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特集

オーダーメイドでシームレスなIT化支援を

  • 2024年4月24日
  • 税理士法人 福山会計様[ 徳島県徳島市 ]
福山会計事務所看板前の画像

今回は、徳島市の福山優税理士(税理士法人福山会計)に、関与先のIT導入支援とご自身の事務所のIT化についてお話を伺いました。

事業者の規模や個々の要望に応じて、IT導入を支援

—中小企業・小規模事業者のIT化支援状況についてお聞かせください。

当事務所では、ジャンルを問わずあらゆる事業者の支援を行っています。中小企業・小規模事業者のビジネスにおける、事務のアウトソーシング先という要素と税務顧問という要素を併せ持ったビジネス形態で、お客様のご要望に合わせてオーダーメイドの対応を心掛けています。

事業者がIT化を進める目的は、人手不足や物価高騰によって経営が圧迫されるなか、IT化によって労働生産性を向上させるとともに市場競争力を高めることにあります。私どものお客様は、従業員10人未満の事業者が9割を占めており、いまだに紙主体の手書きで会計処理をしている会社も多いですし、手書きからようやくExcelに移行したという段階の会社が多いのも実状です。ですから、お客様の規模や業種、会社の意向、また経理担当者のITリテラシーなど、個々の状況に応じてIT導入を支援しています。

対応ソフトもさまざまで、弥生会計、弥生クラウド、freeeといった一般に普及しているツールをはじめ、当事務所でも導入しているクラウド会計ソフト「ICS」などをケースバイケースで提案しています。お客様が税理士と同じシステムを導入したいと希望された場合はICSを導入しています。ICS導入によって経理データの月次処理を早期化し、シームレスな経営状況の把握が可能となりました。

「効率化」と「データベース化」二つの論点で、IT化のメリットを明示

—ITツール導入支援にあたり、心掛けていることを教えてください。

ITツールをおすすめするにあたっては、専門用語を使わず、身振り手振りも交えながら、何がどう良くなるのかについてご説明しています。特に心掛けているのは、DX 化において、①業務の効率化と②データベース化したデータの二次利用という2大メリットがありますが、このふたつは大きく異なるということのご説明です。この2点は混同してしまいがちで、頭を整理しにくいものです。

私どものお客様のなかには、いまだに紙の請求書をExcelでデータ化したことをDX化ととらえている方も多くいらっしゃるのですが、アナログな紙ベースの会計処理をデジタル化するのは、あくまで効率化の話であって、データベース化ではありません。デジタル化することで確かに効率化は図れていますが、会計処理をした数字を二次利用できる状態にデータベース化できているかどうかはまた別問題。ですから、経営戦略に活かせるように「データベース化すること」の重要性をしっかりお伝えするようにしています。

—会計ソフト以外のITツールについてお聞かせください。

会計ソフト以外では、クラウド販売管理ソフトで、見積・納品・請求かから入金まですべてがまとまったグループウェアを推奨しています。販売管理業務を効率化するとともに、データベース化することで情報の2次利用が可能となります。中小企業や小規模事業者であっても、価格設定や取引量の推移など経営判断にあたって必要な情報が効率的に入手可能です。

積極的にDX化に取り組む事業者様の中には、ITにまつわるキーワードをご自身でYouTubeなどを検索したうえで、このシステムはどうかといった具体的な相談をいただくケースもあります。一番大事なのは、経営者やマネジメントに携わる人が、自らDX化に対して目的意識を持って積極的に取り組んでいるかどうかです。私ども税理士にできるのは、まずは「データベース化」や「グループウェア」といった重要なキーワードをお伝えし、お客様にDX化への糸口を提示することだと考えています。

