現場の意見を取り入れながらカスタマイズしたITツールでオフコンから脱却

  • 2020年02月14日
  • 上毛食品工業株式会社
  • 製造業
  • 販売在庫管理
  • 関東
動画を再生する

群馬県の高崎駅から車で15分ほどの畑が広がる場所に、上毛食品工業株式会社はあります。上毛(じょうもう)とは上野国、つまり群馬県を指す言葉です。元は酪農から始まった同社は現在、牛乳やヨーグルトなどの製造・販売を行っています。高崎エリアで「くりもと牛乳」と言えば小・中学校の給食で出される牛乳で、誰もが知っているこの商品を上毛食品工業が製造しています。明治時代から続く老舗企業が、使い勝手が良いようにカスタマイズした販売管理ツールで、業務の効率化を図っています。

栗本さん 「上毛食品工業は明治13(1880)年に栗本牧場として発足し、そこから140年の歴史を誇る地元に根差した企業です。私が4代目で、いろいろなことにチャレンジする精神が脈々と受け継がれてきました。現在は、大手スーパーなどのPB(プライベートブランド)を作り、高崎エリアの小中学校や病院などに牛乳やヨーグルトを届けています」

【課題】 オフコンに慣れすぎて、2度手間、3度手間が当たり前になっていた

栗本さん 「オフコン(オフィスコンピュータ)が登場した当時から導入し、製造や仕入れなどさまざまな業務の管理をいろいろと行っていました。ところが、当社の事業が製造だけではなくなり、また技術が進歩してくると、オフコンだけではにっちもさっちもいかないのを実感しました。懸念を感じ始めたのが5、6年前です。

現場での具体的な問題点を一例として挙げると、オフコンのデータを表計算ソフトに移行し、さらにそこから請求書の一部を手書きで写して仕上げるなど、2度手間、3度手間をしていたということです。また、経営面の問題点は、オフコンのシステムは月次ごとにデータをロックするため、経営戦略を練る上で見たい数字が見られない、見られるとしても紙ベースの資料です。数字をグラフ化して分析するには程遠いという状態でした」

【導入】 ITツールを自分たちの使いやすいようにカスタマイズした

栗本さん 「いろいろと解決策を模索した結果、商工会議所の紹介で専門家に相談することができました。商工会議所に相談したのが2018年の春ごろ、専門家の方に来ていただき、ヒアリングを始めたのが夏前でした。

ヒアリングを進める中で、方策としてはオフコンを使い続けるか、クラウドの販売管理ツールを使うか、パッケージ型のツールを使うのか、全くのオリジナルのシステムを作るのか、といくつかありました。私たちのこだわりたい部分や、コスト面、現場での使い勝手など、もろもろを考慮した結果、「flam」(フラム)という販売管理ツールを導入し、実際に現場で試しながらシステムをカスタマイズして、ブラッシュアップさせていくことにしました。

現場ではオフコンでずっと作業していましたから、単に、便利なITシステムを導入すれば解決するという単純な話しではなかったのです。従来の方法を変えてでも効果が期待できることは変える、反対にコストが100万円かかっているのに月に1回10程度しか使用頻度がない場合は従来通りにする、そうやって専門家の方と現場の人間が話し合ってカスタマイズを進めました。

販売管理ツールは他にもいくつかありましたが、最終的にはオリジナルでカスタマイズできる点でflamが一番との専門家の助言もあり、導入することになったのです」

【効果】 作業面でも経営面でも、効率化の期待値は大きい

栗本さん 「2019年の夏に、flamを使うようになったばかりです。半年ほどの運用期間ですので、まだまだ効果と言えるような具体的な数字は出てきていません。しかし、現場ではブラッシュアップが進んでいますので、期待は大きいものがあります。

これまで、40〜50通ほどの請求書の一部を手書きで写していたのですが、それは担当者が残業をして作業していました。提出期限が明確に決まっているものですので、終わらなければ残業するしかありませんでした。それが、手書きではなく印刷できるようになれば、残業しなくても良くなります。具体的には、数時間かかっていた作業が数分で終わるようになるでしょう。かなり効率化されます。

