鈴木さん「1949年創業の鈴木鉄工所は、今年で75年目になる総勢7名の小さな町工場です。お客様の要望に合わせて、半導体など製造装置の精密部品から豆腐の型など食品機械まで、マシニングセンタやNC旋盤を使用したさまざまな精密機械加工による金属部品をオーダーメイドで製造しています。私は元々商社で働いていましたが4年前にUターンして、両親が経営するこの会社の3代目後継者として入社し、現在は仕事を受け継ぎながら、将来を見据えて業務改善に取り組んでいるところです」
【課題】Web発注システムにおいて、部品数が多く煩雑な見積作業が負担
鈴木さん「地方の町工場の小さな規模では、あえてDX化を進めなくても現状維持は可能ですが、この先年商を10倍成長させるという目標、そして技術の伝承を考えると、収益状況の改善は急務であると考えました。私が入社した当初、日々の業務は完全にアナログで、見積書の作成や納品書をはじめ、事務作業は全て手作業。ITツールは全く使っておらず、DX化による業務効率化の必要性を感じました。まずは、事務作業のどこに時間がかかっているのか、繰り返しやっている作業に着目して日常業務の棚卸をしました。すると取引先からの見積依頼を受けるWeb発注システムを活用した毎日のルーティーン作業に、かなりの時間を割いていることが明らかになったのです。見積依頼データをダウンロード後、改めてエクセルデータに加工して、部品別、納品別に発注数を整理。さらに再度Web発注システムから部品単価を検索・ダウンロードして受注価格を調べ、改めて手作業で見積書を作成していくという工程で行っていました。ITツールを使ってはいるものの、とても時間のかかる手作業が毎日発生していました」
【導入】事務作業を自動化できるRPAツールを導入
鈴木さん「そこで相談を持ちかけたのが、普段からお取引のあったITベンダーさんでした。すると、これまで手作業で行っていた業務を、RPA(Robotic Process Automation)ツールで自動化できることがわかったのです。そして地元のデーリー東北新聞社さんを紹介してもらいました。RPAの導入費用は高額なイメージがありましたが、25万円と低コストで利用できるRPAツール支援があることがわかり、導入を決めました。最終決断の際には、従来の作業手順に慣れている両親からの反対はありましたが、「たとえ1日5分であっても、日々積み重なると大きな効率化につながる」と力説して納得してくれました。実際の導入時は、デーリー東北新聞社さんとオンラインでつなぎ、遠隔操作でテストをしながらセッティングしていったので大変スムーズに導入することができました」
【効果】Excelのデータ加工自動化で、月40時間の人件費削減に成功!
鈴木さん「RPAツール導入によって自動化できたのは、Web発注システムからダウンロードしたデータ加工(エクセル)と、見積金額の算出です。夜帰宅時に、システム上で起動指示ボタン押しておけば、過去の最高・最低金額を自動取得して、見積金額を自動的に算出してくれるため、1日2時間かかっていた作業が実質ゼロになりました。「作業工数が減った」「ボタンひとつで作業が進むのでかなり楽になった!」と現場の担当者たちも効果を実感。月の稼働日数を20日間とすると、月間で40時間もの時間を捻出できたことになります。この空いた時間を、他の生産的な仕事に使うことができるのは、大変有意義ですね」
【展望】「かっこいい、高所得、加工屋」の3Kを理念に、誇りを持てる町工場へ
鈴木さん「弊社のDX化は、DXというよりもデジタライズといった感じで、現在の達成度は全体目標の30%ほどといったところ。やるべきことはまだまだたくさん残っています。今後は、工場内へのロボット導入で鉄工所の仕事をリモートワークできる体制を整えていきたいですね。IoTを使えばもっと業務をシンプルにできるのではないでしょうか。自宅にいながら工作機械の加工プログラム作成や遠隔操作、最終的には重量物の運搬まで全部ロボットでできるような環境を整備したいと考えています。鈴木鉄工所が目指すのは、「3K(きつい、汚い、危険)」というイメージがある町工場を、「かっこいい、高所得、加工屋」という新しい3Kの価値観。ものづくりに情熱を持つ従業員たちにとって、楽しく働き甲斐があり、誇りを持てる職場環境をつくるために、DX化でさらなる業務の効率化を図っていこうと考えています」
【メッセージ】スモールスタートでDX化の第一歩を!
鈴木さん「ひとくちにDX化といっても、人材、設備、資金など経営資源に限りのある中小企業は、導入に踏み切るまでのハードルはなかなか高いものです。まずは身近なI Tベンダーに相談してみてはいかがでしょうか? オンライン相談に対応してくれるところもあるので、気軽な気持ちでぜひ声をかけてみてください。例えば、エクセルの導入や紙の書類をスキャンしてPDF化するなど、どんな小さなことであっても現状から先へ進むためには十分な一歩。費用を極力抑えたスモールスタートで、第一歩を踏み出すことが大事だと思います」
社名:有限会社鈴木鉄工所
HP:https://www.suzuki-tekko.com/index.html
所在地:青森県八戸市江陽5丁目26-13
創業:1949年2月
代表:鈴木雅雄