第6回 ステップ5 ビジネス用アプリの提示 ~旧版サポートブックをいま紐解く
- 2022年7月13日
- 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 吉田明弘
- IT導入支援
- サポートブック

サポートブックこと『支援者のためのビジネス用アプリ導入支援サポートブック』をご存知でしょうか。支援者の方々が、事業者のIT導入支援を実施するにあたり、その進め方の基本的な内容やポイントをおさえた手引書として、IT導入の支援現場でご活用いただくことを目的として作成した冊子です。
連載第6回では、ビジネス用アプリの導入実現性を具体的に確かめる、ステップ5「ビジネス用アプリの提示」について、旧版サポートブックの内容を紹介します。
ビジネス用アプリ導入支援の6ステップ

ステップ5「ビジネス用アプリの提示」

ビジネス用アプリの具体的な検討
ステップ5では、支援者から事業者に対してビジネス用アプリの候補を提示して、導入に向けたより具体的な検討を進めます。ここで言う具体的な検討とは、主に以下の4つの項目の確認・検討を指しています。
1. 使いやすさ・機能
2. 導入時の負荷
3. 終了時のデータ取扱い
4. 導入スケジュール
それぞれについて、これから説明していきます。
事業者にアプリを試用してもらう
どれだけ情報を集めたとしても、そこから理解できることには限りがあります。百聞は一見にしかず、ということで、実際に使ってみないと分からないことも多いでしょう。クラウドで提供されるビジネス用アプリには、無料で試用ができるものが多くありますので、事業者には必ず試用してもらいましょう。その上で、必要な機能が、事業者の環境で本当に使えるのか、使い勝手が悪くはないか、といったことを確認しましょう。
情報登録の負荷を確認する
ITという言葉がInformation Technologyの略であり、情報技術という日本語に訳されることから考えても、ビジネス用アプリが「情報≒データ」を扱うのは当然です。そして、データを扱うためにはデータをアプリに入力する必要があります。アプリによって扱うデータは異なりますが、アプリを使い始めるにあたっては、例えば下図のようなデータの入力をする必要があります。

特に、ステップ3でIT利用レベルを確認した際に、あまり利用が進んでいなかった事業者の場合には、事業上のデータがデジタル化されていないことも多くあります。ビジネス用アプリを使い始めるために、データを手入力する必要があると、大きな負担が発生します。外部にデータ入力を委託することも選択肢に入れつつ、現実的な負担の範囲で導入が可能かを検討しましょう。
他システムにデータを移行できるかを確認する
当サポートブックや「ここからアプリ」では、ビジネス用アプリとして、主にクラウドサービスをオススメしています。その理由の一つが、使った分だけ支払うサブスクリプション型の料金体系で提供されることが多く、導入してみてダメだったら簡単に乗り換えられるためです。
ただし、ここでもう1点、注意しなければならないことがあります。それがデータの取扱いです。ビジネス用アプリを利用していくと、アプリの中にデータが蓄積されますが、そのアプリの利用を終了するときに、蓄積されたデータを引き上げることができなければ困ってしまいます。「エクスポート機能」という言葉で表されることが多いですが、データをダウンロードしたり他システムに移行したりする方法として、何が用意されているのかを確認するようにしてください。試用する中で確認できることもありますが、提供事業者(ベンダー)に問い合わせた方が早いこともあります。
導入計画を立てる
最後に重要となるのが、導入スケジュールの作成です。アプリ提供事業者によっては、初期導入サポートに期間が設定されているものや、無料で使える期間が短いものもあります。また、使い始めるためのデータ入力に時間を要するものもありますし、事業者のIT利用レベルによって操作方法の習得に時間がかかる場合もあります。担当者の業務が忙しくなる時期には、アプリ導入準備に時間が避けなくなるというような事情もあるでしょう。
こうした諸事情を予め見通してスケジュールを立てておかないと、サポートが必要な時期に受けられなくなるなどして、導入できなくなってしまうことが起こり得ます。下図のように、大まかなものであっても必ずスケジュールを確認するようにしましょう。

まとめ
実際にどのビジネス用アプリを導入するのか選ぶことは、ひとつの経営判断であり、最終的には事業者自らが選ばなければなりません。その判断を支援するために、支援者は事業者に対して、どういったことを考慮するといいのか、前述のようなことを伝えましょう。ただし、あまり難しく考えすぎないようにも気をつけてください。当サポートブックや「ここからアプリ」で、ビジネス用アプリとしてサブスクリプション型のクラウドサービスを推奨しているのは、ダメだったら止めたり乗り換えたりしやすいからです。できるだけ、素早く小さく失敗できる形での導入をオススメできるようにしましょう。
次回はビジネス用アプリ導入支援の最終ステップの紹介となりますが、導入後のフォローについて確認していきます。
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