さらに厄介なのが、取引先に提出した請求書が間違っていた場合です。オフコンの月次データが締められた後にミスが発覚すると、紙ベースの資料を辿って間違いを探すことになります。これはかなりの労力になります。フラムの画面上ですぐに間違いがわかるようになれば、取引先に提出する前に気付けるので、現場は大助かりだと思います。

また、経営面での効果ですが、flamを導入することで通常の業務は滞りなく進められて、経営のジャッジを下すのに必要なデータが出てくるようになりました。コスト面では、オフコンと比べて月のランニングコストは5分の1に抑えられていると思います。

セキュリティ、サポート面でもflamだと安心できます。オフコンだとオフコン技術者が一人でサポートしていたので不安がありました。クラウド型であれば、どこででもメンテナンしできますし、離れたところからでもサポートしてもらえるというのは大きいです」

【展望】 事業承継のために、経営の判断基準を明確化しておきたい

栗本さん 「量販店に商品を卸しているのですが、イベントなどで販促をかけますよね。夏にやった時と冬にやった時、どう違うのか。どういうことに力を入れると、どれだけの売り上げになるのか、売り上げ・物量をしっかりと把握したいと思っています。

私も80歳に近いので、そろそろ事業承継を考えています。今までの経験から来る判断基準は私の頭の中には入っていますが、それを数字に落とし込んで、誰にでも判断できるようにしなければならないと思っています。flamの導入で経営戦略を練られるようになれば、こういう時はここを見て判断するのだよというのが伝えられて、安心して事業承継できるのではないでしょうか。今は、そのスタートラインに立っている段階です。

その他、今後は人の管理を、ITツールを駆使してやっていきたいと考えています。今の時代、個人で働いているケースが多く、働いている時間帯もバラバラだったりします。それらをパソコンなどで管理できるシステム、さらに言うと意見をパソコン経由で吸い上げられるといいかなと思っています。

上毛食品工業株式会社
所在地:群馬県高崎市矢島町160番地
従業員数:正社員10名
創業:140年目(設立1880年2月)

(支援者の紹介)誘導するのではなく、経営者とともに「伴走型の支援」を行いたい

川野さん 「基本は、経営者が譲れない、こだわる部分というのを聞き出して、それを守りつつ、効率化を実現する術は何かを見つけることです。今はこの方法だけど、異業種に目を向けるとこんな方法もあるのですよ、といろいろな視点があることを気づかせるのが、私の仕事だと思っています。

私の場合、“誘導する”ということはやりません。広い視点で見て、可能な限りの選択肢を提示して、その上で経営者がこだわりたいことを守りつつ、効率化できるITツールの導入を経営者に判断してもらうようにしています。

よく聞くのが、『うちの業界はこうだから仕方ない』という言葉。確かに、業界のセオリーを取り除くのは難しいと思いますので、意識して考えないようにして欲しいのです。ひょっとしたら……とか、そんな話しもあるのだとか、視野が広がります。

その時によく伝えるのが、『同業者を見るのをやめましょう』なんです。異業種に目を向けて、あの業界で使っているシステムをうちの業界でも使えるかな、という視点を持って欲しいんです。そうするとITツールはたくさん出てきます。

例えば、運送業者は荷物がどこにあるのかを可視化していますよね。あれを靴屋さんが使ったらどうなるのか。自分がオーダーメイドした靴が今、型取りの段階だとか進捗具合が分かるとワクワクしますよね。異業種のツールを使うことで、今までは仕方ないと諦めていたことが実現できて、差別化要素になるかもしれないのです。ITツールを探すときに、『業種』で探さずに、『機能』で探してくださいと、経営者さんには伝えています。

これからも、地域の商工会議所とともに、経営者と伴走しながら支援を続けていきたいと思います」

特定非営利活動法人 ヒューリット経営研究所 理事
川野 太

名称:特定非営利活動法人ヒューリット経営研究所
設立:平成27年1月19日
所在地:神戸市中央区磯上通六丁目1番17号7階
理事長:片山 清
構成メンバー:14名