海外ECモールの開設を通じて販路を拡大

1944年、園芸金物を製造する会社として創業しました。銅製如雨露（じょうろ）を中心に園芸用品を製造・販売している日本で唯一の企業です。世界の盆栽家、園芸家の方々に愛用していただいております。自社製品はもちろん、他社の製品の修理も承っております。伝統の技を受け継ぐ如雨露ですが、常にプロの園芸家さんの意見を聞いて改良を続けています。基本的はプロの園芸家さんが持っているルートを介して販売しています。ほかにも、伝統工芸のコンテストに毎年参加しており多数入選実績があり、またワークショップで空き缶を使った如雨露の作り方を教える活動もしています。

【課題】海外のお客様に、わかりやすい窓口を

弊社の製品はプロの園芸家の方の繋がりで購入されるケースが多かったので、海外のお客様だと一般の方には購入する方法が分り辛いという問題がありました。実際に当時は「購入するための窓口が分からない。」という海外からのメールや電話の問い合わせが多く、その対応に大変時間を取られていました。私は決して英語が得意な方ではありませんので、問い合わせに対して、こちら側の意図が伝わらなかったり誤解が生まれてしまったりといったこともあったと思います。電話では相手が納得してくれるまで何時間もかかることもあり、またメールだと質問と返信の繰り返しで、購入に至るまで10通以上のやり取りが必要なこともありました。オーダーメイドの如雨露が2年半待ちの状態で、制作にかける時間が奪われていました。そこで、海外顧客に対するオペレーション業務の改善を図り全体を効率化しようと思い立ちました。お客様のための分かりやすい窓口や商品説明などを設定し、海外の問い合わせ対応にかかる時間を減らしたいと考えたのです。

【導入】ストレスフリーで簡単に導入

選んだのはeBayというECモールでした。始め方はとても簡単で、写真と説明文をインターネットに上げるだけで販売ページが自動的に生成されるため、一時間程度で始めることができました。海外向けのモールなので、説明文も英語で書かなければいけなかったのですが、そこは海外、もしくは海外向けに弊社の商品を紹介している記事などから抜粋して使わせていただいたのでその点も困りませんでした。

【効果】海外顧客のオペレーション対応を効率化

弊社とお客様の間にオンライン決済サービスが入っているので、安心感もありました。またクレームが発生しても中間業者さんがお客さまと直接対応してくれますし、またその結果報告も日本語でいただけるので英語が苦手な私としてはとてもありがたいポイントでした。商品説明、決済、クレーム処理、顧客対応といった一連のオペレーション業務が一気に簡略化された印象です。もしこの記事を読んでいる方で、自分で作ったものを売りたいと思ったら、まずはECサイトの運用をやってみることをお勧めします。販路拡大に必要な安心の決済システムがありますし、お客様のコメントや要望も確認できるので今後の商品づくりにも役立つはずです。
一方でECモールにショップを開設したことで注文が予想以上に集まってしまいました。弊社の如雨露はオーダーメイドという性格上、あまりたくさんのオーダーが来てしまうと、生産～納品に支障がでてしまいます。当時もお客様の手元に届くまで2年半待ちという状態だったのですが、そこは間隔を置いてページを掲載することで注文数をコントロールするようにしました。現在ECサイトは一般のお客様がお求めになりやすい価格の物や、新作の商品を発表するための場として使っています。

【展望】ITやアプリで商品とお客様の距離を近づけていく

購入を希望されるお客様の中には、中間の業者さんを飛ばして直接買いたいという方もいらっしゃいます。ECサイトだと間にバイヤーが入っていると勘違いしたり、ショップ運用の手数料分、料金が高くなるという事が気になるようです。そのため、今後はSNSなどで直接購入できるシステム、もしくは外部のシステムを介さずにサイト内部で商品閲覧～購入まで完結できるサイトを作って頂きたいという希望があります。他にもアプリ開発にも興味があります。例えば、如雨露の水の出方のクオリティを測るアプリ、植物を選ぶと正しい水のやり方が分かるアプリ、水やり忘れアラートアプリ等。ITを使うとアイデアと可能性が拡がります。今後は、お客様が用途に合わせて如雨露を選びやすくなるような、もっと如雨露を身近に感じて頂けるようなITツールを作りたいと考えています。