沖さん 当社は、設立以来「品質至上主義に徹し、いかなる環境の変化にも対応しうる強固な企業文化を確立し、社会に貢献する」を経営理念に事業を展開してきました。「エネルギーを通じて美しく住みよい地球を築く」を社是としています。
元々、LPガスの減圧弁を中心に製品を供給してきました。社会ニーズに応える製品の開発が進んだことから、ガバナやバルブ類、ガスおよび水等圧力調整弁、電磁弁、バルク貯槽に至るまで製品の種類が大幅に増えています。そのため、ガスのインフラを支える使命を果たすため、製品の安定供給が大きな課題となっています。
それとともに、時代ごとの社会課題に応えるものづくりを進めているのが当社の特長です。近年は特に地震や台風などの発生に向けて減災対策に貢献できる製品の開発に注力しています。中でも、震災などで都市ガスが停止した際、LPガスから都市ガス相当のガスを供給できる「移動式ガス発生装置」は、東日本大震災などで大きく貢献しています。
【課題】社内事情に応える提案ができる事業者を見つけたい
製品の安定供給に向けて、社内の情報管理が重要であることから、当社では早くからメインフレームを用いた基幹システムを自前で構築してきました。その中では、社内に情報システムの部門を設けて、ICT人材の育成に取り組んできたのです。しかし、1990年代以降、コンピュータのダウンサイジングが進む中では、自前主義だけでは対応が難しくなったことから、外部のソフトウェアハウスなども活用して、システムの近代化を図ってきました。
その際、自社のニーズに即したSIer(システム構築会社)やソフトウェアハウスを見つけ出すのに苦労した経緯があります。これまでさまざまな会社との出会いを通じて、当社のICT事情を理解していただき、課題に応える提案を親身に行っていただけるところを探してきました。また、社内においてマニュアル化されていないノウハウを、新たなシステムにいかに反映させるかも大きな課題でした。
【導入】製造業の現場に即したシステムで一本化
2003年頃、株式会社エクスの社長に出会ったことが、今回の取り組みのきっかけとなりました。この社長は大手電機メーカーに務めた経験があり、製造業の現場に即したシステム提案を得意としています。当社の事業についても、情報システム担当者の悩みに耳を傾けつつ、的を射た提案を行っていただきました。
それ以来、生産管理をはじめ、販売、財務、給与などに関わるシステムの導入を進めてきました。現在、第3期の開発フェーズを迎えており、従来は複数社のシステムが混在していたものをエクス社の「Factory-ONE 電脳工場MF」に一本化しています。
製造業では、膨大な品目数を管理するデータベースの構築が各社ともに苦労する点です。当社においても、約2年がかりで業務の洗い出しを行い、データベースのマスターを作り上げました。また、システム開発においては、全国から担当者を集めてプロジェクトを立ち上げ、現場の声を反映したシステムを追求しました。時間はかかったものの、これが真に役立つシステムを構築していく上で重要であると考えます。
【効果】時代の先を見すえた「攻めの経営」が可能に
生産管理と販売管理の基幹システムを一本化したことで、在庫状況をリアルタイムで確認できるようになったほか、生産計画の「見える化」によって、お客様への納期回答も迅速にできるようになりました。また、品質管理の面では、品目のロット追跡が容易になったことで、トレーサビリティの観点からお客様の信頼を高めることにつながっています。このほか、システムの一本化によって、情報処理コストの削減が可能になった点も大きなメリットです。
さらには、システムの基盤が構築できたことで、時代の先を見すえた「攻めの経営」に着手できる点が見逃せません。当社ではタブレット端末のiPadを活用して、工事現場における調査報告書の作成アプリを開発しました。これによって、現場での手間を大幅に軽減できる上、お客様への報告もスピーディに行うことができるようになっています。このアプリは協力会社様にも無料で活用していただくことで、営業の効率化にもつながっており、事業の持続的成長に欠かせない戦略ツールとなっています。
【展望】RPAの導入を通じて、業務の効率化に向けていく
ガスというエネルギーインフラをこれからもしっかり支えていくため、業務品質の向上や効率化は当社にとって不可欠の課題といえます。そこでは先進のICTを積極的に活用していくことが求められています。今後の取り組みとしては、基幹システムとクラウドの融合が挙げられます。これは業務の効率化に加えて、自然災害などを想定したBCP(事業継続計画)の面からも欠かせないものです。
それとともに、日本において少子高齢化が進む中で、人材不足への対応が重要な課題となっています。そこでRPA(ロボットによる業務の自動化)に取り組む考えです。これによって、業務効率化や生産性向上を図るとともに、従業員の働き方改革に結びつくことで、働きがいのある会社としていくことが目的です。こうした取り組みが可能になったのも、システムの一本化の成果が大きいといえます。今後もICTを原動力として、社会課題の解決と持続的成長に向けて全社を挙げて取り組んでいく考えです。
社名:I・T・O(アイティオー)株式会社
HP:https://www.itokoki.co.jp/
所在地:大阪府東大阪市箱殿町10番4号
従業員数:290名(令和元年10月20日現在)
設立:1953(昭和28)年(創業:1929(昭和4)年)
高圧ガス設備、経済産業大臣認定高圧ガス設備製造事業所、大阪府知事許可特定建設業登録