【インタビュー】IT支援の取り組み状況——高崎商工会議所 梅澤史明さん(後編)
- 2019年9月19日
- 高崎商工会議所 梅澤史明
- インタビュー
高崎商工会議所 中小企業相談所の梅澤史明課長にIT支援の取組み状況について、お聞きしました。
平成13年高崎経済大学経済学部を卒業し、都内のシステム会社に勤務。その後、高崎経済大学大学院で経営学修士を取得し、高崎商工会議所に入所し、中小企業大学校の中小企業診断士養成課程に派遣。中小企業診断士の資格を取得。IT導入支援の先駆者として活躍中。
高崎商工会議所のIT支援について
|前編ではHPに関する相談について詳しくお聞きしたのですが、高崎商工会議所のIT支援へのお取り組みについて対応状況を教えていただけますか。
高崎商工会議所では、IT会社での勤務経験のある職員2名が中心となって「いつでも、気軽に、安く」をキャッチフレーズにWordやExcel、HP作成、会計ソフト、電子入札、ネットショップ等、様々なテーマで職員が講師となったパソコン研修を実施してきました(平成13年から平成27年2月。平成27年3月からは民間委託)。14年間累計で約2,200回、約15,000名もの方に受講していただき、事業者のITリテラシー の底上げに一定程度、貢献出来たと考えています。
また、管内事業者の情報化の推進と地元情報関連企業とのマッチングを目的に平成19年度から年に1度、地元の情報メーカー・ベンダーから中小企業向けに自社システムの導入事例などを含めてプレゼンテーション・商談する「ビジネス情報化フェア」を開催しています。
電子入札に関するご相談には職員が対応しています。私自身も身内の自営業者からやり方を聞かれ、一緒に電子入札をやってみる内に自然と方法を学びましたね。
最近ではFacebook等のSNSの活用をお勧めしています。特に資金も情報伝達手段もない創業者にとってはありがたいサービスです。一例として、パソコンの使えない飲食店の創業者にFacebookの活用を進めたことがあります。まずスマートフォンにアプリをインストールして、できる限り知り合いに友達申請を行って500名を目標にしました。その後、Facebookページを作成し、店舗の改装中の様子からすべて投稿されて開業と同時にお客が集まりました。こうなるとFacebookに投稿する重要性をご自身で気づかれ、こちらから何か言わなくても投稿されます。
私自身もFacebookユーザーなのですが、とにかく頻繁に発信することが大切だと考えています。飲食店の場合でしたら、「○席空きがあります」「満席です」と発信するとしないとではお客様を大事にする姿勢や印象が圧倒的に変わってきますよね。
ご自身から相談を求めてきた人、すぐに行動する人は成果に結びつきますが、誰かに言われてやっている人は更新もしないし、成果にも結びつきにくいですね。
|何においてもそうですよね。そうすると上手く成果を出せていないケースなども含めて、導入後のフォローアップはどうされていますか?
普段の活動の中で会ったときに必ずお声掛けするようにしています。改めて相談がある場合には進捗をお聞きして、フォローアップするようにしています。
|IT導入に成功していただくためには、支援機関として支援の質を上げることも大事かと思いますが、そのポイントはどこにあるとお考えですか。
目の前にある機会について可能性をいかに考え、いかに情報を取りにいくかがポイントだと考えています。
例えば、かつてパソコンが世に出てきたとき、日本商工会議所から各商工会議所へパソコンを活用するようにという話がありました。当会議所では、そのときパソコンをどのように支援に結びつけるかということを考えることができたので、それが今もIT支援の基盤となっています。
2012年には、日本商工会議所から商工会議所にタブレットが支給されましたが、その際、タブレットをいかに支援に使うかを考えた会議所と考えなかった会議所とでは大きな差が生まれています。広島県の竹原商工会議所はタブレットを最大限に生かして事業者にクラウド型POSレジの活用を促し、データを商工会議所と事業者とで共有できるようにすることで、売上向上に向けた支援につながっていると聞いております。
それから今は「地域経済分析システム(RESAS)」で産業構造や人口動態、人の流れなどのビッグデータを活用して分析に用いることができますし、Web上の地理情報統計システム「jSTAT MAP」を使えば商圏分析が容易にできます。少し前までは高額で売られていたような情報や時間を掛けて手計算して加工する必要のあったデータを今では簡単に無料で活用することができるわけです。既にそこにある情報をいかに取りに行って活用できるかが支援の質を左右する分かれ道となるのではないでしょうか。
|梅澤課長は普段、ITに関する情報などはどのようにアップデートされていますか?
人に会って、その人が使っているシステムを教えてもらうことで新しい情報を得ています。「良いかな?」と思ったアプリなどは人に聞いてみて良さそうだということであれば使ってみることにしています。
|支援機関がITに強くなるためにはどのようなことからはじめればいいと思いますか?
まず自ら使ってみる、触れてみることが大切だと思います。使ったことのないツールを事業者にお勧めしても、表面的なことしかお伝えすることができません。無料版や個人向けプランなどであっても良いので、使っていれば肌感覚で分かっていることをお伝えすることができます。
|まず使ってみる。大事ですね。
指導員は理系ではない場合が多く、ITに関して苦手意識がある人が多いと思います。でも理系ではなくても苦手意識を取っ払って使ってみればなんとなく出来るようになりますよ。
|ITの可能性をどう捉えていらっしゃいますか。
ITで解決できることは本当に多いと思っています。身近な例ですと、当会議所では役員の出席を確認する際、いまだにFAXを使っています。でもフォーム作成サービスを使えばデータベース化までできるわけですから、それを使えば良いわけですよね。他には、宅急便の発送伝票とシステムを結びつければ、発送先の管理のための入力や発送伝票を書くための人手をほかにまわすこともできるかもしれません。
今やっている業務フローのどこにITを使えるかについて整理して、もう既にITを使って業務効率を上げているところはあると思うので、事例として紹介できたら解決できることが多いのではないでしょうか。
ここからアプリ」について
|梅澤課長には支援の現場で「ここからアプリ」を使っていただいているということで、ありがとうございます。ここからアプリの良い点について教えていただけますか。
どういうITがよいのか聞かれても、ITツールに詳しい指導員が少なくて紹介することができないことも多くありました。それが、「ここからアプリ」を使うことで候補となるサービスの絞込みができて「勤怠管理システムでしたら、こんなのがあるんですよ。」といった様に紹介できるようになった点が良いですね。
|逆に使いづらい点、改善点は何でしょうか
候補となるサービスの絞り込みができるまではよいのですが、絞り込まれた候補の内どれがよいのか聞かれるのが困ります。アプリごとの導入実績やランキングが載っていると勧めやすくなって助かります。
|特定のアプリだけをお勧めすることは難しいですが、アプリごとの事例を紹介するなどして自分の用途に合うかどうかを判断しやすくするというのは、良いですね。貴重なご意見ありがとうございます。最後に「ここからアプリ」に対する期待を教えていただけますか。
個人的にはよいものと思っています。わたしはよさを知るきっかけをもらいましたが、研修がこれからの地域もありますので、経営指導員が「ここからアプリ」について知るのはこれからだと思っています。いかに人伝いに知ってもらい、使ってもらうかが肝要なのではないでしょうか。事例などいろいろなものが充実して行けば、支援の現場でより参考になるものになっていくと思います。
|「ここからアプリ」は今後、皆様によりお使いいただきやすいものとなるよう改善してまいりたいと考えております。本日は貴重なお時間を頂き、ありがとうございました。