支援者として事業者データを分析・活用し ていこう【データ分析①】
- 2025年2月28日
- 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 村上知也
- データ分析
- データ活用

今回から全4回でデータ分析・活用の記事を発信していきます。
第1回はDXにおけるデータ分析・活用について解説します。
デジタル化が進めばデータ活用も進む!?
2022年版の中小企業白書では、「中小企業におけるデジタル化とデータ利活用」という章が設けられ、データ活用の重要性が述べられていました。
データを活用するためには、まずデジタル化によってデータを蓄積する必要があります。以下の「デジタル化の取り組み段階」の図によると、デジタル化を進め、データ分析に取り組むことで、段階3まで到達したことになります。

(出典)中小企業白書2022年 第2-3-20図 デジタル化の取組段階
しかし、データを分析するだけでは、段階4のDXに進んだことにはなりません。データを活用し、販路拡大などの具体的な取り組みを行う必要があります。ここでのデータ活用とは、単にデータを分析して評価・評論することではなく、行動につながる分析を行い、実際に事業を変革するために実施するものです。
つまり、段階4のDXとは、単にデジタル化を進め、データ分析を行うことではなく、分析結果を活用して事業を変革し、売上向上につなげることが求められます。
POSレジデータを活用するには
飲食店が手書きの伝票を卒業し、スマホやタブレットで操作できるPOSレジを導入すれば、日々の売上や客単価、商品のABC分析などをすぐに実現できます。
しかし、それだけでは単なるデジタル化による業務効率化に過ぎず、段階3のレベルにとどまります。

さらに段階4へ進むには、例えば、お客様の来店履歴や購買履歴を分析し、その結果に基づいてクーポンなどを提供することで来店頻度が向上し、売上アップにつながっている場合、DXに到達していると言えるでしょう。
ID-POSを活用して顧客データも含めて分析する
中小企業白書のデータ分析の事例では、スーパーマーケットが取り上げられていました。そこでは、同時購買分析(バスケット分析)とクラスター分析が紹介されています。
バスケット分析では、例えばカレーの献立を考えている顧客のために、肉やじゃがいも、人参とカレールーを並べて陳列するのが一般的な戦略とされます。
さらに、クラスター分析を活用することで、新しい商品軸での分析も行われていました。従来の商品カテゴリによる分類ではなく、健康志向の顧客には、健康を意識した商品のクーポンを提供するといった施策が挙げられます。
また、POSシステムは商品のデータだけでなく、ポイントカードと連携することで顧客データの分析も可能になりました(ID-POS)。
これにより、商品と顧客の両面から分析を行い、より効果的な販促施策を実施できるようになっています。

小規模企業ではどこまでデータ活用できる?
ただし、先述のスーパーのような取り組みは、小規模事業者にとってはコストやデータ量の問題があり、実施が難しい場合があります。それ以前に、まだPOSレジが導入されておらず、データ化が進んでいないケースも散見されます。
そのため、小規模事業者を支援する際には、データ化を進めるとともに、どのような視点でデータを分析すべきかアドバイスしていくことが重要です。
以前、家族経営のお花屋さんからキャッシュレス決済の導入相談を受けました。しかし、キャッシュレス決済を導入するだけでは、業績に大きく貢献するとは限りません。
経営全般の課題を伺ったところ、以下のような声がありました。
「当店は高齢者のお客様が多く、仏壇の花が一番売れています。しかし、実際には一般の花屋のように、もっとギフト用の花を販売していきたいのです。」

そこで私は、次の質問をしました。
「現在、仏壇の花やギフトの売上構成はそれぞれ何%ですか?」
この質問に対して、具体的な回答は得られませんでした。これは、お花屋さんのレジが古いメカレジであり、金額しか記録されていなかったため、売上構成を把握できていなかったからです。
ギフトの売上を増やすためには、現状の数値を把握し、将来の目標を設定し、その目標達成のための施策を講じることが求められます。したがって、まず現状のデータを正確に把握することが重要です。
そこで、キャッシュレス決済と同時にPOSレジを導入していただき、POSレジの設定を行いました。お花は品数が多いため、単品管理は難しいものの、仏壇花、ギフト、鉢植えなどのカテゴリを設定することで、大まかな売上構成を把握できるようになりました。
常に必要なデータを迅速に確認できることの重要性を、事業者の皆様に伝えていきましょう。
まとめ
データを分析するだけでは、ただの評論家になってしまいます。 デジタル化の4つの段階でも記載されていたように、分析した結果、実際に売上拡大につながる施策を実施して、初めてデータが活用できたDXの段階と言えます。
支援者の皆様は、事業者のデータ整備を支援し、データを一緒に見ながら、具体的な行動につながる施策の提言をめざしていきましょう。