【課題】「POSレジ」を導入するも、課題を解決することはできなかった
製造から販売まで手探りで始めたため、当初は人件費が売上の半分以上を占めており、2年ほどは赤字でした。数ある業務の中でも、特に会計業務が課題でした。ベーグルの平均単価は230円から240円なので、細かいお釣りが出ます。このお釣りを数えて手渡す手間やその後の管理が大変だったのです。何とかしようといろいろ試しました。最初は市販流通しているPOSレジを導入。それまで使っていた中古のレジスタと比べると、注文の入力や会計管理はできるようになりましたが、肝心の釣銭に関しては「自動釣銭機」との連携ができず、課題の解決には至りませんでした。
【導入】自動釣銭機と連携可能な「MAIDO POS」の導入を決めた
「自動釣銭機」と連携のできるアプリはないかとインターネットで調べて見つけたのが、飲食店専用POSレジシステム「MAIDO POS」でした。手持ちのパソコンに無料でダウンロードして利用することができます。周辺機器と連動することで、来店時間や購入単価などの顧客管理ができることや在庫状況などの経理や会計データが取れること、またスタッフの勤怠管理も可能です。最初の2ヶ月は試用期間で無料ですし、その後も月額使用料は1,980円。本体機器が約100万円しましたが、月割り返済ができます。さらに、国のIT導入補助金も活用することができると聞いたので、2017年5月に導入を決めました。使い方がわからなければ電話やホームページで気軽に質問することが可能なのも魅力でしたね。
【効果】生産性アップだけでなく、データの見える化による売上アップも
自動釣銭機の導入により、スタッフの心的疲労感が減り、業務の生産性が上がり、さらには閉店後のレジ締め作業もなくなりました。レジ締めは毎日30分かかっていたので、時給1000円として1日500円。1ヶ月で15000円ですから1年で18万円削減できたことになります。これなら、機材導入にかかった約100万円を5年程度でペイさせることができます。また、店舗運営の戦略も立てられるようになりました。時間帯別売上、人件費、仕入れ値などの販売コストを全部見られるようになったのです。スタッフからLINEで送られてきた情報を、いつどこででも確認することができる上、データはスタッフも自由に見ることが可能なので、誰でも「どの時間にどれだけ売れて、目標まであといくらなのか」がわかります。日替わりや季節限定のアイテム、イベントなどの販売効果も、来店客数、来店時間、来店回数などと連動させれば一目瞭然です。データの見える化はスタッフのモチベーションアップに役立っています。売上についても、最近ようやく前年実績を上回ってきたな、と手応えを感じています。
【展望】戦略を持ってITを導入することで目標を達成する
今後はベーグル店の拠点を作り、各拠点にはうちの建築部門がつくったカフェを併設したいですね。さらに、うちが建設した保育園や幼稚園に働きかけて親子ベーグル教室を開くなど、日本一のベーグル屋を目指しています。私は、中小零細企業は建築業などひとつの業態で大きくなることを目指す必要はないと考えています。建築業、家具製造業、ベーグル製造業などの縦軸ではなく、それぞれの事業を横串でつなげることで、強いビジネスモデルを構築することができる、というのが持論です。その横串が、弊社の場合は「子供をわくわくさせること」。やりたいことは山ほどあります。ITツールをうまく活用して実現していきたいですね。データは得ることではなく、使いこなすことが重要なのです。戦略を持っていなければ、何の意味もありません。逆に言えば、戦略を持っている飲食店経営者であれば、IT関連機器の導入が非常に効果的だと考えています。
ARIGATO COMPANY(アリガトウ・カンパニー) 福ベーグル
HP:https://fukubagel.jp/index.php
従業員数:27人
設立:2011年4月5日
代表:福島直