金等を比較したりして、自社に最適な介護記録システムを選ぶことをお勧めします。

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