システム利用で業務時間を削減し、介護現場で働く人をもっと明るく

弊社は、平成14年創業の札幌市を中心に事業展開している会社です。顧客基盤は、BtoG、BtoB、BtoCの3つのインカム（国、企業、消費者）で構成されています。介護業界は、介護サービス事業だけの会社が大半ですが、弊社では主軸となる介護事業に加えてより利益率の高い人材業と教育研修サービスも展開しています。介護業界では、介護士の8割ほどが3年以内、5割が1年以内にやめてしまうという現状があります。こうした慢性的な人手不足を解消するのも我々の役割だと思っています。

【課題】介護の現場では、紙媒体に記録する作業が多く時間が取られていた

介護業界は、患者さんの日々の体調などのデータを記録する作業がどうしても増えてしまいます。介護保険法により記録を7年間保管することが定められているため、平均して介護士1人あたり1時間から1時間半程度の作業時間が毎日発生しています。紙媒体で記録することが多く、重複する内容も多くあります。こうした事情から、事務所内のデータ管理が煩雑な状況になってしまっていました。このような業務負荷をなんとか軽減できないかと考え、IT導入をしようと決めました。

【導入】自社で介護ソフトを開発、導入して生産性を大きく向上

生産性向上を目指し、介護記録ソフトの開発をスタートしました。弊社は介護事業者であり開発ベンダーではありませんが、介護事業所の一部を開発ラボとして拠点を作り、ソフト開発者と現場が一体となって検討しながら進められるよう工夫をしました。「短い時間で使いやすく」というコンセプトで、記録に特化した介護記録用ソフトウェアの開発に取り掛かりました。開発期間は、2016年から2019年までの3年間で、2020年10月からは販売を始めました。自社で実際に導入してみると、介護記録が紙媒体から電子媒体に変わったことで記録に係る業務時間を5分の1に削減することができました。残業時間もゼロにすることができ、働き方改革にもなったのではないかと考えています。また、システム化されたことで、個人的な見解で描かれていた記録など、個人差のある情報が標準化され、管理者の確認作業の手間も減りました。現場のルールや流れに支障をきたすことがないように、徐々に作業をシステムに置き換えていきました。

【効果】職員さんの負担も減り、残業も減った

介護業界は常にストレスに晒されることが多い業界ではありますが、労働環境がIT化されて身体的・心理的負担が少なくなったのではないかと感じています。また、弊社のソフトを他社にもご利用頂くことで、弊社と同じような課題をもつ企業に寄与できており、標準化されれば業界にメリットを波及できると考えています。2021年4月時点で約1,000事業者が導入しています。システム導入による業務負荷の改善で1事業所あたり年間300万円程度人件費をカットすることが可能だと試算しています。

【展望】ITを利用して健康なお年寄りを増やす

日本のような高齢化社会、それも慢性的な介護現場の人手不足という背景において、介護×ITで生産性を向上させることが重要であることに疑いの余地はありません。介護事業者としては利用者と関わる時間を増やすこと、そして満足していただくことが最優先事項です。介護士達もできる限り時間を使ってお世話をしたいと考えているので、介護記録に費やす業務時間をITで改善すれば、こうした人的サービスの時間が増え、結果的にやりがいも向上させることができます。そうすれば、利用者のご家族にももっと安心していただけると考えています。また、今後は健康なお年寄りを増やすために介護現場のデータを活用するなど逆算したアプローチが可能になるのではないかという展望も持っています。ITは面倒、大変というような先入観をもつ方が多いと思いますが、考えるよりもまず使ってみることが大事だと思います。勇気を出して一歩踏み出してみると新たな発見など思っていた以上の効果が得られることでしょう。