【アプリの選び方】営業支援アプリ
- 2021年3月15日
- 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 吉田 明弘
- アプリの選び方
- 営業支援
当サイトのアプリ検索でいくつかのアプリが表示されたとしても「どのアプリが自社に最適なのか!」選ぶのがなかなか難しい、ということもあるかと思います。そこで、この特集ではアプリ種別ごとにアプリを選ぶにあたってのポイントをいくつかご紹介します。第3回は「営業支援」です。
自社ではどのような営業マネジメントをしていくのか
営業支援アプリを使うのは主にBtoBの営業になると思いますが、そこでどのような営業マネジメントを展開していくのか、ということをまず考えてみましょう。営業活動のマネジメントを支援するために、営業支援アプリを使うわけですので、自社の営業マネジメントがどうあるべきか、ということからアプリに必要な機能も自然と決まってきます。
本記事では、下図のように営業マネジメントを掘り下げていって、それぞれのマネジメントレベルでアプリに必要な機能が何かを示していきます。
目標と実績の管理
経営計画などにおける売上目標を実現するためには、受注目標とその実績を常に管理していく必要があります。受注目標を管理していくには、全社的な目標値だけでなく、営業チーム別や個人別に細分化したり、業種や地域などお客様の分類別や個社別に細分化したりして、それぞれの部分でどれだけ受注できそうかという見通しを立てることが重要になります。そして、定期的に目標値と実際に取れた受注実績とのギャップを確認していきます。
細分化した中で、ギャップが大きな部分があれば、マネジメントの重要度は高まります。例えば以下のような対策を検討するきっかけとなります。
- 目標に達していない営業担当者のサポートを厚くする
- そもそも割り当てた目標設定が間違っていて営業戦略から見直す
- 目標受注額に達しない大手見込み客への活動に注力していく
- 目標受注額を上回っている顧客群から追加の仕事をいただくことを目指す
逆に目標と実績のギャップがなく順調に進んでいるのであれば、先々のことを考えた種まき活動を強化するのが良いかもしれません。
ここで必要になる機能
- 細分化した部分ごとに、目標値が設定できて、実績値が集計できる
- 関係するメンバー全員が、任意のタイミングで目標と実績を確認できる
パイプライン管理
受注の目標と実績を管理していくには、営業中の案件がどれだけ受注に近づいてきているのか、ということを見ていくことが大切です。しかしそれを、「もう絶対取れる!」「何か一手打てば取れそうな気がする」「少し待てばワンチャンスありそう」のように感覚で分類していても、見通しが不正確になります。そのため、受注に至るまでの段階を、客観的に判断できるように定義します。
各段階から次の段階へは必ず通過できるわけではなく、ある程度の確率で失注していきます。段階ごとに分けて案件を集計していくと、目標の受注額を得るために、どれだけの案件がどの段階に積まれていないといけないか、それぞれの案件がどこで詰まっているか、ということを考えやすくなります。
段階ごとに取り組むべき活動は異なりますので、常に以下のようなことを確認していくことになります。
- 目標受注額と目標時期と照らし合わせて、各段階にある案件の数は適正かどうか
- 次の段階に進行していく確率が著しく低い段階がないかどうか
- 重要な案件が今どの段階で滞留しているか
どこかに問題がありそうな場合には、案件の詳細情報を参照して確認していく必要があります。
ここで必要になる機能
- 定義した段階ごとに案件を集計できる
- そこから個別案件の詳細情報にアクセスできる
- 可能ならば…各段階で必ず実施すべき事項を定義して、案件ごとに実施の有無を確認できる
営業活動管理
目標と実績の管理、パイプライン管理を進めていくと、その数字を改善するために、営業活動の結果だけではなく、営業活動自体を管理していく必要が出てきます。例えば以下のようなことです。
- 担当メンバーの活動予定と実績(スケジュール管理)
- 訪問時の話の内容や提示した資料
- 営業戦略にのっとった営業活動になっているか
- やみくもに会える人に会っているだけになっていないか
- 具体的には重点顧客に対する活動が適切に実施されているか
- そもそも営業戦略があるのか、意識しているのか
目標と実績のギャップは、リアルな営業活動によって変化を起こして埋めていくしかありません。そうであれば、マネジメントとしては「ギャップを埋めろ!とにかく頑張れ!」という声がけだけでは不十分です。今どのような活動をしているのか、今の活動をやめて別のことをすべきなのか、今の活動を強化すべきなのか、どんなアイデアがあるか、といった議論のリードや助言をしていく必要があります。
ここで必要になる機能
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担当メンバーの活動予定と実績を確認できる
(例)カレンダーで重点顧客への活動がマークされる
(例)一定期間活動していない顧客を顧客群ごとにリストアップできる
- 個別の活動詳細を記録し、あとでその情報にアクセスできる
データ分析による営業機会の発見とノウハウの確立・共有
営業活動を改善していくためには、「いつ誰に何をどのようにすれば受注に結びつきやすいか」を自分たちの経験の積み重ねから見出す必要があります。そのためには、営業記録に対して下記のようなことを実施する必要があります。
- データを分類するために必要な項目を記録項目に追加する
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仮説に基づいた分析、相関分析などから傾向を発見する
(例)展示会で来訪者のランク付けをしたあと、AランクとBランクとではサンクスメールへのリアクション率は異なるか?誰が判断したかによってランク付けの信憑性は異なるか?
(例)メールを出すタイミングとして、月曜10時ごろと、金曜16時ごろと、その他の時間で、リアクション率は異なるか?
(例)案件を分類し、それぞれの種別によって、平均リードタイム(※)を算出する
※案件が立ち上がってから受注までにかかる時間、もしくは特定の段階にとどまっていた時間
- リードタイムから逆算して、ある時点で受注を得るためには、どの時期にどれだけの案件がどのプロセスになければならないかを算出する
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確からしい法則を見つけたら営業ノウハウとして営業活動に反映する
(例)パイプラインの各段階において必須のタスクとして定義する
(例)受注につながりやすい説明を営業ツール(チラシなど)の内容として反映させる
案件や営業活動記録の一覧をCSVなどで出力する機能があるので、そこから自由に集計できます、というアプリもあるかもしれません。しかし、一覧を出してそこから人間が選択するのでは集計機能とは言えません。
ここで必要になる機能
- 簡易に入力できる任意の入力項目を追加できる
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任意の軸でデータを集計・分類・表示できる
(例)複数の条件に合致した案件数を集計できる
(例)自社の顧客分類に従って任意の期間の営業活動記録を列挙できる
(例)重点顧客に対する先週の営業活動記録
(例)A地区の飲食店に対する先月の訪問数と受注金額・件数
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案件が時系列上でどのように推移したか記録して分析できる
(例)顧客群別・担当メンバー別案件リードタイム
- ルールとして決められたタスクの実施状況を確認できる
まとめ
このように、営業マネジメントのレベルによって、アプリに求める機能はいろいろとあります。どのようなマネジメントをしていくかということを考えた上で、必要な機能があるかどうかを、アプリベンダーに問い合わせてみましょう。その上で、自社に合ったアプリを選んでください。