福山優先生
福山優先生

小規模事業者にふさわしいDX化スタイルで、働き方の最適化も実現

—ご自身の事務所において、IT化に取り組んでいることについてお聞かせください。

対策①

実は、当事務所は、ごく最近まで職員1名に対してPCが1台ずつないような事務所でした。それは先代の父母が考え出した仕組みで、業務処理の過程がすべて紙で可視化され、管理監督の観点からは申し分のないプロセスを構築していました。しかし、時代の流れとともに人手不足が加速するなか、給与の引き上げ・労働時間の削減・有給休暇の完全取得などを推進するには、DXによる労働生産性の向上が不可欠であると考えました。

コミュニケーション重視の観点から導入したのは、「MyKomon(マイコモン)」という会計事務所のための生産性向上ツールです。日報、伝言、ToDoの共有、カレンダー管理などを効率化することができました。働き方の面では、グループウェアによる勤怠管理で有給休暇の時間単位の管理を容易にしたことや、全職員の訪問・来所状況がカレンダーでリアルタイムに共有されることで、有休取得者のフォローをしやすくする体制を実現できました。これにより、令和5年は有給休暇100%消化を達成。労働環境を整備することで長期にわたる勤続を促し、長期的な視点から人材育成をしていくことを目指しています。入金処理については、3年前からインターネットバンキングを利用しています。ATMに並んで毎月振込作業をしていたことを考えると、なぜもっと早く導入しなかったのかと思うほどです。

オフィスの様子

対策②

お客様のとのやり取りにもフレキシブルに対応できるツールを導入しました。メールはもちろんのこと、LINEやChatowork、TEAMS、ZOOMなどお客様のニーズに合わせてご対応しています。特に、飲食店の場合はPCが手元にないことが多く、LINEでのやり取りは喜ばれています。また、相続のお客様は個人であることが多く、メールアドレスすら持っていない方もいらっしゃいます。この場合もLINEでのやり取りが便利です。

対策③

当事務所は私と職員6名という小所帯ということもあり、IT導入や経営に関する基本的な情報収集は私が行っています。ソフトウェアなどの導入が決まったら、職員とともに利用方法を検討し、私が承認してルール化するようにしています。また、副業マッチングサービス「サンカク」を通じて、東京の企業の社内SE経験者と契約し、社外アドバイザーとしてDX推進に参加してもらっています。デジタルによって何が可能となり、何を削ぎ落としていくのかを 月に1回打合せ、年に2回直接来所いただきながら、具体的なワークフローを描いてもらいました。私どものような小規模の事業者にとって専門スタッフを1名増やすまでは必要ないものの、専門のスキルを必要としている事業者には大変バランスの良い契約形態ですし、何より専門家の目線でDXを推進することで、新たな業態への変革の可能性もあるのではないかと手応えを感じています。

オリジナルアプリの開発は時期尚早だった

—一方で、IT化における失敗や課題についてお聞かせください。

新たにフルスクラッチによるウェブ書庫アプリを開発・運用の予定でしたが思うように進まず、現在は市販ソフトを購入して検証しながら移行を検討しているところです。もともと、当事務所のオペレーションに合ったオリジナルアプリを開発いただいて、導入する予定でしたが、ゼロベースの開発で意向に沿ったものに仕上げるのはなかなか時期尚早だったようです。当然のことながら、市販ソフトの方が開発コストも潤沢にかけて考え抜かれていますから、多機能ですし、使い勝手も良いということがわかりました。

ゼロベースですべてをとらえ直すことで、業務を生まれ変わらせる

—IT導入前に重要だと思うことについてお教えください。

まずは、現在の業務の棚卸しをしっかり行い、業務フローを起こすこと(見える化すること)です。そして、そのフローを眺めてみると、必ず何かしらのアイディアが思いつきます。複数人で眺めることも重要ですね。これによって、デジタル化が加速することも、逆に削ぎ落とすべきものが明確になることもあります。労働生産性の向上に向けてゼロベースですべてをとらえ直すことで、従来の業務をガラッと生まれ変わらせることが可能だと考えています。

私どもの事例をご参考に、まずは一歩踏み出してみてください。

[企業DATA]
税理士法人福山会計
開業:2015(平成27)年
[認定経営革新等支援機関について]
登録年月:2023(令和5)年2月24日