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特集

「電子カルテシステム」を導入して、多忙な医療現場の効率化・合理化を実現

  • 2023年7月5日
  • 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 山中弘重
  • 電子カルテ
  • 患者カルテ
電子カルテシステムを導入

医療業における電子カルテシステムとは、これまで医師が診療の経過を記入していた紙のカルテにかわり、電子的に記入・管理するための仕組みのことを指します。厚生労働省の「医療施設調査」によると、病床規模別の電子カルテシステムの普及率は、令和2年度で400床以上の病院が91.2%、200~399床の病院が74.8%、200床未満の病院が48.8%、平成26年で400床以上の病院が77.5%、200~399床の病院が50.9%、200床未満の病院が24.4%となっています。近年病院の規模を問わず電子カルテシステムの普及が進んでおり、特に規模の大きな病院ほど高い普及率であることがわかります。
電子カルテシステムの導入により、様々な規模の病院において各種診療業務の効率化等が期待できます。今回は、年々普及が進む電子カルテシステムについてご紹介します。

電子カルテシステムの主な機能と利用メリット

電子カルテシステムの機能について、従来の紙カルテ同様に患者の治療情報やバイタル情報等に関する入力・管理機能があります。保険診療や自由診療のカルテ作成に対応し、特に紙カルテから移行した際、入力時に極力迷いが生じないよう直感的な操作性に配慮されています。さらに、例えばAIを活用して該当しそうな処方やSOAP※1について自動表示したり、タブレット端末やタッチペンと連携した手書き入力に対応したりとカルテ作成をより効率化する機能を備えた製品・サービスがあります。

また電子カルテ機能に加えて、レセコン(レセプトコンピューター、診療報酬明細書作成・請求)機能、予約・受付管理機能、各種指示書といったカルテ以外の文書作成機能等、周辺機能を内包した一体型の製品・サービスも存在します。
※1 SOAP:Subject(主観的情報)、Object(客観的情報)、Assessment(評価)、Plan(計画)のこと。カルテを記録する際のポイントを示した用語。

電子カルテシステムの利用メリットについて、①診療情報の共有合理化、②診療業務の効率化、③ペーパーレス化の推進の3点が挙げられます。以下、利用メリットについて概要を示します。

電子カルテシステムの利用メリット

①診療情報の共有合理化
クラウドサービスの場合、PCやタブレット端末からリアルタイムに診療情報を共有・閲覧できます。分院を展開する大規模病院において病院間の素早い情報伝達が可能になるほか、診療所においても院内はもちろんのこと、往診時でも必要な情報に素早くアクセスすることが可能になります。地域包括ケアシステムの構築が求められる中、多職種・機関との連携の観点からも重要性の高いメリットとなります。

②診療業務の効率化
電子カルテであるため、キーワード検索等により必要なカルテをすぐに呼び出すことができます。さらに、電子カルテに検査結果等の情報を紐付けて一元的に管理できるため、情報管理面において合理化を図ることができます。また紹介状や診断書等、各種書類のテンプレートが用意されているため、書類作成におけるヒューマンエラーを極力回避できるメリットもあります。

③ペーパーレスの推進
従来の紙カルテを電子カルテに置き換えることでペーパーレス化を推進します。紙カルテの物理的な保管スペースも大幅に削減できます。

電子カルテシステムの種類と利用料金

電子カルテシステムには様々な製品・サービスが存在しますが、医療機関の規模の観点から、①診療所向け、②中小規模病院向け、③大規模病院向けの3つに大別できます。多くのシステムはクラウドサービスとして提供されていますが、カスタマイズ性が要求される大規模病院向けの電子カルテシステムを中心にオンプレミスの製品も存在します。また特に大規模病院向けのシステムでは、定番機能となる電子カルテ機能、レセコン機能、予約・受付管理機能のほか、データ分析や外部システムとの連携を踏まえた機能等にも対応しています。
利用料金は、月額1万円台のサービスから月額6万円以上のサービスまで様々なサービスが存在します。また、月額費用のほかに初期費用として数十万円程度かかるサービスが複数存在します。

電子カルテシステムの選び方

これまで示してきたように、電子カルテシステムは医療機関の規模に応じた製品・サービスが用意されています。そのため、まずは自病院の規模に合った製品・サービスの中から候補を選定します。
次に他システム・機器との連携性を考慮する必要があります。既に利用している検査・医療機器、画像ファイリングシステム、診療予約システム、ORCA※2等のレセコンがあれば、そのような既存システムとの連携に対応する製品・サービスを選定する必要があります。

最後に導入・運用コストを比較検討したり、サポートサービスについて自社が希望する内容に沿ったものであるのかを検討したりして、自社に最適な製品・サービスに絞り込んでいくことをお勧めします。
※2 ORCA:Online Receipt Computer Advantageの略。公益社団法人日本医師会が提供する標準レセプトソフト。