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特集

デジタル化はほんとにインフラ(共通基盤)ですよ!〜2023年版中小企業白書 概要 (案)でのデジタル化はどのような位置づけか?

  • 2023年4月10日
  • 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 村上知也
  • #中小企業白書
  • #デジタル化

2023年の中小企業白書・小規模企業白書 概要(案)が発表されています。
今年の白書の3つのテーマは、
1.成長に向けた価値創出の実現/新たな担い手の創出
2.地域の持続的発展を支える事業者(地域課題解決等)
3.中小企業・小規模事業者の共通基盤 となっています。

そして3の「共通基盤(インフラ)」の中に、デジタル化が含まれています。今回の記事の中では、概要版の中でデジタル化がどのように取り挙げられているかを確認していきます。

成長志向の中小企業の創出を目指す政策

本題の中小企業白書概要(案)に入る前に、中小企業政策審議会(第36回)において公開された、「成長志向の中小企業の創出を目指す政策の検討状況(令和5年4月4日 中小企業庁)」
について紹介します。

その中では、「中小企業の変革・挑戦を阻んできた構造的要因に対処するため、潜在的な成長志向企業や成長に向け挑戦・変革に取り組んでいる企業を対象に、成長・挑戦を後押しする以下の政策を展開していく」、とされています。
(出典)成長志向の中小企業の創出を目指す政策の検討状況(令和5年4月4日 中小企業庁)

企業にはライフステージがあります。そして成長意欲にも差があると述べています。

これは、中小企業のデジタル化を支援していても感じることです。

現状のままでデジタル化に興味のない企業、成長に向けて少しでも役立つならデジタル化を進めたい企業、かなりデジタル化が進んだ上で更にその先を目指したい企業。

それぞれに対して同じような支援をしても、効果は小さいといえます。

そこで、「潜在的な成長志向企業については、変革・挑戦へ向かう意欲を削いできた構造的背景にアプローチする支援を目指していく」、としています。

具体的には、以下の4つが挙げられています。
1. 事業承継・引継ぎそしてM&Aの円滑化、創業支援
2. 直接金融、経営者保証の解除等の挑戦を支える金融支援
3. 経営人材の充実として、リスキリング、DXの浸透、伴走支援
4. GX化を含む事業再構築、海外展開支援等成長分野進出の支援

デジタル分野に関しては、デジタル人材の確保・教育とともに「DXの浸透」というのが本年度の大きな目標となりそうです。

DXの促進ではなく、浸透という言葉を使っているところにも注目していただきたいです。既に目新しい話ではなく、しだいに広い範囲に行き渡らせていく段階である、ということです。まさにデジタルは既に共通基盤(インフラ)であり、事業を展開していく上では当然のように活用していかねばなりません。

一方で、実際に中小企業白書概要(案)を見ると、まだまだDXが進んでいないことが浮き彫りになっています。

中小企業白書 概要(案)のデジタルについて触れている部分について

デジタル化の取組状況

デジタル化の取組状況のデータを確認すると、コロナ前と比べてデジタル化が進んでいることがわかります。段階3(デジタル化)が進んだ企業は2019年の17.3%から、33.8%まで増加しています。2025年の見込みは、58.4%です。

しかし段階4(DX)は、2019年が2.6%、2022年が4.6%であり、DXに取り組めている企業は多くはありません。2025年の見込みでは18.2%と少しずつ伸びている段階です。一層、ギアを上げて取り組んでいくことが求められます。

デジタル化の取組の4つの段階

なお、デジタル化の取り組みは、以下の図表のように4つの段階に分けられています。
段階3まで進むと「業務プロセスのデジタル化」が進み、「ビジネスモデルの変革」の段階4まで到達するとDXだと言えます。

デジタル化の取り組み

段階1から徐々にステップアップを目指す企業もあれば、一足飛びに段階4に到達する企業も存在します。

このあたりは、前述の「企業の成長意欲」の差にも通じるものですので、各企業の特性に合った進め方を模索する必要があるでしょう。

デジタル化の推進には経営者の関与が必須

次のデータは、中小企業の経営者に関するものです。

デジタル化が進んでいる企業のうち、経営者が自らデジタル化を進めている割合が高くなっています。部分的にデジタルツールを活用する程度なら担当者レベルでも進められますが、全社的にデジタルを導入したり、ビジネスモデルを変革したりするとなると、当然ですが経営者が関与することになります。

デジタル化の推進には戦略的に取り組みたい

デジタル化にしても何にしても、場当たり的に進めてはうまくいかないケースは多いです。そのため、デジタル化の段階が進んでいる企業は、推進するにあたり戦略的に取り組んでいることがデータで示されています。

戦略的に取り組むとは、
 ①ビジョン・目標を設定する、②業務を棚卸しする、③評価指標を設定する、④費用対効果を検討する、⑤デジタル化予算を確保する、という5つの項目を行っていくことが必要だとしています。

デジタル人材の確保は必須

デジタル化は、経営者の関与が必須ながら、実際に進めるデジタル人材の確保も重要です。しかし何でもできるスーパープログラマーを確保しないといけないかというと、そうではありません。

その一方で、ある程度デジタルを理解できる人材の確保は求められています。

先日、建設中のビル工事で鉄骨の精度不良が発覚して、建て直しになったという事件がニュースになっていました。
発注側の担当者がこの時点で問題を見つけることがなければ、そのままビルを建設し、将来、さらに大変な事態になった可能性があります。

デジタル化についても同じことが言えます。外部のIT専門家に任せっきりでは問題を事前に見抜くことができません。社内でデジタル化の進め方を認識した人材を育成、もしくは採用していくことが、今後デジタル化を進めていく上で最重要ポイントになると考えられます。

(出典資料)2023年版 中小企業白書・小規模企業白書 概要案 (令和5年4月4日 中小企業庁)

まとめ

本記事では、2023年の中小企業白書概要(案)において、デジタル化がどのように提言されているかを確認しました。

デジタル化を進めるには、経営者が関与し、デジタル人材を確保しつつ、戦略的に行うことが求められていました。

中小企業白書が刊行された後に、また詳細に解説をしていく予定です。