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特集

Web3.0の登場と期待される今後のインターネット世界

  • 2022年2月22日
  • 中小機構 中小企業支援アドバイザー 眞本崇之
  • Web3.0
Web3.0の登場と期待される今後のインターネット世界のサムネイル画像

インターネットの世界が大きく変わろうとしています。Web3.0(Web3)という概念です。
今回の記事では、インターネットの歴史の変遷から、今注目されているWeb3.0の概要と、変わるインターネット世界の様相を説明していきます。

インターネットの変遷の歴史

インターネットの歴史は、1.0、2.0、そして今回の3.0と分割されて表現されています。まずはWeb1.0、Web2.0の説明をした上で、注目されているWeb3.0の違いを説明します。

Web1.0

インターネット黎明期を経て普及し出した1990年頃から2004年頃、この時代は、まだダイヤルアップ接続、ISDN、ADSLのようなインターネット回線の進化の途中でもありました。一般家庭にパソコンが普及し、また携帯電話の小型化や高性能化により気軽にインターネットにアクセスできるようになりました。
今でこそ簡単に(自分で、無料で、わずか数分で)ウェブサイトやECサイトが作れてしまうようなサービスがありますが、当時はウェブサイトを制作する技術も限られ、制作金額も高く、発信者自体が限られていました。
そのため、インターネット上に企業がウェブサイトを公開して情報を『一方的』に発信し、利用者は見る・読むだけだった時代がWeb1.0と表現されています。

一方的な発信のイメージ画像

『一方的』な発信をしているホームページは、現在でももちろん健在です。

Web2.0

Web2.0を簡潔に説明すると、『双方向コミュニケーション』です。
見るだけだったWeb1.0のインターネットへの関わりから、SNSを代表に利用者も気軽に発信、双方向コミュニケーションが実現できるようになったソーシャルな世界「Web2.0」に変貌しました。

双方向コミュニケーションのイメージ画像

その背景として、技術進歩が大きくありました。

まず、消費者の視点で考えてみましょう。
スマートフォンが登場・普及し、便利なアプリも爆発的に増えています。インターネットにも常時接続できる環境が整備されてきました。
人々はスマートフォンを常に携帯し、いつでも、どこでも、容易に情報に触れられるようになりました。そして、SNSを筆頭に、利用者からも気軽に写真や動画が発信でき、お気に入りの情報がシェアされるようになりました。これによって企業−顧客間だけでなく、消費者同士でのコミュニケーションも促進されています。

次に企業の視点で考えるとどうでしょうか。
IT投資に莫大な予算をかけられない中小企業であっても、何百万円、何千万円とかかるソフトウェアの独自開発をしなくても便利なソフトウェアを安価で利用できるようになったり、サーバーなどの大規模な設備投資をせずにクラウド環境が利用できたり、連携できるサービスも増えました。また、昨今では、使いたい時に一定期間だけ月額や年額などで利用料を支払うサブスクリプションも普及しています。
こうした技術進歩やサービスの普及によって、中小企業・小規模事業者でも手軽にIT導入ができるようになり、業務効率化や生産性向上が加速し始めています。

このように私たちの日常生活になくてはならないものになった現在のインターネット世界がWeb2.0です。

Web2.0の問題点

このような便利なインターネットの世界にも、いくつかの問題があると言われています。
その代表例が、プライバシーとセキュリティです。

私たちが普段使用しているサービスやアプリは、巨大テック企業(代表的な例を挙げると、ネット検索をする場合にはGoogle、SNSではfacebook、Instagram、twitter、LINE、端末ではiPhone、サーバーではAmazon AWSのような特定の企業・プラットフォーム)が管理しています。こうした企業の多くは、利用者に無料でサービスを提供している代わりに、たくさんの利用者情報が集まっており、利用者分析により有効な広告配信プラットフォームを提供できるようになるなどのメリットを得ています。

企業が無料でサービスを提供している代わりにたくさんの利用者情報が集まっていることのイメージ画像

しかし、プライバシーの観点では、例えば、「一度検索した商品が、別のサイトにて広告として何回も表示されるようになった」といった経験をされたことがあるかと思います。特にビッグデータを簡単に分析できてしまうデータ処理能力の上がったコンピュータや高性能AIが機能するようになり、利用者の個人情報、ネット上の嗜好や行動履歴が集約されています。

セキュリティに関しては、上記のような巨大テック企業のサービスがいったん停止してしまった場合には、様々な企業のサービスが動かなくなってしまう、という事態が発生しうるのです。こうした事態は、利用者の多いサービスであればあるほど、全世界的に企業や利用者への影響を及ぼす社会問題になります。
このように、私たちの日々の生活に関わる基盤が特定の企業に集約されている状態が問題視されており、こうした問題の解決を目指しているのがWeb3.0となっています。

Web3.0関連キーワード

Web3.0の概要を説明する前に、まずは知っておくべきキーワードをいくつかご紹介します。

ブロックチェーン

ブロックと呼ばれるデータの塊をチェーンのようにつなぎ合わせた状態のデータを、特定企業に依存しない世界中に分散されたコンピュータで保管・監視しあうため、(1)情報を改ざんすることができない、(2)一部で故障やエラーが起きてもシステム全体が正常に動き続けることができる技術がブロックチェーンです。

例えば、国産和牛が生産者から解体業者、1次加工業者、2次加工業者、小売店と流通する際にどこかで国産和牛が不正に外国産に切り替わっていた(下図の取引データ4が4’へと不正に書き換えられた)ような例を考えてみましょう。

