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特集

月末月初の煩雑な介護請求業務を「介護保険請求システム」で効率化

  • 2023年7月6日
  • 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援)  山中弘重
  • 介護保険請求
  • 国保連伝送
介護請求

利用者が介護サービスを利用した場合、実質負担する費用はサービス利用料総額の1~3割(利用者の合計所得金額と65歳以上の方の世帯人数によって決定)となります。残りの費用(サービス利用料総額の7~9割、介護報酬という)は、介護保険料と国や都道府県等の自治体が負担しています。介護サービス事業者は、利用料の請求に際し、利用者自身への請求に加えて介護報酬分を国民健康保険団体連合会(国保連)へ請求します。利用者への請求と国保連への請求は必ずセットで発生するため、介護業界における請求業務は、一般的な産業界における請求業務と比べて煩雑な作業となります。
多忙を極める月末月初の請求業務を効率化する上で欠かせないのが、入力指示に従って進めるだけで利用者への請求や国保連への請求が実行できる介護保険請求システムです。今回は、介護保険請求システムについてご紹介します。

介護保険請求システムの主な機能

介護保険請求システムの主な機能として、 ①利用者への請求機能 と ②国保連への請求機能 が挙げられます。以下、2つの請求機能について概要を示します。

介護保険請求システムの主な機能

①利用者への請求機能
利用者への請求書を作成する機能です。利用者への請求書は、「介護保険自己負担分」と「介護保険外請求分」の金額を分けて記載することになっています。介護保険自己負担分は、サービス利用料の総額から介護報酬分を除いた金額となります(サービス利用料総額の1~3割)。一方の介護保険外請求分は、紙おむつ代やレクリエーションの材料代等、介護保険が適用されない分に関する請求金額となります。
介護保険請求システムには、国保連への請求機能とも連動し、正しい計算方法に沿ってこのような利用者への請求書を作成する機能が備わっています。

②国保連への請求機能
介護報酬金額を計算し、指定の様式に沿って介護給付費請求書等を作成し、インターネット回線により国保連へ請求書データを伝送する機能です。介護報酬は、「単位」というものを基にして計算する仕組みになっています。サービスごとの単位数に提供回数もしくは日数を乗じて算出した合計単位数に、地域やサービスごとの人件費の割合によって異なる単位数単価を乗じ、さらに給付率を乗じて算出します。

介護報酬の計算方法

                 図:介護報酬の計算方法

介護保険請求システムには、このような算出上の細かい規定が組み込まれています。介護サービス事業者は、別途面倒な単位計算等を行うことなく入力指示に従って進めることで、指定の様式に沿った請求書データを作成して国保連へ伝送することができます。

介護保険請求システムには、上記のように2つの請求機能を備えたものや、国保連への請求機能のみを備えたものがあります。また請求機能のみならず、日々の介護業務の管理機能、経費管理や勤怠管理機能、介護業界に対応した給与計算機能等、様々な機能を搭載し、事業所全体の効率化を実現するようなシステムも存在します。

介護保険請求システムの提供形態と利用料金

介護保険請求システムには、専用ソフトをPCにインストールして利用するインストール型のシステムもありますが、多くのシステムはクラウドサービスとして提供されています。利用料金は、月額約1,000円のサービスから月額約10,000円のサービスまで様々なサービスがあります。請求業務の効率化に特化したサービスから介護サービス事業所全体の効率化を意図したサービスまで、主に搭載機能群の違いによって利用料金は異なります。

ちなみに国保連への請求機能に特化したシステムとして、民間企業の製品のほかに公益社団法人国民健康保険中央会が提供する介護伝送ソフトがあります。本ソフトはインストール型であり、導入費用として1ソフト 60,000円と電子証明書発行費用 13,200円(介護保険証明書、有効期間3年)がかかります。

介護保険請求システムの選び方

これまで示してきたように、介護保険請求システムは製品コンセプトに応じて搭載機能群がまちまちとなります。一般的に多機能になればなるほど、利用料金も概ね高額になっていきます。そのため、まずは「既存の業務の何を効率化するのか」という観点から、自事業所のニーズに適した機能構成のシステムを選定することが重要となります。例えば、事業所全体の効率化を目指すのであれば、様々な機能を備えたオールインワンのシステムが最適となります。一方、既に何らかの介護システムを利用しており、未だアナログによる請求(CD-R等の磁気媒体により請求書データを郵送)となっている国保連への請求についてのみ効率化したいのであれば、国保連への伝送機能に特化した単一のシステムが最適となります。

次に、サポートサービスについて自社が希望する内容に沿ったものであるのかを検討したり、導入実績はどのくらいあるのかを比較したりして、自社に最適な介護保険請求システムを絞り込んでいきます。サポートサービスについては、一般的にサービス内容が充実していれば相対的に利用料金も高額になります。そのため、ITに詳しい人材が内部にいるのか等、自事業所のITリテラシーを踏まえた上で最適なサポートサービスを備えたシステムを選定するのが有効と言えます。仮に手厚いサポートを求めるのであれば、電話やメールによるサポートに加えて、オンラインによる遠隔サポートや訪問サポートにも対応したシステムを選定することをお勧めします。