ICTの活用を通じて、農業を魅力あるビジネスに変え、次の世代がさらに挑戦できる経営基盤を築いていきたい。

  • 2020年02月14日
  • 株式会社にしごみ
  • 飲食業
  • POS(汎用)
  • 決済(店頭クレジットカード)
  • 決済(店頭QRコード)
  • 四国
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半世紀以上にわたり、高知県内でみかん農園を営むとともに農産物の直販に取り組んできた株式会社にしごみ。「ほかではできないことに挑戦する」という思いから、主力の温州みかん以外にブラッドオレンジや不知火(しらぬい)、はるか、などの品種の栽培に挑んでいる。さらには香料の元として注目のベルガモットという希少品種の栽培に成功するなど、付加価値の高い農作物の創出に果敢に取り組んでいる。
創業者の代から進取の精神を重んじた経営を追求していることから、ICT(情報通信技術)の活用にも意欲的だ。また、地元の商工会の経営指導員が事業に即した助言を熱心に行っていることから、キャッシュレス決済などを的確に進めている。

 高知県の丘陵地にて、私の祖父が苦労の末にみかん園を開いて以来、親子三代にわたって経営を続けて57年になります。私は開園の年に生まれたことから、みかん園は私の人生そのものです。祖父は「いごっそう」の高知県人らしく進取の精神に富んでいた上、「世のため人のため」を信念に農業を取り組みました。戦後の栄養不足が続く中で「みかんの栽培を通じて国民のビタミン不足の解消に貢献したい」という壮大な志を抱いていたのです。

 現在、当社は温州みかんを中心に様々な柑橘類を栽培しています。創業者である祖父の志を継いで、自主独立の精神を重んじるとともに、ほかではできないことを徹底してやるという思いを胸に秘めつつ、おいしくて安心安全なみかんをつくり、直販店などでの販売を行っています。

 ここ10年間、温暖化などの影響により温州みかんの栽培で逆風が吹く中、文旦(ぶんたん)やポンカンなど高知特有の魅力ある柑橘類の栽培にも注力してきました。さらには、他ではできないことをやるという方針から、ベルガモットの栽培に挑戦しています。これは食用というよりも香料などに用いられる希少な柑橘類です。さわやかな香りが特長で香料や食品のメーカーが近年注目しています。しかし、枝が折れやすく栽培が難しいことから、周囲からは「できるはずがない」などと言われてきました。それでも「とことんやる」という祖父の志を受け継ぎ、何とか栽培にこぎ着けました。今後はブランド化に向けた取り組みを強化したいと考えています。このほか、みかんを原料としたジュースやサイダーなど加工品の製造と販売にも取り組んでおり、高知らしい付加価値の高い作物および加工品を通じて、地域の経済を元気にしていくことが私の夢です。

【課題】当社のことを理解している人からICT活用のサポートを受けたい

 当社では新種の栽培に挑戦するとともに、加工品の開発や販路の開拓なども自前で取り組んできました。今では県外から多数のお客様が文旦などを買い求めに訪れるまでになっています。
 とは言えども、地方においては入手できる情報に限りがあり、ICT(情報通信技術)の活用が十分進まないのも事実です。進取の精神をもっと発揮したいと思いつつも、「SNSの活用が販売増にどうつながるのか?」「話題のキャッシュレスって本当にメリットがあるのか?」など、疑問点がたくさんありました。また、以前から事業に関する数字を収集、分析して経営改善に役立てたいという思いがあったものの、具体的に何をどうすべきか悩んでいました。

 それとともに、みかんの栽培や販売などさまざまな業務に日々追われる中では、そのほかのことに割ける時間には限界があります。家族で仕事の役割を分担し、協力し合って取り組んでいるものの、ICTの十分な活用までには至らず、当社の事業に理解のある人を通じてサポートしてほしいという思いがありました。

【導入】経営指導員の懇切丁寧な助言でキャッシュレス決済に取り組む決断

 ICTの情報が少ないとは言いつつ、息子が自主的に取り組んでホームページの作成や情報の発信を継続して手がけてきました。こういうことはやはり若い世代が積極的に取り組むため、要領のよさではかないません。
 加えて、地元の春野商工会の経営指導員の方が、当社の事業に即した提案を親身になって行っていただいた点も見逃せません。キャッシュレス決済に関して、「はたしてできるかな?」と不安がる私たちを力強く引っ張ってくれました。また、決済端末の導入では、箱から取り出すところから一緒になって進めていただき、わからない点は付きっきりで助言していただきました。だからこそ、私たちは「これならできそう」と自信を持つことができたのです。
 キャッシュレスによる決済について、具体的にはクレジット・電子マネー決済サービスの「Times PAY(タイムズペイ)」、次いで中小機構のアドバイザーからのアドバイスを受けられ「PayPay(ペイペイ)」という順に、いずれも春野商工会の経営指導員の方が当社の店頭販売の実情に合わせて提案してくださったものです。Airレジの導入に関しては、よろず支援コーディネーターの方からの勧めもあり、申込をした経緯があります。
 現状では、少額の決済は「PayPay」の利用が多い一方、ギフト用途でお買い上げいただいたお客様が「Times PAY」でクレジット決済される事例が増えてきました。

