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特集

日本商工会議所から「デジタル化でつながる中小企業の未来」の冊子が登場しました

  • 2025年12月15日
  • 中小機構 中小企業支援アドバイザー  村上知也
  • DX
  • デジタル化

日本商工会議所から、「デジタル化でつながる中小企業の未来」の提言が行われ、普及用の漫画冊子も発刊されました。

支援機関の皆様に置かれましては、ご一読の上、事業者の方々に冊子の内容を啓蒙いただけるようにご協力よろしくお願いします。

中小企業のデジタル化のための冊子が発刊されました

2025年10月に、日本商工会議所から「デジタル化でつながる中小企業の未来」の冊子が発表されました。https://www.jcci.or.jp/file/joho/202510/digital_mihiraki_251023.pdf

日本商工会議所『デジタル化でつながる中小企業の未来』 表紙

この冊子は、2024年4月に日本商工会議所が中小企業のデジタル化が進展しない要因を分析し、デジタル化推進に向けて考えられる方策や手段、道筋を示し、そのために必要な具体的アクションを提言として取りまとめした提言の内容をわかりやすくマンガ形式にした冊子です。

【冊子のイメージ】

(出典)日本商工会議所「デジタル化でつながる中小企業の未来」より引用

そこでどのような提言がなされていたかを確認します。冊子については、事業者の皆様にも読んでいただけるようにわかりやすくまとまっていますが、支援機関の皆様においては、こちらの提言の方も一度目を通されることをお勧めします。

日本商工会議所 提言「デジタル化でつながる中小企業の未来」を公表https://www.jcci.or.jp/news/recommendations/2024/0419110002.html

中小企業がデジタル化によって目指すべき姿(本提言の主旨)

提言の中では、中小企業がデジタル化によって目指すべき姿として以下の3つのポイントが挙げられていました。

1.まずは「DX」へと繋がる個社のデジタル実装を

企業のデジタル化にはいくつかの段階があります。まだほとんどアナログで業務を行っていて、デジタル化が「未着手」にある中小企業が、いきなりDXの段階に進むのは難しいでしょう。

そのため、中小企業自身が抱く「デジタルは難しい」「導入コストが高い」「今までデジタル無しでやってこられたから必要ない」といった誤解や思い込みの解消から取り組んでいくことが求められます。

中小企業の経営者や従業員の意識変革はもとより、業務プロセスの徹底した省力化や効率化、そして組織そのものの自己変革に向けた意識が重要となります。

2.個社のデジタル実装には一気通貫の「伴走支援」が不可欠

ただし自己変革の意欲はあっても、「何から始めたらよいか分からない」「どんなツールが自社に合うか分からない」といった壁が中小企業には存在します。そのため、デジタル化支援には、経営とIT技術に詳しい専門家やベンダー等に、事前相談からツール導入・フォローまで責任をもって一気通貫で相談対応してもらえる「伴走支援体制の構築」が不可欠でしょう。

(出典)日本商工会議所 提言「デジタル化でつながる中小企業の未来~地域やサプライチェーン等で連携していく中小企業のデジタル化推進を目指して~」より引用

3.企業間取引のデジタル化を地域・業界・サプライチェーンで連携する「面的」な取組みに拡げて共有

その上で、政府からも従来型の「個社支援」から、地域・業界・サプライチェーンといった「面的な支援」へとパラダイムシフトさせる施策が求められています。例えば、共通してデジタル化できる業務分野の規格整備や、公益性・中立性を持ったプラットフォーム構築支援などです。

地域・業界・サプライチェーンにおける受発注業務などの企業間取引を「紙やFAX」から「デジタル移行 (データ共有)」させていくことで得られるメリットは大きいです。

中小企業がそのメリットを実感できるようになれば「当事者意識」も芽生え、社内デジタル化への理解や取組みも進みやすくなるでしょう。

中小企業のデジタル化を阻害する主な要因

さらに中小企業のデジタル化を阻害する要因についてもまとめられています。

1.中小企業自身の「意識」(誤解や思い込み)

意識だけの問題ではないかもしれませんが、どうしても今までデジタル化に取り組んでこなかった中小事業者の経営者は、デジタルは難しいし、覚えるのも面倒だし、なにより価格が高い、と考えているケースが多いです。
実際は、スマホで簡単に使えるものも増えており、操作を覚えるのも楽になっています。そして、価格も多くは月額制になっていますので、初期投資のコストは抑えられています。

何より、今までデジタルを使ってこなくても事業が継続できたので、これからも使っていなくても大丈夫だと捉えている経営者もいます。提言でも指摘されているように、過去の成功体験が強く残っており、人口減少・人手不足・人件費高騰・制度改正など環境変化に対応していく意識に乏しい側面が、デジタル化の阻害要因の一つになっていると言えます。
一時期、コロナ禍ではデジタルを使っていないと事業が継続できないということで、大きくデジタル化は進みました。しかし喉元すぎると、ということで、近年はデジタル化が停滞しているようにも感じます。

支援機関の皆様には、こういった事業者の意識を変革していくことも求められています。

2.自社だけでは解決できない「構造的な課題」

①『自社だけやっても効果が薄い』
意識問題に加えて、自社だけでは解決できない構造的な問題の存在も大きくなっています。例えば請求書をデジタルで送付したいのに、取引先が紙で印鑑を押して郵送して、と言ってくる場合などです。

デジタル化には同時性が必要です。社内だけのデジタル化では最大の効果が得られず、取引先も巻き込んだ全体最適のデジタル化が求められています。そのため、支援機関でも、個社支援から面的支援へ、つまり地域全体や、サプライチェーン全体での取組が求められているわけです。

②『デジタル化を推進できる人材がいない!』
また常に言われていることですが人材不足が続いています。全般的に人材が採用できない中小事業者が多い中、デジタル人材を確保しようと言われても難しいケースが多いです。

一方で、中小事業者でも内部でデジタル人材を確保・育成して、積極的にデジタルに取り組んでいるところでは、ノーコードツールやAIを活用して業務効率化を実現している事例も散見されます。

経営者が主体となってデジタル人材になり、そこを支援機関が伴走しながらサポートしていくことが求められていると感じます。

まとめ

今回の記事では、日本商工会議所が提言している「デジタル化でつながる中小企業の未来」について紹介いたしました。

提言をまとめたデジタル化冊子の方は、マンガ形式で楽しく簡単に読めるようになっていますので、支援機関の皆様は一読の上、多くの事業者にも提示いただければと思います。

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