ITプラットフォームへ移動

「人こそが楓工務店の強み」を基本に、人材育成や連絡業務でICTをフル活用

  • 2020年02月14日
  • 株式会社楓工務店
  • 建設業
  • 動画・オンラインマニュアル
  • ビジネスチャット
  • テレワーク
  • 近畿

大工から一念発起で起業し、工務店を立ち上げた田尻忠義氏。創業以来の理念は、お客様の思いに寄り添った住まい造り。その根底には、大工時代に培った「現場目線で家を建てたい」「自分自身が納得できる家づくりの仕事がしたい」という強い気持ちが込められている。そのため、住まいを求めるお客様の願いに真摯に向き合い、自分の家族や親戚に接するように住まいの提案を行っている。顔の見える関係で家づくりを追求した結果、引き渡し後のお客様アンケートで「満足度平均98点」という高い評価を得ている。
お客様の思いに寄り添った住まいの追求は、日々の業務にも活きている。お客様をはじめ、社員、協力会社などとのコミュニケーションを重視。クラウドサービスを積極的に活用することで、連絡を密にして業務の品質向上を図っている。「建築はリレー」という信念のもと、住まい造りに関わる人々の思いをつないで、満足度の高い住宅が生まれている。

代表取締役 田尻忠義 氏

 当社を立ち上げる前、大工をしていました。子どもの頃、狭い団地住まいだったことから、一戸建ての家に対する憧れがありました。だからこそ、お客様にご満足いただける家を造りたいと願いつつ、取り組んできたのです。しかし、建設会社の下請けとして家を建て続けて、必ずしも大工としての私の思いを叶えることにはつながりませんでした。家造りはお客様の夢を形にすること。それが実現できないことに次第に悩み、どうすべきか考えあぐねたのです。
 「自分が納得できる家造りを追求するにはどうしたらよいか」その結論が工務店を立ち上げることだったのです。まず1997年に個人事業主として家造りを始め、2007年に法人化を果たしました。以来、数多くの建築を手がける中で、「笑顔を創造し続ける」を経営理念に事業を続けてまいりました。お客様の笑顔はもちろんのこと、社員や協力会社の方々もまた仕事を通じて笑顔になることが私の理想です。
 おかげさまで、奈良県の高の原を中心に地域社会に根ざした事業は着実に成長しています。社員の数も少しずつ増えています。そして、新卒社員を迎え入れて以来、一人として辞めていないのが当社の誇りです。これからも「人こそが楓工務店の強み」を活かして、経営理念をひたすら追求していきたいと考えています。

【課題】家造りに関わる膨大な業務での指導、連絡が大きな課題

 当社では、少数精鋭で業務をこなしていくため、身の丈に合ったICT(情報通信技術)の活用を進めています。主な課題としては、人材育成とコミュニケーションです。
 まず「人こそが楓工務店の強み」を実践する上で、当社が注力しているのが人材育成です。「人の教育なくして会社の成長なし」の考えのもと、新人社員の時代から丁寧な指導に努めています。しかし、家造りでは土地探しから資金確保、設計、建築、アフターサービスに至るまで多くの様々な業務があります。これらを一人にすべて教えるのは容易なことではありません。日々の業務に追われる中で、新たに入社してくる若い社員に業務の勘どころをどう指導すべきか、創業以来の課題でした。
 もう一つは、社内外でのコミュニケーションです。家造りはお客様や社員、協力会社との連絡業務がたいへん多く発生します。従来、電話やファクシミリ、電子メールなどを用いていましたが、家を一軒建てるのに必要な連絡業務の時間は相当な割合を占めていました。しかも、ちょっとした連絡ミスがお客様のご満足を損ないかねません。「連絡業務の効率化と確実な意思伝達」、これをどう実現すべきか模索していたのです。

