今こそ、早期経営改善計画策定支援(通称:ポストコロナ持続的発展計画事業)で中小企業の経営力強化を!
- 2021年11月2日
- 税理士法人 mkパートナーズ 様
早期経営改善計画策定支援は、健康診断の様なものです。会計システムのIT化支援で、経営改善を進め、財務経営力を向上させていくためには、①書ける、②読める、③使える、④見通せる、⑤話せる、という5つのステップを身につける必要があり、そのステップを解説する。
認定支援機関の役割は
中小企業の財務経営力と資金調達能力の向上支援
Q : 認定支援機関に登録されたのはいつですか、また取り組みの実践状況についてお聞かせください。
A : 2012(平成24)年8月に「中小企業経営力強化支援法」(現在の「中小企業等経営強化法」)が施行され、中小企業に対して専門性の高い支援事業を行う経営革新等支援機関を認定し、それら機関が連携して中小企業の財務経営力と資金調達能力を支援する制度が創設されました。
同年11月の認定第1号に税理士・公認会計士松﨑堅太朗事務所として登録し、その後、2019(令和元)年7月に2つの事務所を統合して税理士法人mkパートナーズを設立したことに伴い、同年10月に税理士法人としても登録しました。現在は個人の公認会計士事務所および税理士法人、2つの認定支援機関として登録しています。
当事務所では、経営改善計画策定支援事業18件、早期経営改善計画策定支援事業10件の支援実績があり、この件数は当事務所の顧問先の約2割に相当します。
認定支援機関の税理士法人は、
中小企業と地域金融機関との橋渡し役
Q : 認定支援機関に登録された目的をお聞かせください。
A : 私が認定支援機関に登録しようと心に決めたのは、下図にあるような認定支援機関制度の本来の役割を知ったからです。認定支援機関制度は、中小企業が財務経営力を強化し、経営者が自らの経営状況(PL、BS)や資金繰りへの理解と説明能力を高めてもらうことを目指しています。
認定支援機関は中小企業の経営支援、たとえば経営計画や資金計画の策定支援を行い、一方で地域金融機関は中小企業にとってなくてはならない「血液」である資金を供給し、これらの計画の実行を後押しします。これにより、金融と経営支援の一体的取組(リレーションシップ・バンキング)が推進されます。
さらに、経営計画の進捗状況や効果を把握するために、「中小会計要領」※を導入し、認定支援機関と地域金融機関が連携して中小企業の経営改善をサポートしようというものです。
また、認定支援機関の認定を受けた税理士事務所は、この認定により、税務業務のみならず、会計・経営支援・中小企業金融の専門家として国から認められていることになります。これは実質的に、税理士法改正に匹敵する我々の業務範囲の拡大、すなわち大きなチャンスだと思いました。
中小企業の経営力強化を支援するため、また、これこそ税理士が取り組むべき新たな本来業務だと思い、先陣を切る覚悟で取り組み始めました。
※ 「中小会計要領」とは、中小企業の実態に即してつくられた会計ルールです。
※ 出典:中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/youryou/about/index.htm)
Q : 経営改善計画策定支援事業と早期経営改善計画策定支援事業の違いや、対象企業の選定基準についてお聞かせください。
A : 経営改善計画策定支援事業は、借入金の返済負担等の財務上の問題を抱え、金融支援(リスケ等)を含む本格的な経営改善を必要とする中小企業に対して行う経営改善計画の策定支援です。 また、早期経営改善計画策定支援事業は、本格的な経営改善が必要となる前の早期の段階からの簡易な経営改善計画の策定支援、分かり易く言えば健康診断の様なものです。
どちらも金融機関の協力を必要とする事業者が対象となりますが、早期経営改善計画策定支援の対象先は、今すぐではなく将来的に金融支援を受ける可能性がある企業を対象としています。
