当社は約180年にわたって、宇治茶の製造、販売を行ってきました。近年、日本国内だけでなく、インバウンド(訪日旅行)のお客様が増える中で、宇治茶の魅力を広く伝えていくことが企業としての使命だと考えています。そのため、宇治茶の伝統を重んじて、お茶の品質向上に努める一方、時代の流れにいち早く対応して、現代のライフスタイルに即したお茶の楽しみ方を提案することを心がけています。
具体的には、お茶に関連した商品の企画開発を早くから手がけてきました。中でも、抹茶菓子は商品数が約50種類と当社の主力商品に成長しています。このほか、お茶を用いたお酒やレトルトカレー、そばといった食品類の開発も行っています。何事にも失敗を恐れることなく挑戦することで、時代に応じたお茶の価値を提案することが事業の特長となっています。
また、さまざまな商品の企画開発とともに、販路の開拓も積極的に行っています。現在、宇治本店をはじめとして国内に5店舗を展開しているほか、京都駅や新大阪駅、高速道路のサービスエリア、関西国際空港の構内などで商品を販売しています。加えて、2016年には台湾の台北に海外1号店を出店しました。
そして、さらに近年強化しているのが、インターネットによる販売です。公式オンラインショップをはじめ、「楽天市場」や「Yahoo!ショッピング」などのショッピングモールで商品を販売し、売上げは着実に伸びています。
【課題】夜中に「在庫切れメール」が届き、慌てて在庫数を調整することも
オンラインショップ販売での売上げが伸びるにつれて課題となっていたのが、商品の在庫管理の手間でした。従来、ショッピングモールごとに商品の在庫数を振り分けるという作業を行っていました。賞味期限の短い生菓子などを多数扱っていることから、在庫数の適正な管理は重要な業務です。
たとえば、100個の商品が出来上がると、「楽天市場」や「Yahoo!ショッピング」のモールごとに50個ずつと在庫を振り分ける必要があります。これがそもそも手間である上、売れ筋商品によってはすぐに在庫がなくなるため、まだ在庫の残っているショッピングモールから在庫を付け替えるといった作業が頻繁に生じていました。
時には夜中にショッピングモールから「在庫切れメール」が届き、あわてて在庫を移動するといった対応を講じました。こうした更新作業が多いときには1日30回以上に及ぶこともあり、これに時間をとられてしまい、肝心の販売促進の業務が進まない状況でした。また、更新が少しでも遅れるとインターネット上で在庫切れの状態となり、販売機会を失う結果になってしまうため、片時も気を緩めることができなかったのです。
【導入】パソコンの知識が少なくても容易に操作できるメリット
私は、前職でパソコン教室の講師やWebデザイナーの仕事を行っていたことから、当社に入社して以来、オンラインショップの運営を手がけてきました。主にメールマガジンの発行やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の管理など、販売促進の業務を担当し、ブランド価値の向上に努めてきました。
また、オンラインショップでの販売にも取り組みましたが、その際、在庫管理の効率化という課題に直面しました。そこで、さまざまな在庫管理システムの情報を集める中で、「楽天市場」の展示会にてネットショップ一元管理システムの「Robotシリーズ」を知り、この中の「zaiko Robot(ザイコロボ)」を試すことにしたのです。
このシステムを採用した理由は、さまざまなモールの在庫の一元管理ができることと、パソコンの知識に通じていなくても容易に操作できること、そして導入およびランニングコストが安価なことでした。また、導入時にはわからないことを電話で尋ね、その場で回答していただき大変助かりました。
【効果】1日30回以上に及んだ在庫の更新作業が10回以下に激減
「zaiko Robot」を導入して以来、1日30回以上に及んだ在庫の更新作業が10回以下に激減しました。在庫管理業務全体で70%相当の省力化につながっていると思います。また、以前は在庫を登録した後、モールごとに一つひとつ確認する手間がかかりましたが、今では登録した在庫が「zaiko Robot」一つで確認できることもメリットです。しかも、在庫の振り分け作業が不要になったため、在庫切れで販売機会を失うリスクが大幅に減りました。
また、更新作業が誰でも簡単に出来るようになったことも大きなメリットです。これによって、スイーツ製造担当のシェフが商品を作ってすぐに在庫に登録できるようになったのです。賞味期限の短い商品は一刻も早く販売する必要があるため、その点で「zaiko Robot」はとても重宝しています。そのほか、需要予測が可能なアラート機能がついている点も便利です。たとえば、バレンタインデー前など需要が急に増える時期には欠かせない機能といえます。
【展望】ICTの活用で、よりクリエイティブな業務を追求し、宇治茶の魅力を世界に発信
当社では、全社員が日本茶アドバイザーの資格を取得し、宇治茶に対する理解を深めつつ、お客様へ提案することに努めています。今後、こうした提案活動を積極的に展開していく上で、業務の効率化、省力化は欠かせません。単純作業はなるべくシステムに任せ、社員は商品の企画やお客様への提案などのクリエイティブな仕事に取り組むことで、これまで以上にブランド価値を高めるとともに、働きがいのある職場づくりを目指していく考えです。
社内では毎週、経営会議を行い、店舗運営や商品企画、販売促進などに関する課題について話し合っています。その中では、業務の効率化や省力化についても議題にのせて、新たなシステムの導入などを検討しています。
今後、店頭およびインターネットを通じて、宇治茶の伝統を伝えていくことが、当社の使命といえます。一方、時代の変化に対応して宇治茶の新たな価値を追求し、新商品および新事業を創出することも重要な課題です。「人生に、お茶の時間を。」というキャッチフレーズのもと、日本全国、さらには世界の人々に向けて、宇治茶の魅力を広めていきたいと思っています。
社名:株式会社伊藤久右衛門
HP:https://www.itohkyuemon.co.jp/
主な事業:製茶業 抹茶スイーツなどの製造、販売
所在地:京都府宇治市莵道荒槙19-3
従業員数:約90名
設立:1952(昭和27)年