【効果】お遍路さんが商品の代金をキャッシュレスで支払う時代

 当社でのキャッシュレス決済はまだ限定的です。それでも始めた頃の3〜4倍と増えつつあるのを実感しています。意外だったのは、「PayPay」の案内表示をみて、「私にも試させて」とおっしゃるお客様が年齢を問わず何人も来られることです。事情をお聞きすると、「大きな店では試しずらいけど、よく知っている店なら気軽に試せるから」ということでした。そして、「PayPay」を試されると「これは簡単にできる!」と喜ばれるのです。
 地方ではキャッシュレスは普及しにくいと言われますが、実際は簡単に決済できる上、ポイント還元といったメリットがあることから、試してみたいという方は想像以上に多いのではないでしょうか。その意味では当社の店のように気軽に試せる場のあることが必要という気がします。
 「Times PAY」については、店頭でのクレジット決済に用いているほか、携帯電話の電波を利用して通信を行うことから、インターネット回線のない場所でも決済ができる点が魅力です。当社では以前から地域イベントなどで出張販売を行っており、こうした場で重宝しています。特に釣り銭の間違いが起きず、お客様にご迷惑をおかけしないのがよいです。また、領収書を手書きするのは時間と手間がかかるものですが、ボタン一つでプリントできる点も利点です。
 当地における特徴的な利用としては、四国特有のお遍路さんが当店の前を通りがかった際、みかんやジュースの購入で「PayPay」を用いて決済される点が挙げられます。最近は海外から訪れるお遍路さんも増えていて、同様に「PayPay」で支払いをされます。こうした点から時代の新たな風を感じるのです。

【展望】SNSを通じてお客様と顔の見える関係づくりを進めていく

 キャッシュレスのシステムを導入してまだ半年ということもあり、販売データの収集や分析は十分にできていません。いずれは曜日や時間帯、商品別といった切り口でデータを集めて、経営に役立てていく考えです。子どもたちはICTを難なく利用できるので、これからの活用に期待しているところです。また、農業の管理アプリである「Agrion(アグリオン)」なども試験的に使い始めており、業務の効率化に役立てていきたいです。
 ICTの活用という点では、当社はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じた商品や店舗の情報発信に早くから取り組んできました。当初、ホームページの作成から始まって、Facebook(フェイスブック)での記事の発信を続けています。主に担当しているのは私の妻で、農作業や作物の話題などを随時掲載しています。記事をご覧になった方から「いいね!」のスタンプをいただいたり、励ましのコメントをいただいたりするととうれしいものです。集中豪雨で畑が被災したときは多数のお見舞いをいただき、くじけそうな気持ちを立て直すことができました。
 これまでは生産者と消費者が結びつく機会が限られていましたが、SNSを通じてお互いに顔の見える関係を築くことができる時代となり、これからの農業を考える上で大きな力になると思います。
 今回、キャッシュレス決済に取り組んでみて、地方といえどもお客様は事業者以上に時代の変化に敏感であると学びました。時代はどんどん変わっていきます。その変化にスピーディに対応していかないと、生き残れないと思うのです。当社としては、経営の若返りや情報システム化に果敢に取り組むことで、時代の先を見越した農業に挑んでまいります。坂本龍馬を生んだ土佐の地にちなんで、ここから「農業維新」を起こしたいものです。

社名:株式会社にしごみ
代表取締役:西込浩一 氏
主な事業:柑橘の栽培および小売り
所在地:高知県高知市春野町弘岡中668
従業員数:8名(パート・アルバイトを含む)
設立:1962(昭和37)年

代表取締役 西込浩一 氏

(支援者の紹介)事業の現場をしっかりと見定めて、真に役立つ経営指導を心がけています。

春野商工会 経営指導員
今城涼香

 株式会社にしごみ様は、ベルガモット栽培への挑戦に象徴されるように、事業に対する取り組みが常に前向きであり、ICTの活用にしてもまずは試してみようという意欲をお持ちです。また、当会とは長いお付き合いがあり、会の活動に対するご理解があって、さまざまなお力添えをいただいていたことから、何とかお役に立ちたいと願っていました。
 ICTの活用に関しては、来たるべき事業承継を見すえて経営基盤をしっかり固めつつ、将来に向けた成長ビジョンを描く上での一環として取り組みたいというご意向をお持ちです。このように経営の方針が明確であることから、私としても西込社長の思いに寄り添った「伴走型支援」を心がけてきました
 今回のキャッシュレス決済に向けた提案では、取扱商品の特性をはじめ、店頭における販売の手順、誰が機器を操作されるのか、どのようなお客様が買いに来られるのかなど、現場の状況などを事前にしっかりと見定めました。そして、補助金の活用により導入コストの負担が少ないこと、誰でも扱いやすくて手間のかからないこと、来店されるお客様にとってメリットのあることなどを主眼に役立つものを選びました。
 ひとくちにICTといっても何でも提案すればよいわけではなく、経営の実態に即して真に役立つシステムやサービスを提案し、事業者様のニーズに応える取り組みが欠かせません。その点、株式会社にしごみ様では、西込社長をはじめ社員の皆様が経営課題を互いに共有しています。経営指導員としても事業の状況やニーズを把握しやすく、その結果として有効な提案ができたかと思います。
 今後はこれまで以上に事業所様に寄り添った支援を追求してまいります。ICTの活用はもちろん重要な課題ですが、デジタル化がすべてではなく、時には手書きパンフレットのようにアナログなツールも場合によっては効果的です。また、キャッシュレス決済については、まずは試してみて、うまくいけばそれでよし、もしうまくいかなければほかの方法を検討するといった柔軟な取り組みが成功の鍵かと思います。
 こうした活動を通じて、時には事業所様の背中を押す、時には手を引く、時には一緒に走るといったきめ細かい指導を大切に、事業の発展に役立ていけたら幸いです。そして、経営指導を通じて地域経済の活性化に貢献してまいりたいと願っています。

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