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特集

IT管理者の救世主? Windows365とは何ものなのか

  • 2021年8月11日
  • 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 高見康一

2021年8月2日に米マイクロソフト社が一般提供を開始したクラウドサービス「Windows365」をIT管理に苦悩している中小企業向けに紹介します。

2021年8月2日、米マイクロソフト社が世界を席巻しているOS「Windows」のクラウドサービスの一般提供を開始しました。「Windows365」というサービスです。
このサービスは、企業のIT管理者にとって救世主になるかもしれません。

今日、数多の企業で日々の事業活動にPCが利用されています。
もう少し具体的に言うと、PC上で「会計アプリ」「文書作成アプリ」などの「アプリケーション」を動かし、日々会計や情報の整理、書類の作成を行っています。
そして、その「アプリ」を動かす土台として「OS(オペレーティングシステム)」と呼ばれるものがPCにインストールされています。そのOSの代表格が「Windows」です。

IT管理者の苦悩

企業のIT管理者は「PC(ハードウェア)」「OS(オペレーティングシステム)」「アプリ(アプリケーション)」の3つが「どこで、いくつ使われているのか」「だれが使っているのか」「どんなバージョンを使っているのか」などを日々管理しています。さらに、加えて「どのような情報にだれがアクセスして良いか」などの管理も行っています。これらの管理がPC業務のを担保し、企業の信頼性を支えています。あまり目立ちませんが、IT管理者は企業にとって非常に重要な存在なのです。
しかし、多くのIT管理者はその管理業務に日々苦悩しています。

働き方の多様化

日常的にPCが使われている現在、PC、アプリなど種類は膨大でさらにバージョンも沢山存在しています。加えて働き方改革やコロナ禍などもあり、更に管理が難しくなってきています。
たとえば、企業がリモートワーク制度を導入するとなるとPCの社外持ち出しを認める必要があります。そうした場合、当然どのようなアプリが入っているどのPCが持ち出されているのかを把握する必要があります。また、そもそも持ち出し用のPCが手持ちになければ、新たに調達して設定しなければなりません。その際、業務の特性に応じて性能の吟味なども必要になってきます。
さらにリスクの観点からすると、社外での利用を想定した場合、当然紛失リスクが発生します。その紛失リスクに対してどのように相対するのか、IT管理者はそのような事も検討しなければなりません。企業がPCを用意するのではなく、セキュリティのリスクをある程度受容しつつ、私物のパソコンを使うことを認めるという方法もあります。しかし、やはり私物のパソコンはIT管理者の管理が及ばない部分が多く、セキュリティの不安が残ります。
もしIT管理者がこれらの管理を怠れば先ほど挙げた①セキュリティ②信頼性③効率性が損なわれ、企業に大きなダメージを与える可能性が高まります。IT管理者は苦悩しながらも日々の管理業務を怠るわけにはいきません。

Windows365とは

このようなIT管理者の苦悩を少し緩和してくれるかもしれないサービスが「Windows365」です。
「Windows365」は、従来のWindowsのようにPCにインストールするOSではありません。クラウドベースで利用できるサブスクリプションサービスです。つまり「Webブラウザ」と「インターネット環境」があれば、PCの種類を問わずWindowsを利用し、その上でアプリを動かし、会計や情報の整理、書類の作成が出来ます。
IT管理者にとっては「セキュリティ」「効率性」の観点からメリットを得ることができます。OSがブラウザ上で動作するため、利用者が作成したデータや利用履歴は自動的にクラウド上に保存されます。つまり、PC本体にはデータが残らないので、紛失や盗難に遭った場合もWindows365にログインできる情報さえ流出しなければ、情報漏えいなどの心配がありません。また、動作するPCの種類や性能を細かく指定する必要がないため、管理や設定業務を削減することも可能です。

利用するには

「Windows365」の始め方は簡単です。マイクロソフト社の専用ページに行き、必要な情報を入力すれば始められます。
価格は必要になる機能や性能によって異なります。2021年8月4日現在、月額3000円程度から利用可能となっています。さらに2カ月(60日)間の無償試用というサービスも実施しています。(2021年8月4日現在、申し込み多数により終了 再開は未定)

企業活動の新たな選択肢

「生産性向上」「販路開拓」などの経営課題に取り組むにあたって、IT活用が不可欠な時代になっています。一方で、活用すればするほど「セキュリティリスク」「煩雑」といった新たな課題も発生します。「Windows365」はその新たな課題を解決する一つの選択肢に成り得るかもしれません。

個人的に興味があるのはタブレット端末での利用です。「Windows365」は「ブラウザ」と「インターネット環境」があれば利用できるので、タブレット端末でも利用が可能です。なのでたとえば、事務所ではPCで作業し外出先ではタブレット端末で続きを作業するなどの働き方が可能になります。もちろんタブレット端末で利用したとしても、従来のタブレット端末の機能も併用できるので「文書作成や情報処理」はWindows365で行い「ネット記事閲覧や動画視聴」はタブレット機能で行うなんて使い方も可能です。組織としての企業活動だけでなく個人それぞれの働き方にも新たな風を吹かせてくれるかもしれません。