国境を超え魅力を伝播するECサイト

弊社は半纏、作務衣、甚平のネット販売を中心に事業を運営しています。2005年に事業を開始してから徐々に国内での販路を拡大し、筑波や幕張のイベントに出店していました。半纏や浴衣を作っている関係から、国内のお祭りに関する受注がおおくあります。最近ではアメリカからはじまり、イギリス、EUへと海外への進出を始めました。強みとしては、抜染という希少価値のある技術を用いて製品を制作していることです。抜染とは綿や麻、絹の織物に色抜き用の薬剤を混ぜた糊をつけ、蒸気や薬品で地色を抜いて模様を表す技法で、国内でもこの手法を用いている会社は多くありません。1時間に千枚のTシャツにプリントができるイスラエル製の機械を所有しており、これを使ってオリジナル商品を多数製作しております。

【課題】EUへの販路拡大に立ちふさがった困難

もともとEUは柔道などの武道が盛んである国ということもあり、和のテイストを持つ製品に興味を持っている方は多くいらっしゃると考えています。そこでEUに向けたECサイトによる販売を開始しましたが、発送や税金について弊社だけで対処するには困難が多くありました。弊社ECサイトを訪問してくださる方は多数いるものの、送料や税金の高さから実際の購入に繋がりません。またEUではVAT番号というものがあります。これは企業がEUで物品やサービスの提供、現地での輸出入を行う際に取得しなければならないもので、各国ごとに取得する必要があります。商品を送る国ごとに販売額の上限を超えてVAT登録を行う場合、VAT納税者アカウントの登録費用を上回る利益を出す必要がありました。ECサイトを運営して利益を求めるのであれば、この問題を打破する必要があると感じていました。

【導入】多くの支援を受けてきたため、中小機構への相談は自然な選択だった

弊社はこれまでに何度も中小機構の支援を受け、多くの問題を解決してきました。そこで問題を乗り越えるため、平成29（2017）年にこれまで同様、中小機構の販路開拓支援についてお話を伺うことにしました。ECサイトに関する支援を受けることを期待して申し込みましたが、サイトの構築に関する紹介はもちろんのこと、実用的な様々なツールとサービスについてもご教示いただきました。専門のアドバイザーの方がいらっしゃり、月に数回の定期的な質問や相談をはじめとするコンサルティングを受けることができます。コンサルティングを受けたことにより、サイトの構築・運営に加えてVAT登録やその対策に至るまで、スムーズに進めることができたと感じています。

【効果】アドバイザーへの信頼と、ECサイトによる売上増加

アドバイザーの方の知識が豊富で深かったことや、情報をリアルタイムに提供してくださったことにより、安心して事業に取り組むことができました。販売のサポートをしていただきながら、特に富裕層の多いドイツで販路を拡大することに成功しています。最近ではSNSを通じてハッシュタグ「edoten」で感想を投稿しているお客様もいらっしゃいます。広告としての効果はもちろんですが、従業員のモチベーション向上にもつながっています。
また国内に視点を向けても、不特定多数の人と接触の可能性がある実店舗と比較して、感染防止が期待できるECサイトをご利用いただく頻度が増え、売上を下支えしています。例年、夏は全国各地で開催されるお祭り需要により、浴衣や甚平の売上増加が見込まれていました。しかし今年はコロナの感染拡大により各地の祭りも中止となりました。売上が大幅に減少する見込みでしたが、40～50代を中心とした男性が甚平を部屋着としてご利用くださるなど、例年と変わりない売上を実現しています。外出せずに買物ができる、ECサイトという販売方法があったからこそ実現できたものだと感じています。

【展望】ボーダーレスに江戸てんの魅力を伝えていく

ECサイトの最大の魅力は、世界中のお客様に製品をお届けできることです。お客様は、国内外問わず、自宅に居ながら気に入った製品を買うことができます。今後も、海外の方にも日本文化の魅力をお伝えできるよう、ボーダーレスに製品をお届けしていきたいと思います。また、もしこれから販路開拓支援を受けたいとお考えの方がいらっしゃいましたら、是非中小機構に相談していただき、一歩でも前に進んでいただきたいと思います。