企業理念は「冷熱に関するお困りごとを解決し社会貢献をする」。『売り手よし』『買い手よし』『世間よし』の三方よしの考えを重視しています。2015年12月に起業し、2019年の7月までは1人で頑張っていました。環境試験装置、産業用冷熱機器の修理改造から始め、現在は2人体制で、制作製造とIoTを活用して保守保全を行っています。「見る」のではなく「観る」を心がけており、設計した人の意図まで読み取ることを意識しています。
【課題】事後保全では機会損失につながってしまう
この業界では、事後保全といって壊れてから修理をするということが当たり前でした。しかし、それでは突然壊れてしまうことになり、お客様の収益の機会損失の原因となってしまいます。そこで、業務用冷熱機器そのものの機能的なエビデンスを収集し、故障の予兆を事前に察知することはできないか、と考えました。現象は結果であり、異常を起こしている根本の部分を理解する必要があり、熱物理現象から解決できるようにするためには、ログデータの取得が欠かせないという結論にいたりました。
【導入】独自システムで事後保全から予知保全へ
事前に保全対応を行うことができればトラブルの予知ができ、緊急対応をする必要がなくなるので作業者の負担は減りますし、経営者も助かります。そこで、独自に「冷凍機予知保全システム」を開発しました。これを使えば、温度、電源電流、フロンガスの圧力の状態をセンサーで測定してLTEサーバへデータを送り、機器の状態の管理を携帯端末から行うことができます。冷熱機器を所有・使用する事業所にとって、収益の機会損失を抑制し、点検負担を軽減する効果があります。新たなサービスとして提供するために、商工会や連合会の支援を受けて2018年3月に「IoT・ICTを活用した各種冷熱機器の予知保全システム開発と遠隔監視サービスの提供」をテーマとした経営革新計画の承認を取得しました。経営革新計画は、顧問税理士が講師をしている経営革新塾に参加した際に知り、申請することにしました。ものづくり補助金や経営革新計画の申請は大変ですが、事業計画書を書くことは、数年先のことまで考えるいい機会になりました。
【効果】異常の早期発見を実現
IoT端末による診断判定では、温度・冷媒圧力・圧縮機電流などのデータに冷媒物理特性に照らし合わせた「しきい値」を設定し、早期に機器機能の異常を発見できるようになりました。また、圧縮機や制御回路の動作に影響を与える電圧・音・振動要素についてもデータを収集することができました。加えて、フロン排出抑制法で課せられている簡易点検のために導入したICTから収集されエビデンスも活用し、これらの蓄積データを活用することで故障診断が容易になりました。遠隔監視によって現場作業前にデータ分析を行うことで誤診断を減らし、作業の効率化も達成しました。その結果、今では機器装置メーカーが契約する上流のメーカーへこのシステムを提案してくれて、さらなる受注につながっています。
【展望】コト売り時代、共創社会
今後は、複数のエラーを検知した際に何のエラーなのか判定できるようにする予定です。グラフの傾きをAIなどで予測して検知できるようにしたいですね。経営者からすると、故障を事前に予知することができれば、いつ修理費が必要なのかわかり資金の工面がしやすくなります。ただし、IoTで得たデータの良し悪しを判断できる人がいることが前提です。データはただの数字でしかないので、それを扱う人材が重要なのです。これからは競争社会ではなく、共創社会または協創社会、できる人と共に創造していく社会です。イノベーションを起こすためにIoTやAIを活用し、共創していく。時代は“モノ売り”ではなく、“コト売り”なのです。どんなことができるのか、が問われています。得意な人、詳しい人とつながりながら、協力していくことが欠かせません。
企業名:株式会社 新冷熱技研
HP:https://shin-reinetsu.com/
所在地:静岡県浜松市浜北区新都田1丁目3-3-1
静岡県浜松工業技術支援センター内
浜松都田インキュベートセンター A-2
従業員数:2名
設立日:2015年12月7日
主な事業:環境試験装置、産業冷熱機器の修理・改造、保守・保全、制作・製造