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特集

ホテル・旅館の情報基盤を構築しよう【中小企業のためのクラウドサービス/アプリ分野紹介 PMS(ホテルシステム)】

  • 2020年5月22日
  • 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 吉田明弘
  • アプリ分野紹介

ホテル・旅館では、さまざまなお客様に対していくつものサービスを組み合わせて提供しています。その過程では、当たり前のことになっていて、強く意識していないかもしれませんが、多くの情報が蓄積・活用されているはずです。ただ、情報を扱う上で、これまでITを活用していなかったとしたら、現場では、情報活用コストが大きくなっていたり、情報活用に偏りが発生していたり、本来使えるはずの情報が活用されていなかったり、といったことが起きている可能性があります。
コストを抑えながらもサービスの質を高め、生産性を向上していくためには、情報を効率的・効果的に扱う基盤を構築することが大切です。以下では、情報基盤としてPMS(Property Management System/ホテルシステム)を活用することで、ホテル・旅館の情報蓄積・活用がどのように変わっていくかを紹介します。

○遠くても伝わる

客室、フロント、調理場、風呂など、さまざまな場所で、さまざまな情報が発生したり必要になったりします。一方で、情報が発生する場所や情報が置いてある場所と、その情報を伝えるべき人のいる場所は、物理的に遠くなっていることも多いです。例えば、お客様の情報を客室や調理場などさまざまな場所で確認したいのに、フロントでしか見られなかったり、掃除をしているときに設備の問題点を発見したけれど、修理する人が遠くにいて伝え忘れたり、ということが起こり得ます。物理的な距離は、お客様のための活動を遅くしたり途絶えさせたりして、邪魔してしまいます。

スタッフがどこにいても同じように、必要な情報にアクセスできて、大事な情報をすぐに共有できる仕組み(そして組織としての習慣)があれば、知らなかったことによる機会損失は避けることができます。PMSは、ホテル・旅館における、顧客情報や施設管理情報などの、さまざまな情報を集約するための機能を持っており、情報を活用してより良いサービスを生み出す基盤になります。
また一方で、誰でもアクセスできるだけでなく、特定の人だけで共有すべき情報も一部にはあり得ます。そのような情報が共有の仕組みから完全に外れてしまうと、他の情報も仕組みに乗らなくなってしまうことが起こりやすくなります。基本原則としては、すべての情報が組織内で公開されることが望ましいですが、情報共有の仕組みには、一部の情報を限られた人だけアクセスできるように制限する機能があることも重要です。システム導入時に機能を確認しましょう。

○過去の情報にもアクセスできる

お得意様を大切にしたいというのは、多くの業種で共通の考えですが、そのためには、そのお得意様に過去どのようなサービスを提供してきたか、という記録をいつでも容易に参照できるようにしておくべきです。一部の従業員の頭の中にだけお得意様の情報があるという状態では、すべての従業員が適切な対応を取れなくなります。例えば、お得意様から「宴会は例年通りでお願いします」と言われたときに、対応している従業員がすぐにその内容を理解できるかどうか。支配人に聞いてこなければならない、もしくは紙の書類をひっくり返さないといけない、といった状況で確認に時間がかかるようでは、お得意様との信頼関係を継続的に構築していけません。

お得意様の情報がアプリに記録されていれば、従業員はその情報にすぐにアクセスできます。そしてその情報をもとにして、サービスを工夫して提供していくことができ、何度もそのホテル・旅館を利用されているお客様であるほど、より高いレベルのサービスを提供できるようになります。お得意様に対して、ただ料金の割引などを提供するのではなく、過去の情報を活かして、他のホテル・旅館との差別化をしていきましょう。

○より細かな原価を管理できる

売上だけでなく原価を管理していく必要があるのは当然ですが、どこまで細かく原価を見られる仕組みができているかは重要なポイントになります。毎月、もしくは年度決算だけで、かかったコストをまとめて計算していると、どの商品やサービスが利益や損失につながっているかが分かりません。いわゆる「どんぶり勘定」という状態です。全体として「もっと利益が出るようにしなければ」とは思っても、どこに注力してカイゼンを進めていいものか見通しが立ちません。

お客様の1回の宿泊毎、提供した食事・サービス毎にそれぞれ原価を予め設定し、実際に提供した際にかかったコストを確認していけば、どの部分が利益につながっていて、どの部分が損失につながっているか、が明確になります。そのためには、例えば食事のメニューを作る際にも、原価計算を行った上で検討し、採用した内容を記録しておき、実際に提供したときとの予実の差異を管理しておく必要があります。
PMSの中には、料理毎の原価管理や仕入れ管理もできるものがあり、ホテル・旅館で発生するコストをきめ細かく管理し、集計結果をグラフなどで見やすいレポートにして常にチェックできます。

○まとめ

このようにPMSを活用して情報基盤を構築することで、ホテル・旅館の中で発生する情報を効率的に管理し、さまざまなサービスの提供において活用することができるようになります。多くの業種がそうであるように、宿泊業においても、情報の利活用の巧拙が業績を大きく左右していきます。是非、IT(=情報技術)によって、情報を効率的・効果的に扱えるようになりましょう。
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