当事務所では、ITによる事務所管理体制の構築という観点から、すべての関与先の財務数値を統一されたデータベースで管理しています。そこからシステムにより自動生成される債務償還年数等のデータをもとにした対象リストに沿って支援対象先を選定し、経営者の承諾を得て取り組んでいます。
経営改善の第一歩は、
自社の財務状況把握と説明能力の向上
Q : 経営改善の第一歩は、自社の財務状況把握と説明能力の向上
A : 経営改善計画の実行をどう進めていくかという点で、参考になるのが、中小企業政策審議会の公表資料です。これによると、経営改善が進まないケースに共通する要因のひとつに、自社の経営状況を客観的に把握・認識できておらず、過去の成功体験に固執し、金融機関・支援機関等の意見を受け入れないことがあげられています。
逆に、経営改善が進むケースでは、自社の経営状況を把握し、事業規模に応じて経費コントロール、採算管理、資金繰り管理を行う等の対応が、日頃から行われているとされています。 より具体的にいいますと、経営改善を進め、財務経営力を向上するためには、①書ける、②読める、③使える、④見通せる、⑤話せる、という5つのステップを身につける必要があると思います。
① 書ける
「中小会計要領」に従った、正しい会計処理を行うことで自社の財務状況を客観的かつ正確に把握できる仕組みをつくります。
② 読める
適時・正確な月次決算により、経営状態を把握し、課題があればそれを早めに数字でつかめる体制をつくります。
③ 使える
管理会計と呼ばれる分野で、部門別損益管理や変動損益計算書の活用など、専門家(税理士事務所等)のサポートを受けながら、会計を経営に活用できる体制をつくります。
④ 見通せる
具体的なアクションプランに基づいた、実現性の高い経営改善計画を策定します。
⑤ 話せる
決算報告会、業績検討会、経営計画発表会等を通し、従業員はもちろん、最終的には金融機関等、外部の第3者にも納得してもらえるよう、経営者が会計を活用し、自らの言葉で説明できるようになる、これがひとつのゴールです。
当事務所では、経営改善計画の策定の前段階として、ITツールの導入、具体的には会計ソフトを導入し、部門別や原価別などに細分化して管理できる体制を構築することを常としています。そうすることで、経営者はどの事業が利益を出しているのか、あるいは赤字なのかを知ることができ、具体的な経営改善のアクションにつなげることができるからです。この部門別や原価別の要因分析の把握と、それに対する現場のアクションを繰り返し、黒字にすることを目標にして頂きます。これを実現できれば、当たり前ですが、必ず会社全体も黒字になります。実際に、当事務所の支援先では、こういった採算管理体制を構築して赤字から黒字へとV字回復し、経営改善を成し遂げた顧問先が複数あります。
また、経営改善計画を策定した支援先に対しては、金融機関や保証協会等にご参加いただく「決算報告会・経営計画発表会」の開催を支援しています。この報告会等では、経営者自らに計画や実績を説明していただきます。
ここでは、先ほどのステップ⑤にもあったように、社長の「想い」を自らの言葉で金融機関に伝えることがポイントです。支援者である認定支援機関は、あくまで経営者のサポート役に徹します。実際にこの報告会等を開催すると、金融機関や保証協会は債権者の立場から、融資先の経営や資金繰りが良くなるようなアドバイスをしてくれます。
中小企業では、上場企業の様に毎月、社外役員を交えた役員会を開催することはあり得ませんが、この報告会等を開催し、外部の金融機関等から意見をもらうことは、社外役員から貴重なアドバイスをもらっているようなものです。言い換えれば、この報告会等を開催することで、金融機関に払っている利息や保証協会に払っている保証料が、コンサルティング料としての価値を持つものに替わるのです。こうした金融機関と支援先との良好な関係性を構築することも、認定支援機関の重要な役割だと思います。
コロナ禍の今こそ早期経営改善計画策定支援の好機
Q :経営改善計画策定支援の実践事例についてお聞かせください。
