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特集

DX支援ガイダンスが経済産業省から発表されました〜支援者側がまずDXを実現しよう!

  • 2024年4月23日
  • 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 村上知也
  • DX
  • 伴走支援
DX支援ガイダンス

2024年3月に、経済産業省から、「DX支援ガイダンス:デジタル化から始める中堅・中小企業等の伴走支援アプローチ」が発表されました。

伴走支援の重要性は、すでに多くのところで語られていますが、DX支援においても、伴走支援でどのようにアプローチをするかがまとめられています。

デジタル化支援、DX支援に取り組む支援機関の皆様には、是非ご一読いただきたいと思います。

DX支援ガイダンスのサマリー

「DX支援ガイダンス:デジタル化から始める中堅・中小企業等の伴走支援アプローチ」が策定されました。タイトルの通り、事業者側のDXの進め方ではなく、支援する側のあり方についてまとめられています。

「DX支援ガイダンス:デジタル化から始める中堅・中小企業等の伴走支援アプローチ」を策定しました

本編、概要版、別冊事例集、サマリーと資料が分けられています。まずは1枚にまとまったサマリーから目を通すと良いでしょう。

DX支援ガイダンス-サマリー

このガイダンスの目的は、”地域の伴走役たる支援機関によるDX支援の「新しいアプローチ」を追求”とあります。しかし、DX 支援においては、支援機関の側にも課題があるようです。

支援機関の課題

支援機関側の課題として、以下の4点が挙げられています。順に確認していきます。

DX支援の課題

①支援機関自身のDXの取組が遅れている

支援機関自身のDXの取組が遅れており、自身のDXを進めることがまず乗り越えるべき課題とされており、金融機関や支援機関自身、アナログでの業務処理が多く、自らクラウドツールを活用していないため、事業者にも自信をもって紹介する事ができない、との意見がでています。

支援機関内のDXを進めるべきというのは、そのとおりと思います。ただ、支援機関自身がDXに取り組んだとしても、自らの機関内で、実際に触ることができるITサービスの数は限られます。

そのため、支援機関が自らのデジタル化として活用するだけでなく、積極的に色々なITサービスを体験して行くことが必要です。支援者自らが、様々なデジタルサービスに触れる機会を増やすことが求められます。

②支援機関として有益なDX支援の方法が確立できていない

中堅・中小企業等を対象にしたビジネスは規模が小さく、マネタイズ・収益化の面でどういったDX支援をすべきか、どのような取組が支援機関にとって有益になるか、支援方法が確立できていない、との意見が出ています。

例えば、金融機関がDX支援を行って、最終的にその対価を得ることができなかったとしたら、何のためにDX支援をするのか、ということになるでしょう。支援機関でも、DX支援により事業者のデジタル化を進めたとして、仮に機関内で評価されなければ、やはり何のためにDX支援をするのか、ということになると思います。

DX支援では、取引先に伴走し、中長期的にその成長を見守り続けることに意義があります。各支援機関が、DX支援に対する見方を変えていくことが求められています。

③支援機関内及び支援機関同士の連携が不足している

支援機関の組織内において、一部の専門部署が DX 支援に取り組んでいるものの、自社内やグループ会社間での連携が取れておらず、組織のリソースを最大限活用することができていない、との意見が出ています。

人材不足も相まって、支援機関単独ではDX支援が難しい場合、他者(他機関)との連携が必要になることもあるでしょう。この場合、どのように連携するのか、役割分担をどうするのか、といったことを明確にしておくことで、連携が進むと思われます。

④支援機関内のDX支援人材が不足している

支援機関として、DX 支援の目指すべき人材像が定まっておらず、不明瞭であるため、育成や採用の方法、人事・評価制度も含めて、どのようにして DX 支援人材を増やしていくのかが分からない、との意見が出ています。

人材不足の対策として、内部でDX人材を育成することが挙げられますが、この場合、どのような人材を育てるのかを明確にする必要があります。しかし、DX支援人材と言っても、例えば、経営とデジタルの両面で支援できるような人材を支援機関のみで育てていくには、時間もかかるでしょう。

そのためには、役割を分けて、まずはデジタル化支援人材を育てていくことから始めるがよいのではないでしょうか。支援機関には、経営指導員と経営支援員がおられますが、「デジタル支援員」という役割があってもよいのではと思います。

DX支援の方法論

DX支援の基本的な進め方として、以下が挙げられています。

・DX 支援は、取引先に伴走し、中長期的に成長を見守り続けることに意義がある
・まずは身近なデジタル化から取り組んでみることや成功体験の繰り返しが、最終的にDX を成功させる上でも有益
・DX 支援で企業価値を向上させるには、「本業」に経営資源を集中させることが重要

前述のとおり、いきなりDX支援を進めるというよりは、まずは身近なところ、例えば、個別業務のデジタル化から着手し、伴走支援しながら、徐々にデジタル化の取組を拡大していくことで「デジタルに慣れる」ことが必要なのではないでしょうか。

その上で、DX において本来あるべき「既存ビジネスの成長や新規ビジネスの構築による企業価値の向上」を目指していくわけですが、ここまで来ると、もはやITやデジタルの話ではなくなります。

より顧客に価値を提供していくにはどうするのか、データを分析して新しい商品を作っていくにはどうするのか、新しいビジネスモデルを作っていくにはどうするのか、といった事を考える、通常の経営支援になっていくのではないでしょうか。

まとめ

企業がDXをしなければ・・・支援機関がDX支援をしなければ・・・と考えても、なかなか具体的な取り組みには進まないものです。

支援機関の役割としては、通常の経営支援を着実にこなす中で、地道に小さなデジタル化支援を積み重ねて進んでいく、といったことが求められているのではないでしょうか。