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DX白書2021が発刊されました(2) 〜デジタル時代の人材

  • 2021年11月18日
  • 中小機構 中小企業支援アドバイザー 高見康一
  • DX白書2021
DX白書2021のイメージ画像

2021年10月にDX白書2021が発刊されました。
本記事ではその中の第3部「デジタル時代の人材」について簡単に内容を紹介していきます。

DX白書2021は企業のDX推進を目的として独立行政法人情報処理推進機構(IPA)によって刊行されました。全体は4部+付録で構成されており、第3部のテーマは「デジタル時代の人材」です。
今回はこの第3部の内容について簡単に紹介をして参ります。

はじめに

DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略語です。当白書では「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。重要なのは組織のDXとは、その組織の経営の問題であり、デジタルはその経営変革のいちリソースでしかない(とは言っても重要なリソースではあるが)という認識を持つことです。

DX白書2021の第1部は、本白書の重要部分の要約、総論が記載されています。DX推進には、外部環境を踏まえアナログを打破しつつ組織的に取り組んでいくこと、併せて、経営者の思い切った意思決定も求められていることなどが記載されています。

第2部のテーマは「DX戦略の策定と推進」です。日米比較のデータを用いながら、DX戦略策定のヒントとなる情報が記載されています。外部環境の評価法や各種経営資源の活用法、DX取組企業のインタビューなども記載されています。

そして、第3部はこれらの内容を踏まえて「デジタル時代の人材」について述べられています。


(1)デジタル時代の人材における日本企業の課題

第3部の第1章は「日米調査に見る企業変革を推進する人材」について述べられています。この中では、日米調査結果を元に、デジタル時代の人材における日本企業の課題を抽出しています。

まず結論からお伝えすると、日本企業では「企業変革を推進する人材の量と質」「企業変革を推進する人材の育成方針や仕組み整備」が課題であるとこの章では述べられています。さらに「発揮すべきリーダーシップ」や「従業員視点」などにも日米で違いが見て取れたとのことでした。

続いて、課題それぞれに関するデータを引用していきます。まずは「企業変革を推進する人材の量と質」についてのデータです。図表31-2が「量」について、図表31-3が「質」についてのグラフです。共に不足感について日米比較を行なっています。日本企業は人材の「量」「質」共に米国企業より不足感を感じていることがわかります。


 

次は「企業変革を推進する人材の育成方針や仕組み整備」についてです。図表31-18は「社員の学び直しの実施動向」について、図表31-19は「企業変革を推進する人材のキャリアサポート実施動向」についてです。

図表31-18のグラフでは日本企業の「緑」の部分が目立ちます。これは学び直しを「実施していないし検討もしていない」企業の割合です。

また図表31-19で「キャリアサポートを実施していない」以外の項目では全てオレンジ、つまり米企業の割合の方が多いというのが一目でわかります。


 

最後に「発揮すべきリーダーシップ」や「従業員視点」についてです。図表31-1は「発揮すべきリーダーシップ」について、図表31-35は「従業員体験(EX)」についてです。「発揮すべきリーダーシップ」のグラフでは青(日本企業)とオレンジ(米国企業)のバラツキの差異が見て取れます。

図表31-1の3番目の項目「顧客志向」は日米とも高い割合となっていますが、日本企業は「リーダーシップ」「コミュニケーション能力」「実行力」などが高い割合となっています。一方で米国企業は「業績志向」「変化志向」などが高い割合となっています。大きく差異が出ているのが「テクノロジーリテラシー」と「実行力」で、前者は米国企業、後者は日本企業が高くなっています。

図表31-35「従業員体験(EX)」では日本企業の「緑」の部分が目立ちます。これは「従業員体験(EX)向上の取組を実施していない」企業の割合です。6割超が実施していないという事で、定着にはまだまだ時間がかかりそうです。

 


※従業員体験(EX)は近年注目されている指標で、EXは従業員の離職率低下やパフォーマンスやモチベーションの向上との相関があり、結果的に企業業績にも影響があるとされています。

日本企業は米国企業と比べると、人材が不足し、かつ育成する仕組みも整っていない状況です。まずは第一歩として経営者が強力に推進していく姿勢が求められています。

(2)デジタル時代の人材に関する国内動向

第3部の第2章は「スキル変革を推進するためのデジタル時代の人材に関する国内動向」について述べられています。こちらは第1章とは異なり、国内・事業会社を中心にした調査結果を元に、デジタル時代の人材における日本企業の動向を整理しています。
ただ、まとめとしては第1章と似たような内容で、人材の不足感や行動の遅れなどが指摘されています。そして、解決の方向性としては社会・企業・個人がそれぞれの役割を果たしていくことが重要と述べられています。

 

関連するデータを一つだけご紹介します。
図表32-41は事業会社に対して「IT人材の学びについて会社の方針に近いものはどれか」と尋ねた結果をDX成果別に示しています。DX成果ありの企業が濃い青、成果なしの企業が薄い青で示されています。
DXで成果を挙げた企業の73%が「IT人材の学びについて会社の方針」を持っているということがわかります。DX推進には会社として「学びの方針」を持つ方が近道なのではないでしょうか。

 

最後に

以上、ここまでDX白書2021第3部の内容を紹介して参りました。

最後にこれらについて私個人の意見を紹介させていただきます。
DXを推進していくためには「人材」と「戦略」の両輪の準備が第一歩だと私は思います。チャンドラーが「組織は戦略に従う」と言い、アンゾフは「戦略は組織に従う」と言いました。チャンドラー路線でいくと、まずは「狙い」を立て、次にそれに合った人材確保・育成を進めていくという方法。アンゾフ路線でいくと、現在の「人材」を把握し、それに合った戦略を立てていくという方法。
どちらにしても「人材」だけではDXは進みません。「人材」と「戦略」の両輪を軸として初めてDXは進んでいくと私は考えています。

この第3部だけでなく白書のその他の部分もぜひご覧になってください。書籍もたくさん登場しています。支援策や機関・企業も増えてきました。これらを活用しながら「自社」に合ったDXを進め、「競争上の優位性」を確立していっていただきたいです。いつかの白書では日本企業が諸外国の「模範」となっている姿を、私も目指していきたいと思います。

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