A : 経営改善計画の策定では部門別会計等の導入が必須であることをお話ししました。当事務所の顧問先に、経営改善計画策定をご支援した、業歴約70年の建設業を営む企業があります。その法人が黒字体質の軌道に乗ることができたのも、会計システム導入によるIT化で、部門別会計(建設業においては現場別工事管理)による業績管理を採用してもらったからです。
会計システム導入前の資金繰りの状況は、慢性的な赤字体質ということもあり、複数の手形借り入れが行われていて、どの工事で発生する費用を手当てするための資金であるのか、どう改善すれば業績が良くなるのか、関連性が不明確なものが多数ありました。しかし、会計システムで工事ごとの業績が把握できるようになると、徐々に採算の悪い工事の受注が減り、受注したほぼすべての工事は黒字をしっかり計上できるようになりました。
このように経営改善に直結するIT化支援も認定支援機関の重要な役割で、IT関連情報に明るいことも認定支援機関が的確なアドバイスを行うために絶対に必要なスキルだと思っています。
Q : コロナ禍における早期経営改善計画策定支援への取り組みについてお聞かせください。
A : コロナ禍では多くの企業が業績不振に陥りましたが、今のところ倒産件数は目立って多くなっているわけではありません。これは、国の給付金や助成金、無利息融資等によるところが大きいわけで、この様な施策が国から切れ目なく提供されていることについては、現場目線では感謝しかありません。一方、負の側面として、これにより経営課題が埋もれ、改善しなくとも企業存続が可能な状況になってしまっているとも言えます。この結果、コロナ禍にあっても業績不振を打破するために自らが工夫改善しようとする企業と、コロナ禍以前の旧態依然とした経営を漫然と継続する企業に2極化し、格差をさらに広げる結果となっています。
もちろん、コロナ禍が落ち着いたときに反転攻勢で業績を伸ばす企業の大半は前者です。我々認定支援機関は1社でも多くの企業を、強い経営体質へと変革する支援を行わなければなりません。
多くの事業者はコロナ禍で苦境に喘いでいますが、逆に言えば、今まで経営改善計画の策定に消極的であった事業者が、体質改善や計画立案に耳を傾けてくれやすい環境にあると言えます。コロナ禍が2年目に入り、経営改善を行わなければ生き残れないという危機感が醸成されつつある今こそ、早期経営改善計画策定を支援する絶好の機会だと思っています。
会計のIT化は信頼できる会計システムによる月次決算体制の確立がポイント
Q : 経営改善に直結するIT化支援について具体的な事例をお聞かせください。
A : 税理士事務所ができる経営改善に直結するIT化支援とは、具体的に言えば、適時・正確な月次決算体制を構築し、最新の経営状態を経営者に正確に把握頂き、課題を発見し、迅速に課題解決に取り組むことができる会計システムの導入支援です。
とりわけ最近では、クラウド技術を活用した会計システムが注目されており、当事務所でも、小規模な事業者様から中堅企業まで、規模に関係なく積極的に導入を支援しています。クラウド技術の優れたところは、複数拠点で入力や参照ができる、サーバーを設置する必要がなくシステム導入コストを削減できる、インターネットバンキングやクレジットカード等、あるいは各種業務システムのデータを取り込み、仕訳を自動生成できるなど、従来の会計ソフトにはない機能が搭載されています。そのため、IT化支援、とりわけ経理業務の効率化を通じた事業者の方々の生産性向上という視点から、大変有用なツールであると思います。
ただ、便利である反面「使い勝手」ばかりを重視すると、事業者の方々にとって大きな問題が生じる可能性があります。それは、会計ソフトの特性に起因するデメリットでもあるのですが、経営上、そして税務申告においても大変重要な仕訳データを、何の痕跡を残すこともなく書き換えることが可能であるという点です。
当事務所では、内部統制の確立に資する会計ソフトでないと顧問先を守れないという強い想いから、訂正・削除をした場合には必ず履歴が記録される会計ソフトのみを推奨していますが、こういった会計ソフトの導入支援における内部統制上のアドバイスや、具体的な会計ソフト選定に関わる助言は、会計の専門家でないと分からない分野です。
