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新潟の老舗企業で、アプリを活用した組織活性化に後継者が挑戦!

  • 2020年03月06日
  • 浅野金属工業株式会社
  • 製造業
  • ビジネスチャット
  • テレワーク
  • 関東

金物・ステンレス文化が盛んなエリアとして世界的に有名な新潟県三条市。浅野金属工業株式会社は明治25年創業の老舗企業であり、現在はステンレス製品の製造会社として国内外に製品を送り出しています。また、旧来の縦割型の社内構造を変革すべく、社内の情報共有にビジネスチャットアプリを導入し、風通しの良い職場環境を実現しています。後継者候補である広告宣伝部 課長の浅野一志氏に、ビジネスチャットアプリ導入の経緯と導入効果についてお話を伺いました。

当社は明治25年に三条市で木製品の製造から始まりました。昭和19年、浅野金属工業株式会社となり、昭和40年代からステンレス製品の製造を開始、現在は海外でも事業を展開しております。国内では主に、漁業関連のステンレス製品メーカーとして実績があります。

広告宣伝部 課長 浅野 一志 氏

【課題】ペーパーレス化とともにコミュニケーションの効率化を狙った

2018年にペーパーレスを推進することになり、社内ルールを変更しました。退社時には机の上に何も置いてはいけない決まりを設けることで、紙の束が机の上に残ったまま帰宅していた以前の状態が、現在ではペーパー資料をPDFデータとして保存、共有する習慣が社員全員に根付きました。また、FAXについても2020年内には紙でプリントせず、PDFデータでの共有のみとなるように準備を進めています。

人は情報を他者に見せたいときに用紙にプリントアウトします。机の上に紙が多かったのは『情報共有』がそもそもの原因だったのだと思います。チャットアプリを活用すれば、情報をデバイス間で共有でき、いつでも見たいときに確認できます。ペーパーレスとコミュニケーションの円滑化を狙い、ビジネスチャットアプリ『Slack(スラック)』を導入しました。
導入以前は、縦割型のコミュニケーションによって社長の指示をそれぞれの担当部署が単独で実行する事が多く、部署間の情報共有や業務連携によって仕事を大きく発展させることができないことが問題でした。

さらに先を見据えて事業承継を考えた場合、「縦割型のコミュニケーションでは、トップが変わるとビジネスが立ち行かなくなるのではないか」。そういった危惧を感じていました。そこで、中小企業大学校三条校の研修を受講するなど、「もっと横断型のコミュニケーションを取れる仕組みを」と考えていたのです。

【導入】情報の送り手も受け手も時間を取られないチャットツール

2018年に事務所をフルリニューアルした際、オフィスの半分、営業部の占有エリアのデスクをフリーアドレスにしました。営業部スタッフは決まった席がなくなった事で、部署内の縦・横のコミュニケーションがしやすくなりました。

しかしながら、スタッフによっては、製品の試験の際に違う建物に移動して作業することが頻繁にあります。紙の資料で情報の共有をしようと思い、資料を持って製品開発室に行ったが担当者がいない。居場所を聞いてその場所に行ってみたが、そこにもいない。夕方にやっと担当者との共有ができても話し込んでしまい、定時で帰ろうとしたのに帰れなくなったというような事象が発生していました。

Slackは、机の上に資料を置いて『あとで確認してください』と伝言メモを残すことの進化版だと思います。自分の机にいながら『確認していただけましたか?』と問い合わせができますし、確認する側も『確認しました』のリアクションをボタンワンクリックで意思表示ができます。意思疎通が簡単にできるのはSlackの良さのひとつだと思います。

今は多くの人がスマートフォンのチャットツールを使うことに慣れています。チャットの操作はある程度理解できているという背景があったため、導入後は特に問題なくSlackを活用できています。実は内勤メンバー10人で使い始めたSlackでしたが、やがて社内の回覧情報がSlackで回るようになり、今では『その情報、Slackに上げておいて』という言葉が社内で飛び交っています。これは、部署の垣根を越えた横断型のコミュニケーションが取れ始めている証左だと感じました。

【効果】チャットツールで事業承継に向けた組織体制を構築

当社の営業部は月に10日ほど外出しているので、何か気づいたことがあっても瞬時に伝えることができない状況でしたが、Slack導入で業務改善提案がしやすくなりました。現在では商品名カテゴリーごとにチャンネルがあり、議事録が添付され、営業・開発・広告宣伝の部署で売上改善について話し合いをしています。これまで改善提案の場は、月に1度の全体会議で話し合いがあるかないかという程度でしたが、今では様々な部署からSlackを通じて多くの意見が出るようになりました。

以前ですと外出中の営業は10日後にならないと議事録を閲覧できませんでしたが、2019年から全営業スタッフに業務用スマートフォンを支給した事で、Slackに上げておけば、場所と時間を問わずに閲覧できます。議論のスタート地点を一緒にすることでビジネスのスピード感が変わります。Slackでの情報共有で、翌日には製品開発や業務改善のために担当スタッフが具体的な行動を開始するようになるなど、月1度の全体会議で情報共有していた頃と比べて、雲泥の差でスピード感が上がっています。

また、部署間での意見交換などがほぼできていなかったのですが、今ではSlackを通じて、負担なく、簡単に部署間での意見交換ができています。横断型のコミュニケーションが社風として根付くようになれば、ボトムアップで意見を出すことが当たり前になり、トップが変わってもさらなる成長が期待できます。実際にSlackで社内が活性化しましたが、その先に事業承継に向けた組織構築の効果も期待しています。

私が所属する広告宣伝部で行っているカタログの改編作業は、各部署がカタログを修正依頼する際、対象のページをコピーした紙に赤字で修正内容を入れ、広告宣伝部のスタッフに手渡ししていました。また、当社のカタログは種類が複数あり、各カタログの改訂までは約1年の期間があります。広告宣伝部ではこの間に修正要望が記された紙を無くさないように、また、どの部署の誰からの要望であったかを忘れないように管理する必要があり、一つ間違えば、改訂箇所の抜け、漏れの原因になりかねない状態でした。今は、カタログの修正要望をSlackにアップしてもらうルールとしたことにより、カタログ改訂時にはSlackに集まった要望を確認しながら作業できるため、誰が何を言ったのか、発言もさかのぼれるので大変便利です。

【展望】時間的ロスの少ないコミュニケーションが必要不可欠になる

電話がコミュニケーションの一番の方法という人が少なくないと思うのですが、電話はお互いに時間を取られますし、特に事前の約束も無くコールする場合、相手が出るかどうか分からない“賭け”みたいなものだと思います。それより、優先順位は高いけれども都合良いときに確認ができる情報共有方法が、今のビジネスには合っているのではないかと思います。

B to Bのコミュニケーションでメールマガジンがいまだに有効であると言われているのも、『自分の都合の良いタイミングで』情報を確認できることが理由なのではないかと思います。これからは『時間がある時に見ておいて』という方法が有効になるのではないでしょうか。

今後の働き方改革の進展により、社員の働く場所や時間が変わり、労働時間の短縮化も進みます。短い労働時間の中でいかに時間的ロスを少なくするかが重要になる中で、Slackなどのチャットツールは今後必要不可欠なツールになると思います。

浅野金属工業株式会社
HP:https://www.asano-metal.co.jp/

所在地:新潟県三条市月岡2866番地
従業員数:45名:
創業:128年目(明治25年)