WMSアプリの利用について
- 2022年2月17日
- 中小機構 中小企業支援アドバイザー 清水康裕
- WMS
- 倉庫管理
コロナ禍がなかなか収束の気配を見せない中、リアル店舗を運営する企業がweb上での販売、いわゆるECサイトの運営に乗り出すことが多くなっています。
ECサイトを利用すれば、お客様は店舗に行かなくても好きなものを好きなタイミングで注文できます。企業としても、店員がいなくても24時間営業できるというメリットがあります。
ただし、お客様から注文いただいた商品を迅速に送り届けるという業務が追加となります。その業務を管理するアプリケーションがWMSです。
オンラインに限らず、FAX注文や電話注文による通信販売を行う場合、どのように商品のお届けを管理するか、ご検討中の方はぜひご覧ください。
WMSとは
WMSとはWarehouse Management Systemの頭文字を並べた通称で、倉庫管理システムのことです。
製品の生産方法は大きく2通りあります。
お客様から注文が入ってから製品を生産する受注生産と、需要が予測される量の製品をあらかじめ生産する見込み生産です。
前者は自動車の販売のような高額な製品に適用されることが多い生産形態です。販売は、メーカーの販売代理店がショールームで試乗機会を設け、商談します。
後者は一般的な製品の販売形態です。お客様からの注文に対して欠品による販売機会を失わないように、仕入れしたものをストックします。
WMSはそのストック状況を管理するものと考えて良いでしょう。
扱う品種が少なかったり、少量の場合は表計算ソフトでの管理も可能ですが、扱う商品が多品種であったり、大量である場合、あるいは、商品の発送頻度や発送点数が多い場合、ミスなく配送する仕組みが必要となります。この表計算ソフトと在庫管理アプリケーション切り替えの境目は業種によって異なりますが、配送ミスが生じる懸念がある場合や、営業やお客様からの問い合わせ対応に時間を要しているのであれば、切り替えを検討する時期かもしれません。
POSシステムによる在庫管理
在庫を管理するという面では、様々なシステムに在庫管理機能が付帯しています。
代表的なのはPOSシステム(販売管理)ではないでしょうか?
POSは商品のバーコードをスキャンして販売金額を計算して販売するものですが、商品をスキャンするので、在庫の消化状況を管理することができます。
POSシステムの多くは、仕入商品の個数管理、販売による在庫の引当(減少)を管理することができます。日常的に販売を管理しつつ、定期的に棚卸しして在庫を補正(賞味期限切れや、破損による減耗等)します。そして、在庫が少なくなったら、発注(定点発注方式)します。
リアル店舗での在庫管理はPOSシステムで十分対応できることもあります。
POSシステムとWMSの着眼点の違い
POSシステムは商品の仕入(発注)、入荷(入庫数登録)により在庫を増やし、商品の売上(受注)と、出庫(出庫数登録)することで、商品の入出庫を管理することが可能です。
商品の入出庫作業がそれほど複雑ではない(商品数が限定的、入荷頻度が限定的、梱包商品が限定的、出荷頻度が限定的)場合、十分な機能が備わっています。
WMSは複雑な配送を必要とする企業向けに、在庫管理に特化した機能が備わっています。POSシステムが販売店舗での在庫管理業務向けだとすると、WMSは倉庫全体の管理業務となります。
一般的なWMSでは仕入業務は対象外で、仕入れした商品が倉庫に到着するところから機能します。
商品が入庫(到着)したときに、仕入を依頼した商品が正しく登録されたことを確認するために、バーコード、QRコード、RFID等を利用して検品することができます。
WMSへのデータ登録は、専用のハンディ(バーコード読み取り装置)を準備しなくても、スマートフォンにアプリケーションをインストールすることで、スマートフォンのカメラ機能を用いて、バーコードやQRコードをスキャンできるものも登場しています。これにより、設備投資を最小限に抑えつつ、入荷や出庫時の数え間違い、登録間違いを抑止します。
これはPOSシステムの検品と同様ですね。
異なるのは、配送に向けた対応です。
注文を受けると、対象商品を棚から取ってきて(ピッキング)、配送用に梱包します。そのための作業指示書(出荷指示書)をWMSで出力できます。担当者は出荷指示書に基づき、作業を遂行できます。
出荷指示方法についても、様々なピッキングを指定することができる場合があります。
代表的なピッキング方法を紹介すると、シングルピッキング(注文ごとに梱包する商品を持ってくる)、トータルピッキング(複数の注文をまとめて必要な商品を梱包場所に持ってくる)があります。
受注数がそれほど多くなく、受注の都度梱包する場合はシングルピッキングが効率的です。
受注数が多い場合、シングルピッキングでは棚と梱包場所の往復が多くなって非効率的なので、トータルピッキングで一気に商品を棚から品出しし、梱包作業に専念したほうが効率的です。
どのような作業方法が自社に合うかは、営業状況によって異なります。もちろん、ピッキングした商品はハンディやスマートフォンのカメラで読み込むことで在庫を減らすことができます。
もう一つのメリットは送り状の自動作成です。
ECサイトの場合、ご近所への配達というわけにはいかず、全国のお客様からの注文に対応しなければなりません。そのため、配送は運送会社に依頼することになります。その時に必要なのが送り状です。
送り状には送り先の住所、電話番号、宛名、自社の住所、電話番号等を記載しますが、WMSでは送り状を自動作成できます。
送り状の手書き作成がなくなるので、大幅な時間短縮につながる可能性があります。また、WMSによっては、送り状と商品を紐づけることができ、商品のトレーサビリティを確認可能です。
お客様からの問い合わせに、迅速に回答できることはサービスの差別化にもつながります。
その他の倉庫業務効率化(3PLの利用)
物流量は増えてきたが、自社で倉庫を運営するつもりはないという企業様は3PLを利用するという選択もあります。
3PLは3rd Party Logisticsの略で、倉庫業務の外部委託です。
委託先の倉庫に仕入れした商品を入庫し、受注情報を外注先のWMSに登録することで、ピッキング、梱包、発送業務を実施してくれます。
WMSのクラウドアプリケーションはサブスクリプションが大半で、ハンディ等の設備投資も不要であるため、自社のバックヤードで運営できる間は自社で在庫を管理し、物流が複雑化したら外部に委託するということも選択肢として考慮してみてはいかがでしょうか?