海外で話題の後払い決済「BNPL(Buy Now Pay Later)」は、日本のECでも流行るか
- 2022年3月2日
- 中小機構 中小企業支援アドバイザー 眞本崇之
- 後払い決済
- BNPL
主にインターネットショッピングで利用されている、欧米で話題のBNPLをご存知ですか?
BNPLは「Buy Now Pay Later」の略、「今買って後で払う」という意味の後払い決済サービスのことです。
今回は、クレジットカード決済などに変わるかもしれない新しい決済方法として欧米で注目され、国内市場規模においても右肩上がりで利用が伸びているBNPLサービスを紹介します。
インターネットショッピングでの決済手段
インターネットショッピングをする際に、どのような支払い方法を取っていますか?
現在は、クレジットカード決済、銀行振込、代金引換、コンビニ払い、キャリア決済、スマホ決済のような決済手段があります。
- クレジットカード払い:購入者が所有するクレジットカードにて決済をし、クレジットカード会社の請求に対して支払う
- 銀行振込:店舗指定の銀行口座へ商品代金を振り込む
- 代金引換:商品引き渡しの際に運送会社へ商品代金を預け、決済代行会社経由で販売者に支払う
- コンビニ払い:払込票や支払い番号を元にコンビニのレジで商品代金を現金で支払う
- キャリア決済:携帯電話の利用料金の請求とあわせて商品代金を支払う
- スマホ決済:スマホに登録した決済アプリにより、商品代金を支払う
総務省の「令和2年通信利用動向調査報告書(世帯編)」によると、クレジットカード払いが75%と最も多く、コンビニ払い(36.5%)、代金引換(24.6%)、銀行振込(22.5%)と続いています。
コロナ禍の令和元年、2年は、対面・対人による決済(コンビニ払いや代金引換)の割合が減少する傾向が見られる一方で、非対面で行える決済(クレジットカード払い、銀行振込、キャリア決済、電子マネー)の割合が増加していることからインターネットショッピングにおける決済手段の多様化が見て取れます。
様々な決済手段がある理由
なぜ、これだけたくさんの決済手段を準備しているのでしょうか?
もし、購入する店舗での決済手段が限られている場合に、利用者が希望する決済手段がないと「○○決済ができる店舗で買おう」となってしまう可能性があります。
よくある例として、○○決済だとポイントがお得に貯まる、クレジットカードは持っていない、コンビニが自宅から近い、といったことが考えられます。
多くの決済手段を準備しておけば、利用者の利便性を高め、購入を促進させる効果も期待できます。
一方で、決済手段が多くなると、店舗側の管理がより複雑になってしまうこともあります。
例えばサービスによって入金のタイミングが異なること(クレジットカードA社は翌月末入金、電子マネーB社は翌月10日入金、QRコード決済C社は翌営業日入金)や、レジの周りに決済端末が増加してしまうこと、などが考えられます。
そのため、複数の決済手段を、1つの決済サービス会社との契約でまとめて利用できることが望ましいでしょう。
BNPLサービスの特徴
ここからは、今、注目されているBNPLの特徴を紹介していきます。
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利用者から決済手数料を取らない
BNPLの特徴の1つとして、利用者から決済手数料を取らない、ということです。
例えば、クレジットカードの分割払いやリボ払いでは、数%から10数%の手数料がかかってきますが、BNPLでは利用者の手数料はかかりません(支払いが延滞した場合には手数料が発生します)。 -
利用手続きが簡便
クレジットカードは、事前にクレジットカード会社の厳しい審査を通らないと使えませんが、BNPLでは、利用者の与信・信用調査が不要、もしくは厳しくない、ということが2つ目の特徴として挙げられます。
そのため、クレジットカードや銀行口座を持っていない人、のように、インターネットショッピングでの決済が難しい一定の利用者の悩みを解決させるサービスとなっています。海外で普及している主な理由はこちらになるでしょう。 -
少額決済
クレジットカードは、事前にクレジットカード会社の厳しい審査を通っていることから利用限度額は比較的高く(10万円〜)設定されます。BNPLでは事前審査が不要、もしくは審査が厳しくない分、利用限度額が数万円までと少額に設定され、利用履歴(返済実績)が増えると、限度額が増えていく仕組みとなっています。また、クレジットカードの与信枠(利用限度額)が影響せずにBNPLを使えることも、利用者の購買機会を増やすことになります。
導入店舗視点でのBNPL導入のメリット・デメリット
BNPL導入のメリットは、利用者の利便性が高まるため、顧客獲得、売上獲得に繋がることが挙げられます。
既存の決済手段を使えない人やクレジットカード等の利用手数料がかからずお得に買い物をしたい人などを獲得することができるようになります。
審査がなく後払いが使えてしまうと、支払いされない可能性があるのでは?と心配されるかもしれませんが、BNPLサービス事業者から店舗への支払いとなるため、店舗が売上を回収できなくなるリスクはありません。
しかし、BNPLサービス事業者が利用者からの支払い回収リスクを負っているため、利用店舗にはクレジットカードの利用手数料よりも高い料率を設定されているBNPLサービスが多いようです。この点が導入店舗のデメリットとなります。
BNPLは日本でも普及するか?
上記引用図表にも挙げたとおり、総務省の「令和2年通信利用動向調査(世帯編)」によると、日本でのインターネットショッピングの決済手段はクレジットカード払いが大半となっています。
このうちBNPLを利用される人を想定してみると、クレジットカードを持っていない(持つことができない)、もしくはクレジットカードの分割払いを希望される人で、「手数料がかからないなら」と購買意欲が出て利用をする一定層の顧客の獲得が期待できます。BNPLのターゲットとなる金額(限度額が数万円)のちょっとした買い物や簡単な手続きだけで決済手数料なしで購入できるという点でクレジットカードを持たないような若い世代には受け入れられるかもしれません。
このBNPLの国内市場規模は、2016年以降右肩上がりで成長を続け、2024年には1.8兆円に到達する予測があります。
多少の手数料を支払ってでも、新たな顧客層の開拓に繋がれば、と考えるお店にとっては有効でしょう。