第4回 ステップ3 現状のIT利用状況の見える化 ~旧版サポートブックをいま紐解く
- 2022年6月13日
- 中小機構 中小企業アドバイザー(経営支援) 吉田明弘
- IT導入支援
- サポートブック

サポートブックこと『支援者のためのビジネス用アプリ導入支援サポートブック』をご存知でしょうか。支援者の方々が、事業者のIT導入支援を実施するにあたり、その進め方の基本的な内容やポイントをおさえた手引書として、IT導入の支援現場でご活用いただくことを目的として作成した冊子です。
連載第4回では、小規模事業者のIT利用レベルを確認する、ステップ3「現状のIT利用状況の見える化」について、旧版サポートブックの内容を紹介します。
ビジネス用アプリ導入支援の6ステップ

ステップ3「現状のIT利用状況の見える化」

アプリ活用には適切な環境と適切に使える人が必要
解決すべき経営課題を見つけて、現状の業務をどのように変化させていくかが見えてきたとしましょう。そして、その変化を実現するための機能をもったビジネス用アプリも導入したとします。しかし、ビジネス用アプリは、ユーザー登録をして利用料を払ったというだけでは、望む変化をもたらしてくれません。
当たり前ですが、ビジネス用アプリが動作するための環境が整っている必要がありますし、またそこで一緒に働く人が上手く使いこなす必要があります。
例えば、環境面では、PCやタブレットといったビジネス用アプリを使うためのハードウェアが必要ですし、業務を実施する場所からインターネットに接続できることも必要でしょう。使う人という面では、ビジネス用アプリを操作するスキルはもちろん、長期にわたって運用していくためには、ハードウェアやネットワークも含めた環境構築や設定のスキルもあった方が良いです。
導入にあたって必要なモノゴトを認識する
事業者が、これらの必要なモノゴトを、全てあらかじめ揃えていれば問題ありませんが、もしどれか欠けるものがあったならば、何らか補わなければいけません。その場合には、設備投資や人材の採用・育成などに新たなコストが発生する可能性があります。
もちろん、導入が簡単だからこそ、ビジネス用アプリをオススメしているので、新たなコストといっても、それほど大きなものにはならないことが多いでしょう。しかし、場合によっては大きなコストが必要になることもあります。そのため、ビジネス用アプリの選定をする前に、事業者のIT利活用に関する現状がどうなのかを確認しておきましょう。
システム同士の連携も考えたい
ステップ2の業務流れ図のところでも見てきたように、事業を運営する中では、いろいろな業務がつながり合っています。しかし、必ずしも1つのシステムで事業全体をまるごと取り扱うことができるとは限りません。むしろ、業務ごとに複数のシステムを使い分けて運営していくことが多くなるでしょう。このとき、システム同士の連携が重要になります。
例えば、見積書を作成するシステムと、請求書を作成するシステムが別のものだったと仮定しましょう。そのとき、顧客情報を2つのシステムに別々に入力するのは手間になりますし、2つのシステムで情報のズレが発生して、見積書では顧客の住所が新しくなっていたのに、請求書では古い住所のままだった、ということも起きるかもしれません。住所くらいならまだいいかもしれませんが、入力ミスで意図せず金額が変わってしまったら問題があります。
ここで、見積書を作成するシステムと、請求書を作成するシステムが連携して、データを共有できていたらどうでしょうか。成約された見積もりのデータから、そのまま請求書を作成することができて、入力の手間が減りますし、ミスが生じません。

このように前の業務と後の業務で、異なるシステムを使っていても、前の業務の結果を引き継げるような連携ができると有益です。新しくアプリの導入を考える際には、既存のシステムも含めて、システム同士の連携が可能かどうかを確認しましょう。そのためには、当然ですが、いま既に使っているシステムを把握しておく必要があります。
IT状況調査票
上述のように、アプリの活用を検討するにあたっては、環境、従業員のITスキル、既に利用しているアプリなどを確認しておくと良いです。その際には、以下に示す「IT状況調査票」を利用すると、比較的スムーズにIT利用状況を確認できます。

IT状況調査票の各項目は旧版サポートブックで以下のように説明されています。
(1) PC等の使用機器
現在利用している、PCやスマートフォン等の機器を整理します。ビジネス用アプリの中には、利用できるOSが限られる場合もあるため、併せてOSの確認を行います。
(2) PC等操作レベル別人数割合
経営者・従業員を含む社内の人間のPC操作レベル別人数割合を確認します。確認するにあたっては、ビジネス用アプリ導入に対応できる可能性のある担当者と、導入の際の担当者を、事前に把握することで現実的に導入可能かどうかを把握することが重要です。
また、ビジネス用アプリの利用者数は、利用料金に関わってくるため、見積取得の際にも、ビジネス用アプリを使う担当者を把握することが重要です。
ビジネス用アプリによっては、データの登録作業など、基礎的なITスキルを必要とするものや、操作が難解なものがあります。そのため、社内での担当者となれる人材をリストアップすることで、ビジネス用アプリを自社で継続的に運用できる体制がとれるか判断することができます。また、リストアップした担当者の業務の繁閑が、ビジネス用アプリの導入や運用に大きく影響することもあるため、担当者名を明らかにすることで、後に行うスケジュール作成の参考にすることができます。
(3) ビジネス用アプリを導入する端末のネットワーク接続状況
ネットワーク接続状況を確認します。クラウド型のアプリケーションの場合、インターネット接続が必要となるので、端末がネットワーク接続されているか確認が必要です。
(4) IT利用部門・業務および利用している情報システム
既に利用しているビジネス用アプリ(オフィスソフト等を含む)を整理します。ビジネス用アプリの中には、他のソフトと連携が可能なものもあるため、導入を検討している業務と関係があるビジネス用アプリに関しては、可能な限り記載をします。
(P.15, 16)
まとめ
このように、ビジネス用アプリの活用に必要となり得る要素の現状を確認することで、事業者が実際にビジネス用アプリを導入しようとしたときに、ハードルとなるモノゴトがないかを事前に把握することができます。
また、次のステップ4では、いよいよ有効なビジネス用アプリを探すことになります。その際には、このステップ3で得られた情報が、現状の環境で使えるアプリは何なのか、またはアプリに合わせて何を補う必要があるのか、といったアプリ選びのベースとなります。是非、これらの項目を確認した上で、次のステップ4に進んでください。
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