従業員各自のペースで学習をできる「e-ラーニング」の体制を作りましょう
- 2022年11月15日
- 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 鬼澤健八
- 社員教育
- 研修
従業員の保有能力を磨いて従業員のポテンシャルアップをしていかないと、企業全体の能力も横ばいのままになり、場合によっては世の中の新しい技術に置いていかれ、新しい取り組みもできず企業能力が下降してしまいます。
社内研修などを行う場合、学校ではないので、日常業務を遂行しながらの学習になります。各々の業務スケジュールの都合に合わせて受講できるようにe-ラーニングシステムを活用していきましょう。
研修の内容によっては、e-ラーニングに向いていないものもありますので、e-ラーニングシステムの特徴を押さえて運用していきましょう。
e-ラーニングのメリット・デメリット
クラウドの「e-ラーニングシステム」のメリット・デメリットを整理しておきます。
(システムのメーカーによっては機能を保有していない場合もあります)
(1)教材制作者、研修担当者にとってのメリット
- システムの中で、受講計画や受講進捗を管理できる
- 一度、教材を登録すれば再利用できる。更新管理も可能
(2)受講者にとってのメリット
- 受講の時間と場所に制約がない
- スマートフォンでも受講可能なコンテンツは通勤中でも受講できる
- 受講進捗を自分で確認しながら計画的に受講できる
(3)デメリット
- インターネット環境が必要。通信速度が悪い場合に動画等のコンテンツが見にくいときがある
- 幅広い研修を対象にした場合に、コンテンツ作成が大変
- リアル研修ではないので、質問をしながら理解することは困難
- 実技や感覚を伝えることは苦労する
教材コンテンツについて
e-ラーニングシステムは、「教材」と「学習管理機能」との2つの要素で構成されます。最初に「教材」について説明します。
(1)教育体系を整理してe-ラーニング形式が可能な学習分野を検討
e-ラーニングを効果的に活用するためには、自社の課題に基づいた「教育計画」を役職やクラス別に、どのように教育をしていくか、「教育体系図」等で整理する必要があります。その中で、e-ラーニング形式で実施できるものを個別に検討していく必要があります。
(参考 教育体系図のサンプル 建設業 約20名規模の例) 出典:厚生労働省ホームページ 令和4年8月人材開発支援助成金のご案内(PDF)から抜粋(2)教材が用意されたコンテンツ搭載型(他社教材)
教材を自社用に作成するのが理想ですが、新人向け・管理職向け等の汎用的ビジネススキルや、セキュリテイ啓発研修・コンプライアンス研修や、職種別の一般知識等の、どの企業でも対応できるコンテンツを提供しているクラウドサービスがあります。自社のコンテンツ制作費用とサービス利用料を比較検討して組み合わせを検討しましょう。
(3)自社ならではのノウハウ伝授のコンテンツ作成(自社教材)
自社オリジナルの技術や知識の伝授であれば、時間をかけて教材を制作して蓄積していくことは、 とても有意義なことです。
しかし、現場の技術職の方や販売員の方などで、オフィスソフトの操作に慣れていない方だと、コンテンツ制作を依頼することが困難なことがあります。その場合は教材を制作しやすい“教材制作ツール”が装備されたものの利用を検討しましょう。
静止画、動画、音声、文章を組み合わせて作成しますが、画面のフレーム中の、文章用のボックスに文字を入力し、スマホで撮った画像をアップロードしてはめ込んで教材を作成できます。
デザイン性や操作のし易さを、お試し版を通して比較検討しましょう。
(4)e-ラーニングに関する世界標準規格のSCORM(スコーム)
e-ラーニングに関する世界標準規格で、SCORM(スコーム・Sharable Content Object Reference Model)という規格があります。
LMS(学習管理システム)と教材を組み合わせるための仕様です。SCORMに対応したシステムは、SCORMに準拠して作成したコンテンツを、学習履歴データを含め、ほかのLMSに移行させることができます。教材コンテンツを購入したり、他のシステムに乗り換えたり、長い目で見ると対応していることが好ましいです。
学習管理機能
e-ラーニングシステムのもう一つの要素は、「学習管理機能」です。(Learning Management Systemの頭文字を取ってLMSと呼ばれます)
次のような機能があり、全従業員に対する計画的な教育に役立ちます。
- 動画やオフィスソフトで作成した教材を登録してコンテンツを作れる
- 登録したコンテンツを階層別等で受講させたいコース管理ができる
- 教材の配付と更新がシステム上でできる
- 受講後テストやアンケート等で受講の実績管理ができる
- 受講者の進捗管理ができる
- 受講期限を設定して計画的に受講を促進できる
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