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ICTの活用を通じ、未来のモノづくりを見据えた塗装工場を志向

  • 2020年01月10日
  • 株式会社黒坂塗装工業所
  • 製造業
  • 給与計算
  • 近畿

70年近くに渡り塗装技術を追求してきた株式会社黒坂塗装工業所。自動車や鉄道車両の部品をはじめ、高度な品質と耐久性が要求される分野で豊富な実績を上げてきた。小型から大型の部品まで多品種少量の塗装を得意としており、塗装の種類も用途に応じて電着から溶剤、粉体と総合的に対応できる点が強みだ。現在、更なる品質向上、生産効率化を推進するため、ロボットの導入を進める一方で、ICT(情報通信技術)を活用した間接業務の効率化、省力化に積極的に取り組んでいる。

 当社は、戦後に京都市内で塗装業として創業し、お客様のご要望に真摯に応える中で事業を育ててきました。焼付塗装から、電着、粉体などの設備を充実させながら技術を蓄積してきたのも、さまざまな業界のお客様のご要望に応えたいという一心からです。
 現在の宇治田原町に移転してきたのは、平成の時代になってからです。ここでは1999(平成11)年に自動車部品の専用ラインを設けたほか、2014(平成26)年には太陽光発電パネルの導入など、時代の要請に対応した設備と技術を追求してきました。
 現在、自動車部品をはじめとして高い耐久性が問われる分野の塗装を強みとし、事業を展開しています。大きいものでは鉄道車両や建設機械、小さいものでは機械工具やインテリア部材に至るまで、多品種少量の塗装でお客様のご要望に応えています。
 この間、塗装技術の向上と革新に注力し、金属焼付塗装におけるカチオン電着塗装や静電粉体塗装、ロボットによる溶剤塗装、さらには塗装前処理のパーカーライジング加工と、多岐にわたる技術の獲得と高度化に努めてきました。当然、環境負荷の低減にも一貫して取り組み、未来のモノづくりを見据えた塗装工場を志向しています。

【課題】勤怠管理や給与計算業務の属人化からの脱却

 多品種少量の塗装を追求する上では生産管理の徹底がきわめて重要です。そのため早い段階から自社独自の生産管理システムの構築に努めてきました。現在では、生産日報や品質管理をコンピュータシステムで管理し、業務標準化を図ると共に、生産状況をリアルタイムで把握できる体制を敷いています。一日の工程は工程部の担当者が入力し、それに応じて効率の良い作業が行える仕組みを整えているのに加え、至急の塗装依頼に対しても柔軟に対応できる体制となっています。
 一方で、勤怠管理や給与計算は、担当者が一人で、いざという時に職場が混乱するリスクを感じていた。また、パソコンへの手入力で対応していたため大変な手間で担当者が限界に達していたことから、抜本的に改革することを決意しました。

【導入】経費や請求書、給与などの業務を可能な限り自動化

 煩雑な給与計算や経理の業務を軽減するため、約3年前から導入しているのが、Money Forward(マネーフォワード)です。経費処理や請求書作成、給与計算などの業務を可能な限り自動化することを目的として採用し、新たにMoney Forwardに対応可能な会計事務所と契約しました。
 勤怠管理についても、従来はタイムカードを用いていましたが、新たに顔認証システムを導入し、出勤・退勤の正確な時刻を把握できる仕組みを作り、このデータをMoney Forwardとリンクさせ、給与計算の自動化を図りました。
 さらに、生産現場においても、働き方改革の一環として日報作成の自動化を進めるなど、現場の負担軽減を進めているところです。

【効果】一週間がかりだった給与計算がわずか半日で完了

 Money Forwardの導入で間接業務を大幅に軽減することができました。給与計算は今まで一週間近くかかっていた上、ミスの無いように計算する手間が本当に大変でしたが、導入後、ほぼ半日で作業を完了することができるようになりました。また、会計事務所とのやり取りも格段に便利になり、経理担当者の負担が大幅に減り、結果的に業務コストを削減できました。
 こうした取り組みは、単に間接業務の軽減を産むだけではなく、従業員にとって働きがいのある職場に向けて負担軽減を図っていく上で不可欠だと考えています。従来、単純作業に翻弄されていたのに対し、自動化による効率化、省力化を実現したことで、間接部門が本来行うべき従業員のための施策を講じられるようになりました。
 ICT活用に併行し、働き方改革を進めてきた結果、「京都モデル」のワークライフバランスの認定を取得したほか、全国健康保険協会の「健康推進表彰」、さらには京都府「職業生活と家庭生活の両立」における職場環境づくり部門表彰などを受賞しています。

【展望】ICT活用による効率化、省力化で働きがいのある職場へ

 かつて塗装作業の現場は若い人に敬遠されがちでした。しかし、職場環境の改善やICT活用による効率化の推進を通じて、そのイメージを変えつつあると思っています。これからも現場の声を大切にし、末永く働きがいのある職場づくりを追求していく考えです。
 これからの数年間は生産現場における一大変革が訪れると予測しています。当社では、その流れに乗り遅れることのないように、塗装加工の自動化、高度化を一層推進して参ります。すでに導入を進めているロボットによる塗装を強化し、量産品は自動化を促進する一方、精度の求められるものは熟練工の手による付加価値の高い加工を目指すというように、時代が求めるものを追求していきたいと考えています。
 特に今後は、生産現場におけるICT活用を推進していきます。たとえば、カメラセンサーとAI(人工知能システム)を組み合わせ、作業の手間を省くことを検討中です。塗装では、マスキングという色を塗らない部分を保護するためのテープを貼る作業が間違えやすい上に手間となっています。これを、タブレットのモニターにマスキング箇所を自動表示することで、作業ミスの撲滅や省力化につなげたいと考えています。こうした取り組みを加速させることで、未来のモノづくりを見据えた塗装工場を目指していくことが私の夢です。

社名:株式会社黒坂塗装工業所
HP:https://www.kurosaka.co.jp/company/

主な事業:電着・溶剤・粉体などの金属焼付塗装、パーカーライジング加工、ほか
所在地:京都府綴喜郡宇治田原町立川金井谷19番地16
従業員数:42名
設立:1965(昭和40)年(創業:1951年(昭和26))

代表取締役社長
黒坂俊之 氏