【導入】チャットワークによる連絡業務の効率化と確実な意思伝達

 業務連絡では「チャットワーク」を活用しています。社内連絡でフル活用しているほか、協力会社やお客様との連絡でも重宝しています。「建築はリレー」という信念のもと、密接な連絡業務が品質の高い建築を実現し、お客様のご満足につながっていると思います。
第一の課題である人材育成。そこで当社が活用しているのは、クラウド上に保管した動画マニュアルの作成です。一つの業務について先輩社員が手本となって、作業する様子を動画で撮影しクラウド上にアップロードしています。当社がこれまでに作成した動画の数は約1000本に及びます。この資産を人材育成に活かして、新人社員をいち早く育て、仕事で成果を出せるように努めているのです。

【効果】新人社員が一日も早く現場で活躍できるように育成

 連絡業務における「チャットワーク」の活用では、連絡ミスの撲滅に役立っているほか、連絡の効率化につながっています。これによって電話連絡が大幅に減り、現場で業務に携わる社員の負担が減少しました。「チャットワーク」の良い点は、メッセージ内容が履歴として残るとともに、いわゆる「既読」がつかないこと。これによって、メッセージを受けた側が時間に余裕のある時に返信することができます。
 なお、連絡業務は「チャットワーク」がすべてというわけではなく、電子メールなども必要に応じて使い分けています。緊急連絡は「チャットワーク」をあえて使わず、電話を通じて行うなど、連絡ツールの使い分けで工夫を凝らしています。
動画マニュアルを導入したことで、新人社員は必要に応じて動画を閲覧し、業務を具体的に学習することができます。業務で大切なことは同じ失敗を繰り返さないこと。新人の場合、知らない業務を見よう見まねで取り組み、失敗することが多々あるため、そこで自信を失い、やる気をなくしかねません。これを防ぐために、動画マニュアルを通じて業務について知識を具体的に習得してもらい、一つの業務を失敗なくこなせるように努めているのです。
 人はたとえ小さなことでも正確にできるようになると自信がつきます。そして、できることが増えるに従ってやる気が増し、仕事に対する意欲が高まっていきます。この自己肯定感を新人社員に一日も早く身につけてもらうことが経営者の使命だと考えます。
 一方で、先輩社員はYouTube動画の作成において手本を演じることで、業務のあり方を再認識できる利点があります。これまで約6年間にわたって動画マニュアルを作成し、人材育成に活用してきたことで、「人こそが楓工務店の強み」に寄与してきたと自信を深めています。

【展望】新たな取り組みは、何よりも「すぐやる」を徹底

 これからの時代を担う若い社員は、クラウドサービスやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に慣れており、今後ICTの活用は加速していくはずです。しかし一方で、従来のコミュニケーションツールに馴染んでいるベテラン社員への配慮は欠かせません。その点、切り分けを大切にして、地に足のついたICT活用を進めています。
 当社では、新しいことに取り組む際は「すぐやる」を徹底しています。特に業務に用いるシステムで最初から100点満点の完成度を追い求めると、いつまで経っても実現しません。社員にはいつも「まずは100点中10点でもよいから、今すぐに始めてほしい」と伝えています。仕組みづくりは試行錯誤、トライアンドエラーの繰返しです。失敗を恐れていては挑戦できません。とにかく前進することで失敗から学び、修正を重ねてより良いものをめざしていく。「チャットワーク」や動画マニュアルの運用にしても、そうして実践的な仕組みとしてきました。
 今後も「笑顔を創造し続ける企業」として、社員にとって働きがいのある組織をめざしていきたいと考えます。それが結果的にお客様のご満足につながるはずです。特に若い社員がやりがいを感じて、がんばろうと意欲を抱いたとき、組織は無限の力を発揮します。そして、これからも創業の理念である「自分自身が納得できる家造りの仕事」をめざす中で、仕事を通じて心豊かになれる会社をめざしてまいります。

社名:株式会社楓工務店
HP:https://www.kaedekoumuten.jp/

代表取締役:田尻忠義 氏
主な事業:新築請負、住宅リフォーム・リノベーション、分譲住宅
所在地:奈良市朱雀3丁目1-7
従業員数:66名(パート・アルバイト7名を含む)
創業:1997(平成9)年 設立:2007(平成19)年2月