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特集

第7回 ステップ6 フォローアップ ~旧版サポートブックをいま紐解く

  • 2022年8月15日
  • 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 吉田明弘
  • IT導入支援
  • サポートブック

サポートブックこと『支援者のためのビジネス用アプリ導入支援サポートブック』をご存知でしょうか。支援者の方々が、事業者のIT導入支援を実施するにあたり、その進め方の基本的な内容やポイントをおさえた手引書として、IT導入の支援現場でご活用いただくことを目的として作成した冊子です。
連載最終回となる今回は、ビジネス用アプリにより実際に課題解決に取り組む小規模事業者をフォローアップする、ステップ6「フォローアップ」について、旧版サポートブックの内容を紹介します。

ビジネス用アプリ導入支援の6ステップ

ビジネス用アプリ導入支援の6ステップ

ステップ6「フォローアップ」

ステップ6「フォローアップ」

成果を出すのは導入後の活動

ビジネス用アプリ導入支援の最後のステップとなるステップ6では、ビジネス用アプリにより課題解決に取り組む小規模事業者を支援者がフォローアップします。
ビジネス用アプリに限らないですが、何かしら仕組みを導入したときには、導入後にどうするかということが、成果を出すために非常に重要です。しかし、補助金等が典型的ですが、ビジネス用アプリ導入の支援は、導入時に偏ってしまうのが現状です。
ITに不慣れな事業者であれば、ITに関する様々な問題にも多く直面するでしょうが、運用時に問題になるのはITだけに関係することではありません。下図にビジネス用アプリを導入した後に、どのような活動が期待されるかということを簡単に表しています。ご覧頂くと分かるように、運用の部分というのは、言ってしまえば事業活動そのものなので、ITの知識というよりはむしろ経営の知識が必要になります。そのためITだけの専門家では有効な支援ができません。経営の専門家として、できればずっとそばにいる地域の支援機関などが長くサポートしていくことが期待されます。

ビジネス用アプリ導入後の活動例
ビジネス用アプリ導入後の活動例

ITに関するよくある質問と対応方針

前述のように、ITの専門家ではなくても、経営支援の専門家として、支援者から質問などを受けることも多くなります。例えば、下図のような質問が考えられますので、事前に事業者に対して図の対応方針欄に記載されている項目についての確認を促しておくと、効率的な導入につながります。

【図表2-16】質問と対応方針
【図表2-16】質問と対応方針

導入効果を確認する

事業者それぞれに異なる経営戦略を持っているはずなので、個々の支援は多様なものになりますが、全般的に必要になることもあります。ここからは、ビジネス用アプリを運用している小規模事業者に対して、一般的に必要となるフォローアップを、ステップ2で利用したツールを軸にして示していきます。

導入効果を確認する~現状確認シート(簡易版)

日々の業務に追われる小規模事業者は、導入したビジネス用アプリが実際に課題解決に寄与しているかを評価できていないことがあります。または、何かしらの問題が発生して、成果につながる運用ができないままに諦めてしまうこともあります。
そのため、支援者が、小規模事業者に自己点検を促したり、訪問して状況を確認したりといったフォローアップを行うことも重要です。その際には、ステップ2で作成した現状確認シート(下図)を活用して、導入の目的が何だったのか、課題は解消されているのかを確認しましょう。

【図表2-4】現状確認シート(簡易版)記載例

導入効果を確認する~現状確認シート(詳細版)

現状確認シートには簡易版と詳細版がありますが、詳細版を使っている場合には、下図のように「あるべき業務の状態」を記載していると思います。この「あるべき姿」に近づいていくことが、ビジネス用アプリを導入する目的であるはずなので、記載内容と現状を比べてどこまで来ているか、前進しているかを、事業者と一緒に確認しましょう。

【図表2-7】現状確認シート(詳細版)の記載例
【図表2-7】現状確認シート(詳細版)の記載例

導入効果を確認する~業務流れ図

業務流れ図を作成した場合は、導入前と現在とで変化した点を確認しましょう。このとき、負担感を数値で表した部分に着目して、大きな負担を感じられていたところが改善しているかどうかも見ていきましょう。事業者が日々の業務に忙殺されていると、現状の認識が曖昧になっていることもありますので、そのようなときには、できるだけ現場を再確認するように促すことも大切です。
また、業務の進め方が以前と変わったことで、新たな業務が発生することもあります。その新業務の負担感が必要以上に大きくなっていないか、ということにも注意しましょう。

ステップ2で作成した業務流れ図
ステップ2で作成した業務流れ図

まとめ

ビジネス用アプリや、もっと大掛かりなものも含めたIT導入、そしてIT以外にも世の中でトレンドとなる経営施策(例えば、成果主義、ジョブ型雇用など)においては、導入という手段が目的化しやすい傾向があります。それぞれの事業者が抱える経営課題や、足元の業務の進め方を把握した上で、アナログとデジタルを組み合わせた課題解決の中のひとつの要素として、ビジネス用アプリの導入を捉えてもらえるように、支援者は冷静なコミュニケーションを事業者としていきましょう。
そう考えると、ビジネス用アプリ導入後のフォローアップは当たり前になると思いますし、ITの専門家でないからフォローができないという発想にもならないと思います。是非とも、積極的に支援を進めていただきたいです。

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