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特集

デジタル活用はじめの一歩 9 ~表計算ファイルの共有を止めると!?

  • 2023年3月14日
  • 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 村上知也
  • DX
  • 会計
やめよう!表計算ファイルの共有のサムネイル画像

エクセルを代表とする表計算ソフトは便利です。著者も日々使っています。
一人で仕事をする上ではそれで十分ですが、チームで仕事をしたり、部署を跨いで情報を共有したりする場合には、表計算ソフトが足を引っ張ることもあります。
クラウドやデータベースを活用して、複数人でデータを共有する方法を考えていきます。

表計算ソフトを活用することのメリット・デメリット!?

表計算ソフト(エクセル)で請求書を作っていた中小企業に、販売管理のクラウドサービスを導入したことがあります。請求書の発行や、入金の管理、案件ごとの利益率の把握などができるようになりました。

しかし、導入した際に、請求書を発行する社員の方に言われました。

「エクセルの方が使いやすいし、作業が早く済みます!」

そのとおりだと思います。表計算ソフトの操作に慣れていると、請求書などの1枚の書類は、すぐに作ることができるでしょう。

新しく別のソフトの操作方法を覚えるのも面倒ですし、表計算ソフトの方が、クラウドサービスよりも操作感が良い場合が多いかもしれません。一方で、一人で使うには最適な表計算ソフトも、組織で使うと足を引っ張るケースもあります。

先ほど例に挙げた企業の場合、長年に渡って、見積書や請求書を表計算ソフトで作ってきたため、作成したファイルは、何千、何万と言う数にのぼっていました。そのような状況では、過去の書類を見つけるのが大変です。

また、どのお客様に書類を出したのか、入金を確認したのか等、状況が把握できず、案件ごとに利益がいくら出ているのかも、すぐにはわかりませんでした。

表計算ソフトの弊害としては、ファイルを開いてみないと案件の状況が確認できず、情報がファイルごとに分散してしまうことが挙げられます。

もちろん、マクロ機能を使うことで複数のファイルの内容を集計したり、まとめてみることも可能ですが、ファイルの数が増えてくると限度があります。

表計算ソフトを活用する際の課題

一人で使うには素晴らしい表計算ソフトですが、複数人で使う場合は、やはり多くの課題が表出します。
機能の課題、共有の課題、属人化の課題、保守の課題、内部統制の課題・・・

課題を挙げると、きりはありませんが、組織の中で使う場合は特に「共有の課題」が大きな課題となるのではないでしょうか。表計算ソフトは、複数人が同時に使いにくいため、各人が別々の似たようなファイルを作ってしまいがちです。また、複数のファイルでは、データ連携を実現するのも大変です。

表計算ソフトを使わないならどうするのか?

では表計算ソフトを止めていくにはどうしたらいいでしょうか?いくつかのパターンがあります。

(1)クラウドでの共有

Micorosoft365やGoogle Drive等のクラウドサービスでは、表計算ソフトをブラウザ上で共有し、そのまま共有や共同編集を行うことが可能です。ただし、複数ファイルの連携については、引き続き課題が残るでしょう。

(2)データベースの活用

Microsoft AccessやFileMaker Pro等のデータベースソフトを導入すると、複数ファイルでの連携がスムーズになり、入力の重複が減少します。データベース化は、慣れていない事業者にとっては簡単ではありませんが、効率化の効果は絶大だと言えるでしょう。

ただし、データベースはインターネット上の共有にはあまり向いておらず、社外からのアクセスに課題が残ります。

(3)クラウド・データベースの活用

そのため、クラウド上でデータベースを使える仕組みの活用を考えたいです。昨今は、KintoneやAppsheetなど、ノーコードのクラウドデータベースの活用が進んでいます。

なお、請求書発行など定型の業務であれば、専用のクラウドサービスを活用することも考えられます。

まとめ

紙の書類を表計算ソフトで作るようにすると、デジタル化が少し進んだことになるかもしれません。ただし、表計算ソフトの書類では、利用する人数が増えた場合に使いづらく、社外での共有も難しくなってきます。書類をクラウド上で使えること、データベース化することを目指していきたいです。

もちろんコストがかかり、技術的な課題も出てくるでしょう。社外に頼んで対応してもらうことも必要ですが、社内でノーコードツールを活用することにも、チャレンジしてはいかがでしょうか?

また、表計算ソフトを活用した請求書作成の課題についても、記事を公開していますので、過去の記事「デジタル活用はじめの一歩 3 ~表計算ソフトで請求書作るのを止めると!?」をご確認ください。