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特集

中小企業のデジタル化の段階〜2022年版中小企業白書でのデジタル活用(2)

  • 2022年7月12日
  • 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 村上知也
  • 中小企業白書
  • デジタル化
2022年版中小企業白書でのデジタル活用(2)のサムネイル画像

前回の記事に引き続き、中小企業白書2022年の中からデジタルに関する部分について紹介します。
特に、今回はデジタル化の段階についての解説です。

デジタル化の取組には段階がある!?

中小企業白書2022年において、デジタルはどのように掲載されていたか?のサムネイル画像
中小企業白書2022年において、
デジタルはどのように掲載されていたか?

著者はデジタル化について中小企業向けのセミナーを実施することも多いですが、事業者にお伝えする内容については、いつも迷います。デジタル化の状況は、企業によって大きく異なります。パソコンをあまり使っていないような企業から、一通りのデジタル活用はこなしているものの、さらなる一歩進むことを目指す企業もいらっしゃるからです。

そのため企業がデジタル化を進めるにあたっては、現状を把握し、自社のデジタル化の取組段階を自認してから、実施することが求められます。みんなが同じように進めていけるわけではないのが、デジタル化の難しいところと言えるでしょう。

中小企業白書の中では、デジタル化を以下の図表の4段階に分類しています。

 

4つの段階の内容を確認します。

段階1としては、紙や口頭による業務が中心で、デジタル化が図られていない状態です。パソコンやスマホを使うことも少なく、完全にアナログで業務を行っている状態です。例えば、伝票処理や請求処理において、紙を使って手書きで行っている段階です。

段階2になると、アナログな状況からデジタルツールを利用した業務に移り始めている状態です。例えば請求処理において、エクセルなどの表計算ツールを使って作成して、メールで取引先に送付している段階です。

段階3になると、デジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組んでいる状態です。例えば、受注処理において、受注管理システムを導入して日々の入力を行っている段階です。受注データが蓄積されることで、顧客ごとの利益率や、商品ごとの利益率がデータ分析できるようになります。そして業務フローの見直しについても取り組み始めています。

そして段階4になると、デジタル化によるビジネスモデルの変革や競争力強化に取り組んでいる状態です。例えば、自社の社内だけで受注処理を行うのではなく、顧客も巻き込んで、BtoB EC(事業者間ネットショップ)を導入できる段階です。自社内の効率化だけではなく、顧客にとってもメリットを提供できているかがポイントになります。

段階1にある企業が、いきなり段階4に進むのはハードルが高いですから、ステップを踏んで、着実に成長していくことが求められます。

デジタル化の取り組み段階のイメージ画像

では、実際に中小企業のデジタル化はどの段階にあることが多いのでしょうか?
データを確認します。

中小企業のデジタル化の取組状況

以下の図表では、中小企業のデジタル化の段階が、時点別に見てどのように変化したかを表したものです。

段階1のアナログ企業は、感染症流行前は15.2%でしたが、2021年になると8.2%と半減しています。最初の1歩としてパソコンやスマホの業務での活用を始めた企業が増えたと考えられます。

段階2の企業は、感染症流行前は47.5%と最も割合が高かったです。中小企業に最も多いエクセルやメールを使って業務を行っている段階でした。これが、2021年になり34.9%に下がりました。

そして、段階3のデジタル化によるシステム導入をしてデータを蓄積、活用できるようになった企業は2021年になって、46.7%となり、中小企業にも着実にデジタル化の波は訪れていると言えるでしょう。

一方で、段階4の企業は2021年でも10.2%に過ぎず、デジタルで効率化はできても、ビジネスモデルを変革して、競争力強化に繋げられている中小企業は多くないと言えます。

デジタルに取り組むと労働生産性や売上は変化するのか?

デジタルの取組状況別に労働生産性と売上高の変化(2015年と2021年の比較)を確認します。以下の図表は白書の<第2−3−26図>の一部を抜粋して、追記しています。

 
 

段階が上がるほど、②労働生産性も、③売上高も伸びていることがわかります。ただし、②労働生産性の変化は、段階1と段階2では大差がありません。
なお、労働生産性の変化とは、2015年と2021年の値を比べた差の数値です。

段階1の紙を用いたアナログの業務より、段階2のエクセルなどのデジタルツールを使った業務のほうが生産性は高くなります。しかし、コロナ禍の前後での変化は、ほとんど差がありません。

これは、段階2はメールの活用、エクセルの活用、会計システムの活用と個々個別にデジタル活用しているものの、段階3のように、複数業務で横断的にシステムを導入したり、業務フローの見直しを行っていないため、生産性の継続的な改善につながっていないのでしょう。

この図表は、単にデジタルツールを入れれば全て解決、改善するわけではないことを伝えています。

更に売上の変化を見ると、段階3と段階4の変化度合いには大きな差がついています。段階3のように業務フローを見直しデジタル化を実現していると、ある程度の労働生産性は改善するものの、売上の大きなアップまでには至っていません。やはり段階4に到達して、ビジネスモデルを見直しデータを活用できるようになって、ようやく売上が大きく伸びるのでしょう。

ここからアプリ

最後に、本サイトである「ここからアプリ」が2022年の中小企業白書で紹介されています。ここからアプリは、ECや勤怠管理などのアプリ種別ごとにアプリを紹介したり、導入事例や動画を掲載しています。

ここからアプリでの閲覧数を確認すると、テレワークやECのコーナーが人気でした。やはり、コロナ禍で非対面型への対応が求められる中、テレワーク、ECといった直接的な取組に人気があったと言えるでしょう。

 
      (出典)中小企業白書2022年

まとめ

今回の記事では、中小企業がデジタル化の段階に応じて、どのような対応をとっているのかを見ました。段階1から段階4へとステップを踏んで成長していくことが求められます。

さらに、段階2と段階3の間で労働生産性の変化には大きな開きがあり、段階3と4の間では売上の変化に大きな差がありました。

単にデジタルを活用すればよいというものではなく、業務フローの見直しをして段階3へ進み、その先にはビジネスモデルの変革を図り段階4に進んでいくことが、企業の成長につながっていくのでしょう。

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