適時・正確に記帳ができ、かつ内部統制上のリスクが低い会計ソフトを導入しないと、経営改善に資する有用な会計データを活用することもできなくなります。この点については、認定支援機関、とりわけ会計の専門家である税理士事務所の助言が極めて重要であると考えます。
IT化の波は、会計事務所から記帳代行業務を消滅させる
Q : これからのIT化支援のポイントについてお聞かせください。
A : 税理士事務所の仕事といえば、顧問先から領収書や請求書、あるいは補助簿を預かって事務所で仕訳を起こして記帳する、いわゆる記帳代行業務を柱としている事務所も未だ多くあります。当事務所では従来から、そしてこれからも記帳代行業務を受託するつもりはなく、すべて顧問先自身で会計ソフトを用いて適時・正確な記帳ができる体制をつくって頂くよう、ご支援していくつもりです。また、この記帳代行業務を従来通り税理士事務所が続けることは、今後の改正電子帳簿保存法の施行やインボイス制度導入を考えれば、実務的に対応できなくなる可能性が高いと考えています。2022(令和4)年1月1日より、電子取引、たとえば、分かり易い例としてはネットショッピングを通じて消耗品等を購入した際に、PDFファイル等で提供される領収書などについては、従来の紙による保存は禁止され、オリジナルの電子データでの保存が義務付けられます。
この点について税理士事務所に求められるのは、従来の会計ソフトの導入に加えて、いわゆる請求書等保存ソフトの導入支援です。顧問先にとって請求書等保存ソフトの利便性、とりわけ税法で要請されている最大10年間(法人)という保存期間をクリアするためには、現在のITツールの技術的優位性や安全性を考えれば、当然、クラウド上のストレージに保存するという考え方になると思います。また、2023(令和5)年10月のインボイス制度導入とともに予定されている電子インボイスでは、一切紙を使うことなく、データ上ですべてのやり取りが完結します。
このような電子取引あるいは電子インボイスでのオリジナルデータは、顧問先自身で保存しておかなければならず、従来の紙データの様に、税理士事務所に資料を漏れなく持参することは極めて難しくなると思います。また、データで提供される以上、これを外部の税理士事務所で手入力するのではなく、会計ソフトに直接データ連携させる方が遥かに効率的です。つまり、記帳代行により仕訳を起こすという仕事よりも、記帳に必要なデータを、いかに早く効率的に顧問先が会計ソフトに連携させ、自動仕訳といった機能をフル活用して効率的に記帳するのです。その上で、税理士事務所は記帳内容が正しいかどうかを月次、および決算時に確かめ、経営判断に資する会計データを提供できる体制を構築します。この連携によって、給与計算、販売購買管理、顧客情報管理や証憑書類の整理保存を含むバックオフィス業務全体をサポートできる税理士事務所を時代は求めてきていると思います。
そのような時代にあっても、認定支援機関として、継続して地域の事業者をご支援するため、トップランナーとなる覚悟をもって事務所の経営改善にも取り組みたいと考えています。
[企業DATA]
税理士法人 mkパートナーズ
当法人では、この激動の時代を中小企業が乗り切るために、黒字化支援、財務経営力の強化支援に取り組んでおります。経営に役立つ会計データを即時に入手できる体制を整え、経営者の意思決定に役立てることの重要性は言うまでもありません。 当法人では、その様な体制を経営者と共につくり上げることをサービスの柱としています。具体的には、貴社を毎月訪問し、月次決算後の最新の経営成績、財政状態を分かりやすくご説明します。(事務所ホームページより抜粋)
【駒ヶ根事務所】〒399-4115 長野県駒ヶ根市上穂栄町21番20号
【松本事務所】〒390-0841 長野県松本市渚2丁目9番51号
設立:2019(令和元年)年7月
URL:https://www.houtoku-tax.com/free6
税理士・公認会計士松﨑堅太朗事務所 2012(平成24)年11月5日
税理士法人mkパートナーズ 2019(令和元)年10月31日
登録理由:経営革新等支援業務 / 経営改善計画書策定