ブロックチェーンのイメージ画像

特定の企業が取引履歴を管理していた場合、内部で取引データ4が4’に不正に書き換えられたとしても、外部からは誰も気が付きません。
一方で、ブロックチェーンの仕組みを利用すると、チェーンで繋がった世界中の取引履歴を確認することが可能となり、4から4’に変更されたチェーンだけが異なるため、国産和牛が外国産に切り替わったことが顕在化します。この場合、4’のデータを無効にすることで、不正ができない仕組みを構築します。

現在のシステムの多くは、特定企業が保有し集中的に管理するシステムとなっています。
ブロックチェーン技術を使えば、特定企業が集中的に管理するシステムに依存することなく、世界中に分散された、共通の透明性あるシステムを構築できるようになります。

ブロックチェーン技術を用いて構築された透明性あるシステムのイメージ画像

ブロックチェーン技術を用いたアプリケーションとして、dApps(Decentralized Applicationsの略、分散型アプリ)と呼ばれる次世代ソフトウェアが用いられています。

暗号資産(仮想通貨)

ビットコインに代表される暗号資産はブロックチェーンの仕組みで動くデジタル資産です。

デジタル資産と似た通貨で、すでに多くの人が利用している「電子マネー」があります。
電子マネーと暗号資産の違いは、特定の管理者がいるかいないか、ということです。
電子マネーの場合は、電子マネー発行企業が、日本円の価値1円と同等の価値を電子マネーの1円として発行しています。
もし、電子マネー発行企業のシステムにトラブル等があると、お金が消えてしまうことも想定されます。また、仮に記録が改ざんされてしまっても外部からは見えません。

一方で、暗号資産の場合は、(1)ブロックチェーンでも説明したように管理主体がなく、特定の通貨(日本円やアメリカドルなど)と等価ではありません。そのため、需給に応じて、価値が変動しますので、投資・投機対象としてのイメージを持たれています。

中南米エルサルバドルでは、2001年に自国通貨(通貨名:コロン)を放棄し、アメリカドルを法定通貨としていましたが、2021年にはビットコインも法定通貨として採用した最初の国として、話題になりました。
現状、日本ではこうした暗号資産で決済を行えるお店はまだまだ少ない状況です。

Web3.0が果たす役割

Web3.0は簡潔にいうと、「特定企業に独占された権力を個人に分散させる」となります。

これまでに多くの人が利用する便利なサービスが普及してきた反面、特定企業のルールのもとでは、利用する消費者や企業は活動への制限を窮屈に思うことがあります。
例えば、セキュリティのリスクや、特定企業に個人情報が集約されることによるプライバシーの問題が指摘されるようになっています。
これらの指摘事項に対して、ブロックチェーン技術によるセキュリティ向上、個人情報データの自己管理できるように解決するのが「Web3.0」と言われています。

その他に、web3.0の世界になると何ができるようになるのかをまとめてみます。

個人が協同して運営される組織形態

企業が発信主体だったWeb1.0、個人がSNSなどのプラットフォームで発信できるようになったWeb2.0、そして、Web3.0で実現する個人がプラットフォームを作って活動する組織:DAO(Decentralized Autonomous Organization:自律分散型組織)が活発に動くようになります。

DAOのイメージ画像

DAOでは、組織に自由に参加できるようになります。
会社でいう社長のような管理者がいない状況で、誰かの許可を得ることなく(分散)、参加者自身のスキル、人脈などのリソースを使って、一つの目標に向かってメンバー同士が調和を取り協調しながら活動し(自律)ゴールを目指していく。結果として、経済的な利益や精神的な満足を得られるような組織となります。

また、DAOでは、自由に価値の交換を行うことのできる「トークン」を発行しメンバーに配布します。組織運営上で必要な決定は「トークン」を用いて組織全体で投票を行い決定します。
DAOが動いている組織で最も有名なトークンが上記暗号資産で紹介した「ビットコイン」です。世界中の”マイナー”と呼ばれるメンバーの貢献により、ビットコイン取引が維持され、メンバーには報酬として「トークン」となるビットコインが発行されています。
ビットコインのように、トークンの価値が上昇することで、メンバーに経済的利益が配分されています。

中央集権的な仲介者を介さない取引ができる

DeFi(Decentralized Finance ブロックチェーン技術を活用した金融仲介アプリケーション)により、これまで通貨を扱う金融機関や電子マネーなどを扱う企業、仲介者の役割を担っていた企業やサービスを介すことがなく、取引記録の正しさを証明できるようになります。
週末や祝日、時間外取引といった非生産的な時間のロスがなくなり、仲介事業者へ支払っていた手数料などがかからずに、個人間取引や送金ができるようになる、もしくはお金の貸し借りも個人間でできるようになっていきます。

DeFiのイメージ画像

Web3.0のリスク

Web3.0は、これまでの環境を一変する影響がある一方で、リスクもあります。
利用者は自分自身で身を守る、自己管理を徹底する必要があります。
自己管理に失敗した事例として、暗号資産を管理するパスワードを忘れてしまうと、取り出せなくなってしまいます。「ログインパスワードを忘れた場合」というような問い合わせフォームはありません。
また、悪質なサイトも登場しており、資産を抜き取られると言った被害を見聞きしています。銀行やクレジットカード会社のように、詐欺被害の保証はありません。
特定企業に囚われない、というメリットがある一方で、企業に守られないことによる自己管理の徹底が求められるようになります。

Web3.0の登場で変わる世界に注目!

2022年2月に開催された内閣委員会で、経済担当相が「Web3.0を成長戦略に盛り込みたい」と発言されていたように、Web3.0は今後の大きな社会の変革に繋がる技術トレンドとして注目されています。
Web3.0に対応した法律や税制の整備なども進められ、DAOのように新たなスタートアップの誕生や実際のサービス展開が期待されます。