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特集

【データをもっと経営に活かそう!】データ分析の基本

  • 2021年7月15日
  • 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 村上知也
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データが溢れる世の中になっており、データ分析の価値が高まっています。しかし、目的なくデータ分析をしても成果につながらないことがほとんどです。特に中小企業は、大企業に比べてデータ量が圧倒的に少ないです。データありきではなく、何を改善したいのかといった目的を持ってデータ分析に着手してみましょう。

データ量が増えて分析のニーズが高まった!?

データ分析のニーズが高まっています。デジタル化の進展により、データ量自体が飛躍的に増加していることが一因です。「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」(総務省2020)によると、5Gの導入、モバイル活用頻度の向上により、データは劇的に増えています。また以前まではデータ量がすくなかった、IoTデバイス経由のデータも今後更に増えていくことは間違いありません。

しかし、データが増えたからデータを分析していこうというのは本末転倒です。昔からデータは宝の山で、分析することでなにか素晴らしい発見ができるのではないか、と考えることがありました。データマイニングという考え方です。マイニングというのは鉱山から採掘とするという意味です。まさに宝の山からデータの関係性を分析して、経営につながる発見をしようというものです。

データマイニングの事例で有名なのは、米国の大手スーパーマーケット・チェーンで販売データを分析した結果、顧客はおむつとビールを一緒に買う傾向があることが分かりました。子供のいる家庭では母親はかさばる紙おむつを買うように父親に頼み、店に来た父親はついでに缶ビールを購入していたので、2つを並べて陳列したところ、売り上げが上昇しました。

こういった人間が気づかないような組合せをデータ分析で発見できるのは素晴らしいことです。ただし、こういった発見は多くありません。近年のAIの進化により、より高度な発見ができると思いがちですが、実際はうまくいかない事例に枚挙がありません。

さらに、中小企業はデータ数そのものが大企業に比べて少ないこともあって、そもそも宝の山のデータを持っていないケースも多いです。そうすると、中小企業のデータ分析はどうしたらいいのでしょうか?それは、目的を明確にした上で、データの分析を始めることです。何のためにデータを分析したいのか、目的なくスタートしても役に立たない分析結果が残るだけになります。

また、データ分析は評論では意味がありませんので、何らかの経営の意思決定に役立ち、行動につながらなければなりません。

目的を明確にして、データ分析を始め、分析結果が出たら意思決定して行動に移せることが、よいデータ分析になるのではないでしょうか。

目的を持って行動につながるデータ分析をしよう

では目的を明確にするとはどういうことでしょうか。「当社は売上を上げたいという目的を明確に持って分析している」と言われる場合もあるでしょう。しかし、それでは目的が明確になったとは言えません。売上を上げるには、既存客を増やしたいのか、新規客を増やしたいのか、来店回数を増やしたいのか、来店頻度を高めたいのか、さまざまな要素があります。

売上を上げたいという大きすぎる目的では、うまく分析につながらないことがあります。より具体的な目的を立ててデータを分析したほうがいいでしょう。

例えば、美容室で来店頻度を高めることで売上の向上につなげるという目的にしてみましょう。そうすると、分析すべきデータが見つけやすくなるのではないでしょうか。顧客の来店頻度のデータとともに、顧客の年齢別のデータを分析してみたらどうでしょうか。

「コロナ禍で高年齢のお客様ほど、来店頻度が低くなっているのではないか?」、こういった仮説があれば実際にデータを分析して検証してみます。その結果、仮説通りのデータが確認できれば、対応する施策を検討して、実行するという意思決定につながるのではないでしょうか。

例えば、高齢者向けの白髪染めサービスをサブスクリプションのサービスにして、提供するのはどうでしょうか。白髪は短いサイクルで染めたほうが目立ちませんし、サブスクリプションサービスになれば、月1回より2回、3回ときてくれるお客様が増えるのではないでしょうか。そうすると、カットやその他のサービスを利用する機会が増えるきっかけになるかもしれません。

このようにデータ量が決して多くない中小企業にとっては、データを分析する目的を具体的に持ち、分析した結果、新しい行動につなげることが大切です。

データ分析の基本
データ分析の基本