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特集

事務所内のコミュニケーションをタスク起点に変えてみませんか?

  • 2023年10月30日
  • 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 加藤博己

税理士事務所のIT化を検討する上でのテーマの一つとして「コミュニケーションの効率化」があります。

そこで本稿では、みなさまが普段使っているメールやチャットにまつわる課題を解決する方法として、タスク管理ツールを活用したコミュケーションをご提案します。

1. コミュニケーションでこんな悩みありませんか?

普段、仕事でメールを使ってコミュニケーションをとる際に、こんな風に感じたことはありませんでしょうか?

「A案件についてメールをやりとりしていたのに、相手が急にB案件についても取り上げたため、メールの流れがよくわからなくなった」
「メールを何往復もしているけれど、どこまで進捗しているのか状況がよくわからない(=終わりが見えなくて疲れる)」
「あとでメールを読み返しても引用があったりなかったりして流れを追うのが大変。結局、何がポイントだったのかすぐにわからない」

メールであれチャットであれ、「スレッド」という形で一連のやりとりをまとめる機能がありますが、そうした機能があったとしても、やりとりが何往復も続くとどうしても大事なポイントがわかりづらくなるものです。

プログラミングの世界では処理の流れや構造が把握しにくい、要するに、読み取りにくいプログラムのことをスパゲッティの麵が絡まっている状態に例えて「スパゲッティコード」と呼ぶことがあるそうです。

この言葉を借りて、先ほど取り上げたような状態を個人的に「スパゲッティコミュニケーション」と呼ぶことにしています。

 

「スパゲッティコミュニケーション」が発生する理由としては
1. 何往復もするうちにコミュニケーションのテーマを見失ってしまう
2. コミュニケーションのもととなっている業務(=タスク)の進捗状況が一目でわからない
3. メールやチャットがあとで見直すツールとして適していない
といった点が挙げられます。

今回、こうした課題を解決する手法として
『「タスク」を起点としたコミュニケーションへの切替え』をご提案したいと思います。

コミュニケーションの起点をタスク(=業無内容)にすることで、先ほど挙げたような課題だけでなく
「帰所後に担当者の仕事の進捗を確認しようと思っていたけれど、事務所に戻ったら既に退社時間を過ぎていた」
「顧問先に決算関連でいろいろ質問を投げたけれども、どこまで回答してもらったのかわからなくなってしまった」
といった所長先生や担当者が抱える悩みについても解決することが可能です。

2. タスク管理ツールの基本的な使い方

「タスク」を起点としたコミュニケーションを行うためには、「タスク管理ツール」の活用が欠かせません。

こうした目的に使えるサービスとしては「Trello」やMicrosoftの「Planner」(法人向けのMicrosoft365をお使いであれば利用可能)などが挙げられます。

他にも完全に同じというわけではありませんが、「Notion」のボードビューでも似たようなタスク管理が可能です。既にご利用中の方はそちらもご検討ください。


【各種URL】

・Trello: https://trello.com/ja
・Planner:https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/business/task-management-software
・Notion(ボードビュー):https://www.notion.so/ja-jp

 

今回はタスク起点のコミュニケーションについてTrelloの画面を使って解説します。

Trelloはタスクをかんばん方式で管理するインターネット上で利用するサービスです。無料で使い始めることができて、高度な使い方をしないのであれば有料版を使わなくても十分活用できます。
以下の図は事務所内でタスクを共有するためにTrelloで「所内タスク管理」というボードを作成した状態です。


Trelloの画面を元に筆者が作成

ボードの中にリストという入れ物をつくることができますが、これらの名称を

・未着手
・進行中
・完了

とすることにより、タスクの詳細を入力するカードの位置によって業務の進捗状況が一目でわかります。

 

カード内にはタスク名以外にも次のような情報を入力できます。
・説明:タスクの詳細を記入
・メンバー:タスクを割り当てられたメンバー
・日付:タスクの期日
・添付ファイル:タスクに関連する添付ファイル
・アクティビティログ:ボードに参加しているメンバーによるコメント


具体例として「顧問先のA社を訪問する」というタスクについて、どのように運用するか確認してみましょう。

「A社訪問」というカードを作成して、これに関連する情報をすべてカード内に集約することが可能です。

カードに各種情報を追加した状態

事前に所内ルールとして
『訪問に関するタスクについては報告資料が完成した段階で、カードを「未着手」から「進行中」のリストに移動させる』
と決めておけば、所長先生はカードの位置によって資料の準備状況を把握できます。

所長先生は「進行中」リストの中にあるカードに関連する報告資料をチェックすればよく、仮に訪問日が迫っているのにカードが「未着手」リストに残っている場合には、事務所にいなくてもコメントを使って資料の進捗状況をフォローするという運用が考えられます。

最初に挙げた課題については、コミュニケーションをタスク管理ツールに置き換えることにより次のように解決できます。

課題・タスク管理ツール導入後

メールやチャットによるコミュニケーションを行うのは、ほとんどの場合において何らかの仕事(=タスク)を遂行するためです。

コミュニケーションは意識しないとスパゲッティのように簡単に絡まってしまいますが、その起点をタスクとすることにより、コミュニケーションを効率的に行うことが可能です。

ちなみに、私の顧問先の中にはメールやチャットを使わずにTrelloだけで日々のコミュニケーションを行っているところもあります。

3. ツールを導入する際の大事なポイント

タスク管理ツールを使った経験がない事務所様がこうした新しいツールを導入する際には、注意すべきポイントがあります。


それは
1. 使用する前に所内でルールをきちんと決めておくこと
2. 必ず全員が使うこと
の2点です。


例えば
・ 仕事が完了したら作業を行った本人が必ずカードを適切な位置に移動させる
・ 少なくとも1日1回は全員がTrelloを確認する
といった基本的なルールを運用開始前にきちんと決めておくことが重要です。


担当者は積極的にコメント入力などを行うけれども所長先生が一切コメントを返さない、もしくは共有すべきタスクを入力しない、といった状況ではせっかくツールを導入しても機能しません。

ITツールが苦手な方がいる場合には、用途を限定するなど所員全員が少しずつ慣れていけるような配慮も必要でしょう。

税理士事務所のIT化の第一歩として、タスク管理ツールを使ったコミュニケーションの効率化を検討してみてはいかがでしょうか。

事務所のオペレーションを効率化したいと考えている職員の方であれば、この記事を参考に所長先生と一度お話してみるのもよいのではないでしょうか。

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